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恐ろしい‥‥‥‥
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「くそくそくそくそくそくそくそがぁっっっ!!!」
街道を抜けて林を抜けていく馬車の中で、男は盛大に毒づいていた。
簡単に手に入るはずだったフェンリルは確保できず、平民女には物理で脅され、挙句の果てには大人にはほど遠いであろう子供に、とどめを刺された。
「ワシに立てつく奴等なんぞ!許せるものかっ!!」
盛大に喚いたはいいが、真正面から当たるのは認めたくはないが、分が悪い。
だが、手がない事はない。
「ふ。高貴なワシに、立てついたことを後悔させてやるか‥‥‥‥ふふん」
一人、馬車の中でニヤリと下卑た笑いを浮かべた瞬間。
外から男達の叫び声が響き、軋むような音を立てた馬車は急停車し、領主の肥満体は衝撃に耐えられるはずもなく、無様に床に投げ出された。
「無能者がぁ!馬車もまともに動かせんの─────か‥‥‥‥」
苛立ちと共に扉を開けた先には、護衛として雇った破落戸共が、鳥型魔獣の集団に襲われている光景がそこにはあった。
「ぎゃああぁぁぁぁ─────!」
「やめ、やめてくれ─────!」
「うわあああああ!」
のたうちまわる男達の頭部に群がる集団、阿鼻叫喚が周辺に響き渡った。
「な、な、なんだ、コレは─────はっ!」
グルルルル─────。
な、何かが屋根に乗っている‥‥‥‥。
すうっとその影が自分に差し、恐怖にブルブル震えながらもその正体を見ようとする。
唸り声と共にそれはこちらを睨みつけていた。
森の奥地にしか生息しないと言われている、猫型の大型魔獣。
「ビ、ビックキャット‥‥‥‥。なぜこんな所に‥‥‥‥うわわわぁぁ!!」
優美な肢体と毛並みの美しさから、『高貴な貴婦人』と別名を持つ魔獣は、お前ごときが視界に入るなとばかりに目の前の人間に襲いかかった。
「─────ん?なんだ?」
「なんでしょう?」
かすかに響く叫び声。ただしそれは可愛くもない野郎どものもの。
ギルドの長は、書類の山から顔をあげた。
「地下からか?取り調べはもうやってないだろう?」
「はい、そのはずです。時間的にも違いますし」
今現在地下牢にぶち込まれているのは、例の人物が踏みつけた『魔獣狩り』をしていた破落戸どものみ。
奴等はかなりの厳しい取り調べの後、そのまま地下牢に放り込まれたままだった。
「お、長!大変です!」
そこへノックもそこそこに、ギルド職員が呼びに来た。
「なんだ?奴らが暴れたのか?」
「い、いえ‥‥‥‥そうじゃない‥?え、と、とにかく来てください!」
要領をえない職員に「とにかく見てください!」と急き立てられ、地下牢にやってくると、そこには頭を抱えわんわんと泣きわめく男ども。
全員が頭を押さえ、この世の終わりのように喚いている。
「‥‥‥‥こ、これは‥‥‥‥」
奴等の指の隙間から、光輝く頭部の皮膚が覗いていた。
それは頭部全てではなく、前髪の中心部分からそのまま後頭部まで‥‥‥‥。
「見張りの話によると、さっき小型の魔獣が数匹外へ逃げていった様です」
「これを魔獣がやったと言うのか‥‥‥‥」
名残のようにはらりはらりと側頭部の髪が抜け落るたびに、破落戸共の断末魔が牢に響き渡る。
なんと、恐ろしい‥‥‥‥。
格子の外側にいる者達は牢の中の阿鼻叫喚を眺めながら、己の頭頂部の確認を無意識にしていた。
~~~ ~~~ ~~~ ~~~ ~~~
ひと手間の「エールボタン」ありがとうございます。
感激で毎度ドコドコ謎ダンスを繰り広げています。
街道を抜けて林を抜けていく馬車の中で、男は盛大に毒づいていた。
簡単に手に入るはずだったフェンリルは確保できず、平民女には物理で脅され、挙句の果てには大人にはほど遠いであろう子供に、とどめを刺された。
「ワシに立てつく奴等なんぞ!許せるものかっ!!」
盛大に喚いたはいいが、真正面から当たるのは認めたくはないが、分が悪い。
だが、手がない事はない。
「ふ。高貴なワシに、立てついたことを後悔させてやるか‥‥‥‥ふふん」
一人、馬車の中でニヤリと下卑た笑いを浮かべた瞬間。
外から男達の叫び声が響き、軋むような音を立てた馬車は急停車し、領主の肥満体は衝撃に耐えられるはずもなく、無様に床に投げ出された。
「無能者がぁ!馬車もまともに動かせんの─────か‥‥‥‥」
苛立ちと共に扉を開けた先には、護衛として雇った破落戸共が、鳥型魔獣の集団に襲われている光景がそこにはあった。
「ぎゃああぁぁぁぁ─────!」
「やめ、やめてくれ─────!」
「うわあああああ!」
のたうちまわる男達の頭部に群がる集団、阿鼻叫喚が周辺に響き渡った。
「な、な、なんだ、コレは─────はっ!」
グルルルル─────。
な、何かが屋根に乗っている‥‥‥‥。
すうっとその影が自分に差し、恐怖にブルブル震えながらもその正体を見ようとする。
唸り声と共にそれはこちらを睨みつけていた。
森の奥地にしか生息しないと言われている、猫型の大型魔獣。
「ビ、ビックキャット‥‥‥‥。なぜこんな所に‥‥‥‥うわわわぁぁ!!」
優美な肢体と毛並みの美しさから、『高貴な貴婦人』と別名を持つ魔獣は、お前ごときが視界に入るなとばかりに目の前の人間に襲いかかった。
「─────ん?なんだ?」
「なんでしょう?」
かすかに響く叫び声。ただしそれは可愛くもない野郎どものもの。
ギルドの長は、書類の山から顔をあげた。
「地下からか?取り調べはもうやってないだろう?」
「はい、そのはずです。時間的にも違いますし」
今現在地下牢にぶち込まれているのは、例の人物が踏みつけた『魔獣狩り』をしていた破落戸どものみ。
奴等はかなりの厳しい取り調べの後、そのまま地下牢に放り込まれたままだった。
「お、長!大変です!」
そこへノックもそこそこに、ギルド職員が呼びに来た。
「なんだ?奴らが暴れたのか?」
「い、いえ‥‥‥‥そうじゃない‥?え、と、とにかく来てください!」
要領をえない職員に「とにかく見てください!」と急き立てられ、地下牢にやってくると、そこには頭を抱えわんわんと泣きわめく男ども。
全員が頭を押さえ、この世の終わりのように喚いている。
「‥‥‥‥こ、これは‥‥‥‥」
奴等の指の隙間から、光輝く頭部の皮膚が覗いていた。
それは頭部全てではなく、前髪の中心部分からそのまま後頭部まで‥‥‥‥。
「見張りの話によると、さっき小型の魔獣が数匹外へ逃げていった様です」
「これを魔獣がやったと言うのか‥‥‥‥」
名残のようにはらりはらりと側頭部の髪が抜け落るたびに、破落戸共の断末魔が牢に響き渡る。
なんと、恐ろしい‥‥‥‥。
格子の外側にいる者達は牢の中の阿鼻叫喚を眺めながら、己の頭頂部の確認を無意識にしていた。
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