聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

山田みかん

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二人組

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『それはもしかしてっ!もしかしなくても、めっちゃお高いやつでわッ!』

『そうよ、まさに松茸ちゃんっ!』

 きゃ~と盛り上がる二人の傍で、少年がキョトンとしている。
 まあ、はたから見たらキノコ片手に、何を盛り上がっているんだって話だよね。

「そのキノコがどうしたんですか?」

「ウィル君。これは、お高いキノコなのよ」

「いやいや、それじゃあ通じないって。たしか『歩行キノコ』だったけ」

「ええ!これが、走るキノコと言われている『歩行キノコ』ですか?」

「─────歩行なのに走る?」

 うわぁ~と少年が感動して眺めているが、お姫様だけは首をかしげていた。

「隊長たちにも聞いたんですけど、やっぱり速いですか?」

「あ~普段は歩いてるけど、気付かれちゃうと、かなりのスピードで走るからね。まあ、うちの弟にはかなわないけどね~」

 よしよしと頭を撫でられている白陽は、不満顔だ。

「へぇ~、シロ君はやっぱりスゴイですねぇ」

 少年には尊敬の眼差しで見られているが、白陽の絶対零度の目線は解けなかった。

「‥‥‥‥え、私がおかしいの?二人が何言ってるか分からない。シロ君は不満なのはわかった」


 ─────シロ君不満なのっ!?めっちゃ褒め自慢してるのにっ!

「お姫さんどこですか~?」
「姫様~」

 廊下側から、何やら疲れた声が聞こえてくる。 

「誰かが呼んでるよ?」

「あの二人組ですね~」

「二人組?」

「お姉さんまだ会ってないですよね。優秀な人達なんだけど、ね」

─────チョイチョイ手を抜く人達です~。と少年が扉を開けてのぞくと、同時に開かれる。

「あ、いた。姫様、俺達おいていかないでくださいよ」

「そうですよ。おかげで向こうで手伝えって─────うわ、『歩行キノコ』!」

どかどかと遠慮なく入ってきた二人組の騎士は、お姫さんが持っているキノコに過剰に反応した。

「─────なんでそんなモン持ってるんですか!」

「‥‥‥‥あ、俺なんか涙が出てきた」

 何だこの二人組は、入ってくるなり『松茸』ちゃんにケチ付けようってのかい?

「隊長たちが言ってたんですけど、若い人たちは挑戦しがちって言ってました~」

「‥‥‥‥俺、谷に誘導されて落ちた‥‥‥‥」

「俺なんか、散々逃げ回った挙句に、大型魔獣に衝突させようとしたんだぜっ!」

‥‥‥‥恐ろしいキノコだった。

‥‥‥‥何やら思い出したくない出来事らしく、二人ともわかり易く落ち込んだ。

「お姉さんはそんな事には、ならなかったんですか~?」

「うちは弟が超優秀だからね。そんな隙は微塵もないよ」

 二人組が残念な結果だったのを知って、─────フンッと白陽がドヤ顔を決める。

「大型犬かと思ったら、話に聞いていたフェンリル‥‥‥‥」
「フェンリルに馬鹿にされた‥‥‥‥」 

「‥‥‥‥とてもキノコ狩りの会話じゃない‥‥‥‥」

─────理解できない。一人首をかしげるお姫様だった。
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