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35.変な皆
しおりを挟む今朝のごはんはトーストと、目玉焼きとベーコン。ちぎったレタスとヨーグルト。冷蔵庫にあまってたものを集めて、それしか出来なかった。買い物行かないと。
トーストは少しだけ水を掛けて格子に切り目を入れて、バターを置いてオーブンで五分。目玉焼きは弱火で半熟に。ベーコンはあんまりかりかりしすぎないように。ヨーグルトにははちみつを入れた。それとコーヒーメーカーのコーヒーだけなので、瑛士さんが来た時には、ちょうど出来上がっていた。
瑛士さんて、こんな簡単な朝ごはんでも、すっごく褒めてくれるので、なんかすごくほくほくした気分だった。
なんか楽しいなあ、と思いながら一緒に片付けをして、マンションを一緒に出てきた。瑛士さんの会社は、すぐ近くなので、手を振って別れて、オレは大学に来た。
自習室で、昨日残した諸々の課題を進める。一心不乱に進めて、ふと、喉が渇いて作業を止めた。学校について、二時間。何も飲んでなかったことに気づいて、自販機まで歩く。
今日は本来は休みなので、特に熱心な奴か、逆に課題がヤバい人しか、居ない。
さっき、課題がヤバいんだろうなーという四人組に会った。昨日の飲み会に居て、なんか面白そうな顔でオレを見ていたなあ。なんて思って。Ωだったことで、絡まれるだろうか、と、身構えたのだけれど。なんか、変な動きで近づいてきたと思ったら。
「Ωだったなら、早く言えば良かったのに」
「そうだよ、困ったことあったら言えよな!」
「そうそう、オレら、友達だもんな」
「そうそう!」
――なんだか、良く分からないことを並べ立てて、あははは、とか笑いながら、消えていった。何だ? Ωにそんなに優しくするタイプだった? ……いや、昨日言った直後は、すっごいやな感じで、見てたし、なんか絶対言ってた筈。
――っていうようなことがあって。
そのあと別の人。こっちは、研究熱心で来てるタイプで。ほんと真面目で。ちょっと変わってて。いつもなら、めったに自分から話しかけてこないし。話したとしても、医学に関するようなことのみ、みたいな。世間話みたいなの、したことなかったんだけど。
「ねえねえ、君の結婚する人さ」
「?」
「すっごい興味深いよね。あの圧は、研究に値するよ。今度、ぜひ、じっくり話させてほしいんだけど」
「……あつ?」
あつ。アツ。――圧。多分、これ? 圧?
――瑛士さんの、圧?
何言ってるんだろう? と思っていたら、そいつはそのまま、ふふ、と笑いながら、離れていった。
「――?」
一人がおかしいくらいなら、別にたまにあるだろうけど。
なんか、変なのが五人も居ると……ていうか、今日出会った僅かな五人が全員、変ってなると、なんか――。
なんだろう? よく分かんないなあ。
水のペットボトルを手に、首を傾げながら歩いていると、前方に内海教授を発見。
「教授、こんにちは」
「ああ。凛太。今日は来てたのか」
「はい」
「大丈夫だったか、昨日」
オレは、教授を見上げた。
「あ、すみません、寝ちゃって。瑛士さんに連れて帰ってもらっちゃうとか……教授のお祝い会だったのに」
「祝いってことで飲み会してただけだから、別にそっちはいいけど」
「けど、なんですか?」
教授は、顎先の髭に触れてぽりぽり掻きながら、んー、と考えている。
……結構考え込む時の、癖。
「どこで知り合った、あのα」
「……あ。えーと……まあある種、運命的な出会いを……」
嘘ではない。変な店の前でウロウロしてるところで、出会った。
「……あいつ、トリプルSのαか?」
「あ。そう、みたいです」
「医者にも教授にも、αだらけだが――紫の瞳をもったαは、初めて見たなぁ。よく捕まえたな、あんなの」
「――そう、ですね……まあ……」
確かに。契約結婚だとしても、それすらも、普通なら関わりすらないタイプの人だからなぁ。と思いながら、頷いていると。
「独占欲も、庇護欲も、すげえ強そう。お前、色々気をつけろよ」
「――」
独占欲と庇護欲。……気を付ける、とは?
「αはただでさえそういうの強いのに――ランクが上がるにつれて、そこらへんも一緒にレベルが高くなってく。あんまり刺激しないように、気を付けとけよ」
「……はあ……」
全然分からず、一応、声だけ出した感じで頷くと。
「あ、そうだ。凛太、お前、今度、オレと佐川の診察を受けろ」
「え?」
「αだらけの中で、誰も気づかないΩなんて、あんまり居ない。でも竜は気付いたんだろ?」
「……そう、ですね……なんか、匂うって」
「お前、判定不能って言われたんだよな?」
「あ、はい。ランクの測定が、出来ないって」
「Ω要素が弱すぎるからの判定不能と、違う理由で判定できないだけってのがあるんだ」
「――……違う理由、ですか?」
――でもそんな話、SNSとかでも、聞いたことないし。
……というか、そもそも判定不能って言われたの、まだ他に聞いたことないけど。でも医者は、ごくまれには、Ω要素が弱すぎる、ほぼβのΩが居るんだって、結論づけてたし……。
「Ω要素が本当に弱いだけなら、竜も気づかない」
「――」
あ。なる、ほど……?
「だから一回、診察させろ。興味深い」
「興味……実験台ですか?」
笑いながら言うと、「まあそうだな。面白そうだから、見せろ。お前自身も、知りたいだろ、自分の体のこと」と、笑う教授。
「まあ、それはそうですね」
確かにそうかも。
うんうん頷いていると、「じゃあ、今度、日を決めような」と教授が言って、じゃあな、と離れていった。
――んん。なんか教授も変なこといろいろ言ってたような……。
庇護欲……独占欲……?
うーん……。
なんだかよく分かんないけど。まあ考えても分かんないことは仕方ない。
とりあえず勉強して、帰ろうと思って、自習室に向かった。
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