157 / 241
焼きマスター
しおりを挟む
皆が朝食をとっているだろう食堂に足を踏み入れると、静寂ではないが異様な緊張感が漂っていた。
「あ、皆さまこちらをどうぞ~」
入り口で戸惑っていると、ウィル少年から大きめの皿を渡される。
「─────皿?」
ここは食堂だから食器があるのは解るが、─────何故に空の皿?
「これで何をするんだ?」
同じ事をラングも思ったようで、空の皿をヒラヒラさせていると。
「はい、それをまずお持ちになりまして~─────あ、来ますよ」
─────何が?と聞き返そうとした瞬間、こちらに向かって何かが飛んで来る。
驚くと同時に、思わずソレを三人それぞれ皿で受け止める。
─────何だ?と確認すると、皿の上にはホカホカと湯気が立ち上る、やわらかそうな円形のパンの様な物が乗っていた。
「これは‥‥‥‥何だ?」
三人で思わず覗き込んでいると。
「リオさん特製の『パンケーキ』というものらしいですよ~、柔らかさと焼き加減が絶妙らしくて、焼き場の緊張感が半端なんです~」
厨房の方を見ると、両手に調理道具を持ち鉄板をガン見しているリオ。
その周りに空の皿を持った隊員たちが無言で見つめるという異様な空間。
「─────ここだぁぁぁっ!!!」
カッカッカッカッカッカッカッと高速で鉄板の上を舞うフライ返し。
それに伴い空中に舞う『パンケーキ』とやら、それを皿で我先にと取り合う隊員たち。
「‥‥‥‥何だアレは‥‥‥‥」
「え~おかわりの取り合いです。隊長達は初でしたので優先されました」
そのままウイル少年に誘導され「ここからお好みの具材を選んで下さい」と色とりどりの具材並んだ場所に連れてこられる。
「へぇなるほど、これで自分の好みにするんだな」
「そうです、ちなみにおかわりは皆の食事ペースが早すぎて、焼き上がりが間に合っていませんのでぇ‥‥‥‥」
─────あの状態です。
鉄板の前に、固唾を飲んで次の焼き上がりを待つ集団。次は俺の番だと隣に立つ者とバチバチのにらみ合いをする男達‥‥‥‥。
食堂に入った時の緊張感はアレだったのか‥‥‥‥。
「んふふふ~おいし~。リオさんに頼んで正解だったわ~いくらでも入っちゃう~」
隊員たちに交じり、何故かクリスティーナ姫が満面の笑みで食堂にいる。
「‥‥‥‥ひ、姫様。なぜ食堂で食事を‥‥‥‥」
「あら、だって出来立てがすぐ食べれるじゃない。それにほら、追加だって」
側に付いているサラが、スッと片手を上げると程なく新たなパンケーキが、ストンと皿に降りてきた。あきらかに隊員達より待遇の差が感じられる。
「姫様。次はこの果物でよろしいでしょうか?」
「さすがサラ、わかってる~。隊長も早く食べてみなさいよ。ここに座って、早く早く」
やんごとなき御方が急かすので、畏れ多く姫様の前の席に三人とも座る「これをね~」といろいろご教授をしていただいた─────後。
「あ─────っ!ドルク貴様っ!」
身長差でドルクに負け。
「ふふふ、甘いですよ隊長」
「ぬっフリート!お前という奴は‥‥‥‥!」
スピードでフリートに負ける。いつの間にか奴は皿の上に数枚積み重ねていた。
「隊長っ報告です!料理長が『焼き』をマスターしたそうですっ!」
「でかしたっ!取り分が増えるっ!あっ─────こらまてっ!ラングのとこの奴!お前まで取るなっ!」
─────見事におかわり争奪戦に参加していた。
「あ、皆さまこちらをどうぞ~」
入り口で戸惑っていると、ウィル少年から大きめの皿を渡される。
「─────皿?」
ここは食堂だから食器があるのは解るが、─────何故に空の皿?
「これで何をするんだ?」
同じ事をラングも思ったようで、空の皿をヒラヒラさせていると。
「はい、それをまずお持ちになりまして~─────あ、来ますよ」
─────何が?と聞き返そうとした瞬間、こちらに向かって何かが飛んで来る。
驚くと同時に、思わずソレを三人それぞれ皿で受け止める。
─────何だ?と確認すると、皿の上にはホカホカと湯気が立ち上る、やわらかそうな円形のパンの様な物が乗っていた。
「これは‥‥‥‥何だ?」
三人で思わず覗き込んでいると。
「リオさん特製の『パンケーキ』というものらしいですよ~、柔らかさと焼き加減が絶妙らしくて、焼き場の緊張感が半端なんです~」
厨房の方を見ると、両手に調理道具を持ち鉄板をガン見しているリオ。
その周りに空の皿を持った隊員たちが無言で見つめるという異様な空間。
「─────ここだぁぁぁっ!!!」
カッカッカッカッカッカッカッと高速で鉄板の上を舞うフライ返し。
それに伴い空中に舞う『パンケーキ』とやら、それを皿で我先にと取り合う隊員たち。
「‥‥‥‥何だアレは‥‥‥‥」
「え~おかわりの取り合いです。隊長達は初でしたので優先されました」
そのままウイル少年に誘導され「ここからお好みの具材を選んで下さい」と色とりどりの具材並んだ場所に連れてこられる。
「へぇなるほど、これで自分の好みにするんだな」
「そうです、ちなみにおかわりは皆の食事ペースが早すぎて、焼き上がりが間に合っていませんのでぇ‥‥‥‥」
─────あの状態です。
鉄板の前に、固唾を飲んで次の焼き上がりを待つ集団。次は俺の番だと隣に立つ者とバチバチのにらみ合いをする男達‥‥‥‥。
食堂に入った時の緊張感はアレだったのか‥‥‥‥。
「んふふふ~おいし~。リオさんに頼んで正解だったわ~いくらでも入っちゃう~」
隊員たちに交じり、何故かクリスティーナ姫が満面の笑みで食堂にいる。
「‥‥‥‥ひ、姫様。なぜ食堂で食事を‥‥‥‥」
「あら、だって出来立てがすぐ食べれるじゃない。それにほら、追加だって」
側に付いているサラが、スッと片手を上げると程なく新たなパンケーキが、ストンと皿に降りてきた。あきらかに隊員達より待遇の差が感じられる。
「姫様。次はこの果物でよろしいでしょうか?」
「さすがサラ、わかってる~。隊長も早く食べてみなさいよ。ここに座って、早く早く」
やんごとなき御方が急かすので、畏れ多く姫様の前の席に三人とも座る「これをね~」といろいろご教授をしていただいた─────後。
「あ─────っ!ドルク貴様っ!」
身長差でドルクに負け。
「ふふふ、甘いですよ隊長」
「ぬっフリート!お前という奴は‥‥‥‥!」
スピードでフリートに負ける。いつの間にか奴は皿の上に数枚積み重ねていた。
「隊長っ報告です!料理長が『焼き』をマスターしたそうですっ!」
「でかしたっ!取り分が増えるっ!あっ─────こらまてっ!ラングのとこの奴!お前まで取るなっ!」
─────見事におかわり争奪戦に参加していた。
267
あなたにおすすめの小説
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
モブで可哀相? いえ、幸せです!
みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。
“あんたはモブで可哀相”。
お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?
海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません
ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。
文化が違う? 慣れてます。
命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。
NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。
いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。
スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。
今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。
「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」
ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。
そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる