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第3話
しおりを挟む真也はコンロの火を止めて歩いてきて、オレの隣に膝をついてから、雪の前に並んで座った。
「なあ、あのさ。いっこ、大事な話があるんだけど」
「……? うん?」
「その前に……お前、今まで何人彼氏居たか分かってる?」
「さあ……何人だっけ」
「五人」
「え、そんなに居たっけ?」
「ニ日で別れた奴とかも入れてな。お前結構モテるもんな……」
「ああ……ていうか、よく覚えてるね、真也。さすが」
「さすがじゃねえよ……」
ため息をつきながら、オレを見つめる。
「でさ。こっから、本題なんだけど」
「……うん」
「オレとお前で、付き合ってみないか?」
「え? ……??? ん???」
「オレもお前も、それぞれ色んな奴と付き合って来たけどさ」
「――――……」
「……結局、オレ、お前が一番可愛いんだよね」
「……で、も、真也って、ゲイじゃ……ないよね?」
「うーん……」
「うーんって?」
「しいて言うなら、女の子が好きっていう明確なもんも無い気がする。ずっと色々考えながらきたんだけど」
「――――……」
「凌の側が一番楽しくて、凌が一番可愛いと思ってるのはずっとそうでさ。飯も作ってやりたいし、泣いたら抱き締めてあげたいし。つか、なんかもう、他の奴に、泣かされてほしくない」
「――――……」
「今までってさ、オレらどっちかに付き合ってる奴が居たけど……。でも、今、オレ達、誰とも付き合ってないだろ」
「え、真也、彼女は?」
「少し前に別れた。さっき電話しようと思ってたっていうのも……お前にこの話をして告ろうかと思ってて。でも、今日彼氏と会ってるのも知ってるし、どうしようかなと思ってたら。……お前がオレのとこに来てくれた」
「――――……」
「凌、可愛いし良い奴だし、すげえ好きだけど……付き合う奴がひどすぎてさ。浮気とか当たり前みたいな奴とばっか付き合ってて、オレ、すげえ嫌だったんだよ」
……顔で選んでしまってたからだろうか。それはオレも悪いと思う……。
「……う。……なんかごめん……いつも聞いてもらって……」
「……聞くのは良かったんだけど。途中から、相手に腹が立って来て」
真也が、手を伸ばして、オレの頬に触れた。
「オレ、浮気はしない。お前が大事で泣かせたくないから」
「――――……」
「今までもお前のこと、大事にしてきただろ? オレ」
「…………うん」
「付き合っても、変わらないと思う。ていうか、もっと大事になると思う……だから、オレと、付き合ってくれない?」
「……え……」
「……………」
「オレ、は……」
「うん。凌は?」
「え……あの…… いい、けど……」
思わずそう言ったら。
真也は、ふ、と嬉しそうに笑った。
「ん、じゃあ決まりな?」
言った真也に、どうしていいか分からなくなってきて、俯いた顎を上げさせられて。
え、と思っている間に、触れるだけのキスを、された。
「…………!!」
「は。……何その顔。可愛いんだけど」
クスクス笑われて、頬に触れられる。
「……だっ、て……平気、なの?」
「平気って何?」
「……だって……オレ、男、だし……」
そう言うと、真也はオレを見つめたまま、ふ、と笑った。
「そういう意味で好きじゃなきゃ、付き合おうなんて言わないから」
「――――……」
唖然としてるオレに、真也はまたクスクス笑い出した。
「まだ実感しないだろうけど。明日から実感してって? オレも、してくから」
言われて、とにかくそれ以外できることはなくて、ただ小さく、何度か頷く。
「とりあえず、飯食って、良く寝て、明日はお前の誕生日デート、な」
「……う、ん」
「飯の準備、手伝って」
「……うん」
さっきまで、この世の終わりみたいな気分だったのに。
――――……世界が今から始まるみたいな、キラキラした感覚。
「誕生日プレゼント、何か欲しいものある?」
お皿を出しながら、楽しそうに真也が笑う。
「……無いよ」
「無いの? んー、じゃあ、店とか回りながら探そ」
「……でも無いよ?」
「いいから、探せよ? 記念になるもの、贈るから」
「……ん」
楽しそうな真也に、少し頷きながら、心の中で思う。
……オレが真也に対して、持ってきた気持ちは。
……絶対叶わないと思って、奥底に、封じ込めてきていたから。
二十歳の誕生日、恋人として過ごせるなんて。
それ以上、何もいらないんだけどな……。
そんなことを思いながら、オレが真也を見上げると。
何も知らない真也は、それでも、優しくふわりと微笑んだ。
- Fin -
(2022/12/24)
2023/9/29
少しだけ番外編書きます。→
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