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6.好きや。
しおりを挟む「葵」
「……ん?」
ゆっくりと、視線をオレに戻す。
「……他にも何か、言いたい事、あるんやないの?」
「――――……」
「……そん位なら、電話でも言えそうやんか。わざわざこっちまで来て言うよな事やないやろ」
「――――……」
葵は少し黙って。
それから、ふと笑った。
「……お前に逢いたくなったんだってば」
「――――……」
それだけやないやろ、とオレが見つめていると。
葵は、小さく息をついてから。
「……本当は少し落ち込んでさ。 お前の顔、見たくなったんだ」
「葵……」
自分で聞いたくせに、いざそんな風に言われると何と言ったらいいのか咄嗟に浮かばなくて、ただ、名を呼ぶ。
すると、葵が苦笑いで顔を上げた。
「ほら。……なんか、お前のあっけらかんとした顔見れば、楽になるかなって」
誤魔化すように不自然に明るく、そう言って笑った葵の顔が、不意に淡く見えて。
オレは、完全に、何も言えなくなった。
「……ほんと、ごめんな、突然」
「――――……」
「都合、全然考えずに来て。逢えなかったらそれで……来た事言わずに帰ればいいって最初は思ってたんだけどさ……ごめん。逢いたくなっちゃって」
「――――……そんなの別に構わんよ。謝んなや」
「……うん。ありがと」
ふ、と笑んだ葵に。
堪えきれなくなって。
「――――……」
オレは、葵の腕を掴むと、そのまま引き寄せた。
「――――……え……」
オレに、ぎゅ、と抱き締められた葵は。
困惑して、動けないでいるようだった。
公園、ふと見ると少し人は居るけれど、樹の下は暗くて、離れた人には見えないし。……見えてもええかと思いながら。葵を抱き締めていると。
「……やまと……?」
葵の、少し、掠れた声。
「――――……オレの顔見て、楽んなるなら、いつでも来ればええし。オレもいつでも行く」
「――――……」
葵は黙ったまま。
オレの言葉を、聞いていた。
「……葵が、一番大事やもん、オレ」
「――――……」
葵は、黙ったまま何も言わない。
――――……言わないけれど、離れようとする訳でも、なかった。
オレはそのまま、さらに強く、ぎゅ、と抱きしめた。
「オレ――――……葵が好きや」
不意に口をついて出た言葉。
次の瞬間。自分でも驚いてしまった。
って。
――――……オレ、今。好きやて。言うたな……。
……自分が葵を好きかもしれないという事は。
随分前から気付いてはいたけど。
普通の男友達に対する気持ちとは明らかに違う事。
自分が、女子に対して興味を持てない原因も分かってて。
ただ、自分の中でも、ちゃんとした、言葉にはしていなかった。
葵の事が、そういう意味で、好き。
――――……この言葉を、初めて自分の中に、言葉として形作った。
まさかそれを、その瞬間に、本人に直接言ってしまうとは。
自分でも少し呆れてしまいながら。
「……あの――――……な、葵……」
「……」
「……オレ、ほんまに、葵の事が好きなんや」
「――――……大和 ……?」
抱き締められていた葵は、オレの胸に手を付いて。ゆっくりとオレから離れた。
そして、そのまま、ゆっくりと顔を上げて。
吸い込まれそうやなと思う位、綺麗な瞳で、オレを見上げてくる。
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