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知らない世界
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「お、おい、ちょっと兄貴あれ!」
「あん? なんだよ」
「あそこにいるの、例の女じゃいないすか」
男が指差す方角には、間違いなく忘れもしない強烈な印象を残した、あの人物だった。
「う、うそだろ。なんでここにいるんだ?」
「あの街が拠点じゃねぇのかよ!」
「しかも一緒にいるの『剛剣のガイン』じゃねぇか」
「ダレっすか?」
「お前知らねえのかよ、元上級冒険者で有名な奴だぞ」
「引退した冒険者っすか」
「馬鹿野郎!現役を離れたっていっても、お前が敵う相手じゃねぇぞ」
引退したとはいえ、俺等冒険者崩れでは歯が立たない。
「あの女、騎士団にも顔が効いていて、上級冒険者にも知り合いがいるのかよ。一体何者なんだよ」
本人の預かり知らぬ所で、いろいろと憶測が追加されていたが、当の本人は少年の父親がそんな経歴の持ち主なのかは当然知らない。なぜなら初対面の人だから。元気な子供の相手は大変だねぇ、としか思っていない。
今は初対面の保護者登場より『ナビ』ちゃんから新たにもたらされた情報の方で、ぷちパニックを起こしていた。
「‥‥‥‥え、と。それって大丈夫なのかな‥‥‥‥?」
『御大』のせいとは。私のせいではないのだが、間接的には責任があるのかなと思ってしまう。
どうやら姿を顕現した時に、どうやら無邪気な子供達に目を向けていたらしい。
なんだそれは。砦からかなり距離あるよね?─────関係ない?へぇ~そうなんですか。私に付いてる(?)らしいのに、当の本人は『御大』とやら見た事ないんですけど‥‥‥‥。
『問題ないです。「御大」の気配に惹かれてきただけですので。気が済んだら元の住処に戻るでしょう』
─────所詮『羽虫』なんで。
「いいんだ‥‥‥‥」
この世界の『妖精』の扱いが‥‥‥‥軽い。
ちらりと少年の方を見ると、医者の診断を待つ患者のような面持ちでこちらを見つめていた。
取りあえず少年には一過性のものだから、しばらくしたら離れるだろうと説明しておいた。
「そうなんですか」
「私もよくは知らないけどね」
─────なんせ、異世界初心者なんで。とはキラキラお目目の少年にはとても言えない。
それから少年から話を聞いていた父親が急に復活し、暑苦しい感謝の弁を告げられ、幼女の目について詳細を知りたがったが、説明できることはないので『御大』のせいじゃないかと尊い御方とやらに丸投げしておいた。
時系列的にはちょっと合わず、少年が──?という顔になったが、「そうよね!?きっとそう!奇跡が起こったのよね!?」とゴリゴリ押したら、「は、はい」と納得(?)してもらった。
『 伸びるも散るも、当人次第です 』
『ナビ』ちゃんの謎言葉を、去り際に少年に伝えた。
なんのこっちゃと自分は分からなかったが、『ナビ』ちゃんが伝えろというのでそのまま伝えたが、少年は意味が理解できたらしく「はい!」ととてもいいお返事をいただいた。
─────だれか私に説明して‥‥‥。
少年の襟元には、周りの「羽虫」とは一段格が違う「妖精」がひっそり隠れていた。
「僕次第か‥‥‥‥」
命の恩人の後姿を見送りながら少年は、襟元の妖精を指先でチョイチョイしながら呟いた。
「‥‥‥‥なんか、すごい人だったな」
「父さん、わかった?」
「だてに元冒険者してないぞ。得体が知れない。それにあれがフェンリルだろう?飛びついた時は肝が冷えたぞ~」
「ワンちゃんっ!」
フェンリルにくっついた娘に注意をするが、いまいち効果はなかった。
「僕も頑張ろう」
「そうだな、本人次第って言われたしたな。将来は『妖精騎士』にでもなるか?」
「う~ん。とりあえず、アンを守っていかないと」
「お、言うじゃないか~。さすが兄だな!」
言った当人は分からなかったが、言われた本人には意味が通じていた。
─────妖精付きの人間は、その力を借りられる人材で、実に貴重。将来は引っ張りだこなのだ。
「あん? なんだよ」
「あそこにいるの、例の女じゃいないすか」
男が指差す方角には、間違いなく忘れもしない強烈な印象を残した、あの人物だった。
「う、うそだろ。なんでここにいるんだ?」
「あの街が拠点じゃねぇのかよ!」
「しかも一緒にいるの『剛剣のガイン』じゃねぇか」
「ダレっすか?」
「お前知らねえのかよ、元上級冒険者で有名な奴だぞ」
「引退した冒険者っすか」
「馬鹿野郎!現役を離れたっていっても、お前が敵う相手じゃねぇぞ」
引退したとはいえ、俺等冒険者崩れでは歯が立たない。
「あの女、騎士団にも顔が効いていて、上級冒険者にも知り合いがいるのかよ。一体何者なんだよ」
本人の預かり知らぬ所で、いろいろと憶測が追加されていたが、当の本人は少年の父親がそんな経歴の持ち主なのかは当然知らない。なぜなら初対面の人だから。元気な子供の相手は大変だねぇ、としか思っていない。
今は初対面の保護者登場より『ナビ』ちゃんから新たにもたらされた情報の方で、ぷちパニックを起こしていた。
「‥‥‥‥え、と。それって大丈夫なのかな‥‥‥‥?」
『御大』のせいとは。私のせいではないのだが、間接的には責任があるのかなと思ってしまう。
どうやら姿を顕現した時に、どうやら無邪気な子供達に目を向けていたらしい。
なんだそれは。砦からかなり距離あるよね?─────関係ない?へぇ~そうなんですか。私に付いてる(?)らしいのに、当の本人は『御大』とやら見た事ないんですけど‥‥‥‥。
『問題ないです。「御大」の気配に惹かれてきただけですので。気が済んだら元の住処に戻るでしょう』
─────所詮『羽虫』なんで。
「いいんだ‥‥‥‥」
この世界の『妖精』の扱いが‥‥‥‥軽い。
ちらりと少年の方を見ると、医者の診断を待つ患者のような面持ちでこちらを見つめていた。
取りあえず少年には一過性のものだから、しばらくしたら離れるだろうと説明しておいた。
「そうなんですか」
「私もよくは知らないけどね」
─────なんせ、異世界初心者なんで。とはキラキラお目目の少年にはとても言えない。
それから少年から話を聞いていた父親が急に復活し、暑苦しい感謝の弁を告げられ、幼女の目について詳細を知りたがったが、説明できることはないので『御大』のせいじゃないかと尊い御方とやらに丸投げしておいた。
時系列的にはちょっと合わず、少年が──?という顔になったが、「そうよね!?きっとそう!奇跡が起こったのよね!?」とゴリゴリ押したら、「は、はい」と納得(?)してもらった。
『 伸びるも散るも、当人次第です 』
『ナビ』ちゃんの謎言葉を、去り際に少年に伝えた。
なんのこっちゃと自分は分からなかったが、『ナビ』ちゃんが伝えろというのでそのまま伝えたが、少年は意味が理解できたらしく「はい!」ととてもいいお返事をいただいた。
─────だれか私に説明して‥‥‥。
少年の襟元には、周りの「羽虫」とは一段格が違う「妖精」がひっそり隠れていた。
「僕次第か‥‥‥‥」
命の恩人の後姿を見送りながら少年は、襟元の妖精を指先でチョイチョイしながら呟いた。
「‥‥‥‥なんか、すごい人だったな」
「父さん、わかった?」
「だてに元冒険者してないぞ。得体が知れない。それにあれがフェンリルだろう?飛びついた時は肝が冷えたぞ~」
「ワンちゃんっ!」
フェンリルにくっついた娘に注意をするが、いまいち効果はなかった。
「僕も頑張ろう」
「そうだな、本人次第って言われたしたな。将来は『妖精騎士』にでもなるか?」
「う~ん。とりあえず、アンを守っていかないと」
「お、言うじゃないか~。さすが兄だな!」
言った当人は分からなかったが、言われた本人には意味が通じていた。
─────妖精付きの人間は、その力を借りられる人材で、実に貴重。将来は引っ張りだこなのだ。
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