57 / 142
57.心配かけて
しおりを挟む
マンションの前。タクシーを止めてもらう。
先に竜が降りて、オレを覗き込む。「降りれるか?」と言われて、「うん」と頷いて車を降りた。
「……っと」
ちょっとふらつく。
「お前、ほんといい加減にしろよ……」
はー、と竜はため息。腕を掴まれたまま、呆れたように言われて、ごめん、と謝る。
「運転手さん、送って戻ってくるんで、待っててもらえますか?」
「待機で別料金が発生しますが大丈夫ですか?」
「大丈夫です。十分位、行ってきます」
竜がオレを掴んで支えたまま、タクシーの中に向かって話しているのを聞きながら、そういえば瑛士さん、今から帰るって――と思った瞬間。ほんとに瑛士さんが現れた。スーツ姿。目立つ。瑛士さんの周りだけ、切り取られているみたいな気がする。
「あ。おかえりなさい」
「ただいま、凛太」
「え」
オレのセリフと瑛士さんの声に、竜が振り返った。瑛士さんは「こんばんは、竜くん」と、にっこり笑った。
「――どうも。こんばんは」
挨拶してから、竜がオレをちらっと見やる。そういえば、さっきなにか試すって言ってたような……?
「凛太、歩ける?」
竜が、掴んだままだったオレの手を少し引いた時。わ、とよろけたオレは。
――あれ?
気づいたら、瑛士さんに支えられていた。あれれ、いまどうなった??
「危ないよ、凛太」
「あ……すみません」
謝ったオレに、ニコ、と笑う。オレの肩を抱いて支えたまま、瑛士さんは竜に顔を向けた。
「ありがと、竜くん。凛太、預かるね。あ、タクシー代」
そう言って、オレを片手で支え直して多分財布を取ろうとした瑛士さんに、竜はにっこり笑って「大丈夫です。オレ、このまま乗って帰るので」とはっきり答えた。絶対受け取らなさそうだと思ったんだろう、瑛士さんはありがと、と言った。
「竜、ごめんね。お礼作ってくからね」
「明日じゃなくていいぞ?」
「うん。ごめん。ありがと」
竜にそう言ってから、瑛士さんを見上げて、少し離れる。
「すみません、瑛士さん、大丈夫です」
支えられてるのもなんか情けないので頑張って立つ。だって一昨日の夜もこんなだったし。いつも、そんな酔うこと無いのに、これじゃいつも酔っ払ってるみたいでちょっと情けない。
「明日大学でしょ? そんなに飲まない方がいいよ」
「あ、はい……すみません」
オレが謝ると、すぐ、優しい声で「謝ってほしい訳じゃないよ」と瑛士さんが言う。
「瑛士さん――」
竜が瑛士さんに呼びかけた。
「瑛士さんって呼んでも、良いですか?」
「うん。オレも竜くんって呼んでるし」
「――じゃあ瑛士さん」
竜が、瑛士さんをまっすぐ見つめる。
「――契約、なんですよね?」
その質問に、オレは一瞬首を傾げて竜を見たけど、竜はオレを見ずに瑛士さんを見ていた。その視線を追って、瑛士さんを見上げると。瑛士さんは、オレを見下ろして、ふと微笑んでから、竜に視線を戻した。
「――そうだよ」
「――なら、いいです」
竜は「じゃあな、凛太」とオレに言う。「ごめんね、ありがと」とオレが返すと、「おやすみなさい」と瑛士さんにも言ってから、タクシーに乗り込んだ。タクシーを見送ってから、瑛士さんとオレは、マンションのエントランスに向かった。受付の人たちに挨拶をしながら通り過ぎ、エレベーターに乗り込む。
なんか――ふわっふわするなあ。一応、歩けてはいるからよしとしよう。
飲みすぎ禁止だな。さっきちょっと注意された気がするし。
はわ、とあくびが漏れた。すると、瑛士さんはオレを見て、なんだか不思議な顔をして、微笑んだ。
「ごめんね」
「……? なにが、ですか?」
「――飲みに行くのも、酔ってても、凛太の自由だよね。ごめん」
「――」
……あ、さっきの。注意っぽいのしたの、気にしてる?
謝った後は、少し気まずそうに、エレベーターの階数表示を見ている瑛士さん。
なんだか――胸というか、お腹の奥というか。また痛い。
瑛士さんの袖を、少しだけ引っ張る。ふ、と見下ろされた。
「心配……してくれてるなら、嫌じゃないです」
多分「心配」だよね……明日、大学なんだからって言ってたし。だったら、全然嫌じゃないし。謝ってほしくも無いし。そう思って、瑛士さんに伝えると。
「――心配……もあるけど……」
そこまで言ってから、瑛士さんは、んー……と眉を寄せて、自分の額を片手の指で押さえてちょっと擦ってる。
「――なんというか……」
悩んだ顔のままオレを見つめて。瑛士さんの指が、オレの頬に触れた。
「……熱いね」
くす、と笑った瑛士さんの瞳が、なんだかすごく優しい。
ドキ、と心臓が音を立てて。至近距離の瑛士さんに、どっどっどっ、と。なんか。血液が。暴れてる感……? 何これ。もう。
……綺麗過ぎなんだよ、瑛士さん
もー、と思わず膨らむと、瑛士さんは、きょとんとして、オレを見下ろしてから、ふ、と息をついた。
「うん……心配は、してる」
「じゃあ別に。大丈夫ですよ、謝らなくて。というか、むしろ、心配かけてすみません」
なんだか、瑛士さんは、はー、とため息をつきながら、オレの頭をクシャクシャにした。
「――わ……」
なんなんだ。ぐしゃぐしゃになったし……!
髪を直しながらエレベーターを降りると、とりあえずそれぞれの部屋に別れて、シャワーを浴びることになった。
ホットミルクは、飲むって言うので、じゃあ後でまた、と別れた。
先に竜が降りて、オレを覗き込む。「降りれるか?」と言われて、「うん」と頷いて車を降りた。
「……っと」
ちょっとふらつく。
「お前、ほんといい加減にしろよ……」
はー、と竜はため息。腕を掴まれたまま、呆れたように言われて、ごめん、と謝る。
「運転手さん、送って戻ってくるんで、待っててもらえますか?」
「待機で別料金が発生しますが大丈夫ですか?」
「大丈夫です。十分位、行ってきます」
竜がオレを掴んで支えたまま、タクシーの中に向かって話しているのを聞きながら、そういえば瑛士さん、今から帰るって――と思った瞬間。ほんとに瑛士さんが現れた。スーツ姿。目立つ。瑛士さんの周りだけ、切り取られているみたいな気がする。
「あ。おかえりなさい」
「ただいま、凛太」
「え」
オレのセリフと瑛士さんの声に、竜が振り返った。瑛士さんは「こんばんは、竜くん」と、にっこり笑った。
「――どうも。こんばんは」
挨拶してから、竜がオレをちらっと見やる。そういえば、さっきなにか試すって言ってたような……?
「凛太、歩ける?」
竜が、掴んだままだったオレの手を少し引いた時。わ、とよろけたオレは。
――あれ?
気づいたら、瑛士さんに支えられていた。あれれ、いまどうなった??
「危ないよ、凛太」
「あ……すみません」
謝ったオレに、ニコ、と笑う。オレの肩を抱いて支えたまま、瑛士さんは竜に顔を向けた。
「ありがと、竜くん。凛太、預かるね。あ、タクシー代」
そう言って、オレを片手で支え直して多分財布を取ろうとした瑛士さんに、竜はにっこり笑って「大丈夫です。オレ、このまま乗って帰るので」とはっきり答えた。絶対受け取らなさそうだと思ったんだろう、瑛士さんはありがと、と言った。
「竜、ごめんね。お礼作ってくからね」
「明日じゃなくていいぞ?」
「うん。ごめん。ありがと」
竜にそう言ってから、瑛士さんを見上げて、少し離れる。
「すみません、瑛士さん、大丈夫です」
支えられてるのもなんか情けないので頑張って立つ。だって一昨日の夜もこんなだったし。いつも、そんな酔うこと無いのに、これじゃいつも酔っ払ってるみたいでちょっと情けない。
「明日大学でしょ? そんなに飲まない方がいいよ」
「あ、はい……すみません」
オレが謝ると、すぐ、優しい声で「謝ってほしい訳じゃないよ」と瑛士さんが言う。
「瑛士さん――」
竜が瑛士さんに呼びかけた。
「瑛士さんって呼んでも、良いですか?」
「うん。オレも竜くんって呼んでるし」
「――じゃあ瑛士さん」
竜が、瑛士さんをまっすぐ見つめる。
「――契約、なんですよね?」
その質問に、オレは一瞬首を傾げて竜を見たけど、竜はオレを見ずに瑛士さんを見ていた。その視線を追って、瑛士さんを見上げると。瑛士さんは、オレを見下ろして、ふと微笑んでから、竜に視線を戻した。
「――そうだよ」
「――なら、いいです」
竜は「じゃあな、凛太」とオレに言う。「ごめんね、ありがと」とオレが返すと、「おやすみなさい」と瑛士さんにも言ってから、タクシーに乗り込んだ。タクシーを見送ってから、瑛士さんとオレは、マンションのエントランスに向かった。受付の人たちに挨拶をしながら通り過ぎ、エレベーターに乗り込む。
なんか――ふわっふわするなあ。一応、歩けてはいるからよしとしよう。
飲みすぎ禁止だな。さっきちょっと注意された気がするし。
はわ、とあくびが漏れた。すると、瑛士さんはオレを見て、なんだか不思議な顔をして、微笑んだ。
「ごめんね」
「……? なにが、ですか?」
「――飲みに行くのも、酔ってても、凛太の自由だよね。ごめん」
「――」
……あ、さっきの。注意っぽいのしたの、気にしてる?
謝った後は、少し気まずそうに、エレベーターの階数表示を見ている瑛士さん。
なんだか――胸というか、お腹の奥というか。また痛い。
瑛士さんの袖を、少しだけ引っ張る。ふ、と見下ろされた。
「心配……してくれてるなら、嫌じゃないです」
多分「心配」だよね……明日、大学なんだからって言ってたし。だったら、全然嫌じゃないし。謝ってほしくも無いし。そう思って、瑛士さんに伝えると。
「――心配……もあるけど……」
そこまで言ってから、瑛士さんは、んー……と眉を寄せて、自分の額を片手の指で押さえてちょっと擦ってる。
「――なんというか……」
悩んだ顔のままオレを見つめて。瑛士さんの指が、オレの頬に触れた。
「……熱いね」
くす、と笑った瑛士さんの瞳が、なんだかすごく優しい。
ドキ、と心臓が音を立てて。至近距離の瑛士さんに、どっどっどっ、と。なんか。血液が。暴れてる感……? 何これ。もう。
……綺麗過ぎなんだよ、瑛士さん
もー、と思わず膨らむと、瑛士さんは、きょとんとして、オレを見下ろしてから、ふ、と息をついた。
「うん……心配は、してる」
「じゃあ別に。大丈夫ですよ、謝らなくて。というか、むしろ、心配かけてすみません」
なんだか、瑛士さんは、はー、とため息をつきながら、オレの頭をクシャクシャにした。
「――わ……」
なんなんだ。ぐしゃぐしゃになったし……!
髪を直しながらエレベーターを降りると、とりあえずそれぞれの部屋に別れて、シャワーを浴びることになった。
ホットミルクは、飲むって言うので、じゃあ後でまた、と別れた。
2,288
あなたにおすすめの小説
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました
こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。
志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。
美形×平凡。
乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。
崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。
転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。
そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。
え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる