1 / 6
第1話
しおりを挟む一人暮らしの家への帰り道。静かで暗い道を歩いていた。
ふと気づいて見上げたら、今日は、月が、青く見えて。
キレイだな。
そう思ったら、切なくなって、スマホを手に取った。
二十三時。こんな遅くに、普通は友達に電話はしない。
でも。
一人を選んで、電話をかけた。
三コールだけ。出なかったら切ろう。一、二……。
『もしもし? 凌?』
優しい口調の声に、心に刺さってたトゲみたいなのが、一瞬で溶けた。
「真也……」
『……お前まだ外?』
「帰るとこ」
『帰り途中?』
「うん。もうすぐアパート」
その時。
通りかかっていたマンションの、二階の窓が開く音がして。
ベランダから、こっちを見下ろす、男。
「凌。……何してんの」
苦笑いの真也。
「今帰り道で、通りかかったとこ」
そう返すと、真也は、ちょっとため息を付いた。
「上がってく?」
「……いいの?」
「そのためにそこから電話したんだろ? 今エントランス開くから」
そう言って真也は部屋の中に姿を消した。
オレがマンションの敷地に入り、一つ目の自動ドアを入った所で、奥の鍵付きの自動ドアが開いた。そこを通りぬけて、エレベーターに乗り込んだ。二階で降りると、真也がエレベーターの前に立っていた。
「寝るとこだった?」
「いや。まだ起きてた。後でお前に電話しようと思ってた」
「そうなの?」
「ん」
頷きながら、部屋のドアを開けて、先に中に入れてくれる。
「真也の用事何だった?」
「中入って、落ち着いたら話す」
そんな風に言う真也。
玄関で靴を脱ぐと、みゃぁ、と猫の鳴き声。
「雪ー!」
むぎゅ、と抱き締める。雪は真っ白な毛色の猫。
子猫だった時に一緒に拾って、真也のところで飼ってくれることになった子。
「元気だった?」
よしよし、雪を抱っこして撫でながら、リビングへと向かう。
「彼氏とデートって言ってたよな? ……飯は食ってきたよな?」
「……食べなかった」
「何で? こんな時間まで?」
「ちょっとモメちゃって……」
「……仲直りしてきたのか?」
言葉に詰まりながら雪を撫でていると、真也が、ため息をついた。
「お前、今日泊まる?」
「え。いいの?」
「こんな時間に入ってきて、泊まる気、ねえの?」
「明日約束ないの? 彼女とは?」
「無いよ」
「んじゃあ、泊めてくれる?」
「いーよ。じゃあ簡単に飯作っといてやるから、風呂入って温まってこい。もうすぐ入ろうと思って、お湯入れたとこだから」
「ありがと……」
「バスタオルとか服、持ってっとくからとにかく入っとけ」
「うん」
言われるままにシャワーを浴びながら、真也は優しいなあ、なんてしみじみ思う。
98
あなたにおすすめの小説
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
双葉の恋 -crossroads of fate-
真田晃
BL
バイト先である、小さな喫茶店。
いつもの席でいつもの珈琲を注文する営業マンの彼に、僕は淡い想いを寄せていた。
しかし、恋人に酷い捨てられ方をされた過去があり、その傷が未だ癒えずにいる。
営業マンの彼、誠のと距離が縮まる中、僕を捨てた元彼、悠と突然の再会。
僕を捨てた筈なのに。変わらぬ態度と初めて見る殆さに、無下に突き放す事が出来ずにいた。
誠との関係が進展していく中、悠と過ごす内に次第に明らかになっていくあの日の『真実』。
それは余りに残酷な運命で、僕の想像を遥かに越えるものだった──
※これは、フィクションです。
想像で描かれたものであり、現実とは異なります。
**
旧概要
バイト先の喫茶店にいつも来る
スーツ姿の気になる彼。
僕をこの道に引き込んでおきながら
結婚してしまった元彼。
その間で悪戯に揺れ動く、僕の運命のお話。
僕たちの行く末は、なんと、お題次第!?
(お題次第で話が進みますので、詳細に書けなかったり、飛んだり、やきもきする所があるかと思います…ご了承を)
*ブログにて、キャライメージ画を載せております。(メーカーで作成)
もしご興味がありましたら、見てやって下さい。
あるアプリでお題小説チャレンジをしています
毎日チームリーダーが3つのお題を出し、それを全て使ってSSを作ります
その中で生まれたお話
何だか勿体ないので上げる事にしました
見切り発車で始まった為、どうなるか作者もわかりません…
毎日更新出来るように頑張ります!
注:タイトルにあるのがお題です
諦めた初恋と新しい恋の辿り着く先~両片思いは交差する~【全年齢版】
カヅキハルカ
BL
片岡智明は高校生の頃、幼馴染みであり同性の町田和志を、好きになってしまった。
逃げるように地元を離れ、大学に進学して二年。
幼馴染みを忘れようと様々な出会いを求めた結果、ここ最近は女性からのストーカー行為に悩まされていた。
友人の話をきっかけに、智明はストーカー対策として「レンタル彼氏」に恋人役を依頼することにする。
まだ幼馴染みへの恋心を忘れられずにいる智明の前に、和志にそっくりな顔をしたシマと名乗る「レンタル彼氏」が現れた。
恋人役を依頼した智明にシマは快諾し、プロの彼氏として完璧に甘やかしてくれる。
ストーカーに見せつけるという名目の元で親密度が増し、戸惑いながらも次第にシマに惹かれていく智明。
だがシマとは契約で繋がっているだけであり、新たな恋に踏み出すことは出来ないと自身を律していた、ある日のこと。
煽られたストーカーが、とうとう動き出して――――。
レンタル彼氏×幼馴染を忘れられない大学生
両片思いBL
《pixiv開催》KADOKAWA×pixivノベル大賞2024【タテスクコミック賞】受賞作
※商業化予定なし(出版権は作者に帰属)
この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。
https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
鈴木さんちの家政夫
ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。
幼馴染ってこういう感じ?
とうこ
BL
幼馴染の遥翔と汀は、毎年夏休みいっぱいだけ会って遊ぶ幼馴染。
しかし、1歳違いのお互いが小学生になった夏休みを境に会えなくなってしまう。
筆者初の青春もの!今回は撮って出し方式で参りますので、途中齟齬が生じた場合密やかに訂正を入れさせていただくこともあることをご了承ください。
できるだけそんなことがないようにします^^
それではお楽しみください♪
とうこ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる