「誕生日前日に世界が始まる」

星井 悠里

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番外編

番外編「一緒に時を」2/3

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 朝ごはんを一緒に片付けてから、真也と電車に乗って街に出てきた。
 いろんな店が立ってる、めちゃくちゃ混んでる街。
 普段暮らしている、静かなところとは大違い。

 改札を出ると、真也はオレを振り返った。

「何が欲しいか少しは考えた?」
「んー……」

 もうなんか、こうして一緒に居られるだけでいい。
 友達としてじゃなくて、付き合った状態で、真也と居られるなんて、胸いっぱいで。
 欲しいものなんて、全然浮かばない。

「……何も、いらないよ?」
「そればっかり」

 ふ、と真也は笑う。

「お前の考えてること、あててやろっか」
「……?? うん」

 なんだろ、と思って見上げると。

「真也と居れるだけでいい、とか、そんな感じ?」
「――――……」

 ぼぼぼ。
 顔が一気に熱くなった。

 そのオレの顔を見て、頬に触れてくる。

「あっつ、お前」

 クスクス笑う真也が大好きだけど、街中だし、真也近すぎるし。
 ふ、と手から逃れると、真也は、ふ、と笑ってオレの頭を撫でた。

「そんな気にしなくても、平気。仲いいなって思うくらいだよ」

 くす、と笑いながらオレの腕を軽く掴んで引いて歩き出す。

「あたりってことは、もうお前から欲しいものは出て来なそうだから、オレが持ってほしいものを、贈る」
「え。何?」
「一緒に選ぼうぜ」

 持ってほしいもの。一緒に選ぶ。
 何だろう。

 真也に連れられて入ったのは、家電量販店。
 何だろう??

 どんどん中に進んでいく。

「真也、何買うか決まってたの?」
「うん。どうせ言わないだろうなーと思って」
「……」
「胸いっぱい、って顔してたし」

 ……なんか嘘みたい。
 真也のこの、キラキラの顔が、オレに向けられてるとか。

 しかも、そういう意味で。

 今までずっと友達で。
 大体どっちか付き合ってる人が居た。どんなに仲が良くても、オレ達は、そんな雰囲気には、絶対ならなかった。オレも、気持ちを微塵も出さなかった。

 出していいんだと思ったのと。
 真也がすごく優しい瞳で見てくるのと。

 ――――……そのせいで簡単に顔が赤くなる。
 ……オレ、よく我慢、出来てたな、今まで。

 好きでいいとか。好きで居てくれるとか思うと。
 嬉しすぎる。

 連れていかれて、真也が止まったのは、時計コーナーだった。

「時計……?」
「うん。同じのでいい?」
「?」
「お揃いが嫌なら、デザインだけ違うのでもいいけど」
「……ううん。別に時計、一緒でも全然……」
「指輪とかは目立つだろ。今オレらがするにはさ」
「――――……」

 あ。お揃いで。
 指輪、とか、してくれる気、あるんだ。

 じーん、とウルウルしそうなオレの両目。

「なんか色々調べてたけど、ここら辺が人気っぽい。めちゃくちゃ高いのは買えないけど、これなら二つでも買えるし、故障とかも少ないらしいよ。デザイン、好きならいいかなと思うけど」
「好き」
「……てか、お前、時計見てる?」
「……なんでも好き」
「凌」

 苦笑いの真也。
 もうウルウルしてんのもバレてるっぽいので、ゴシゴシ目を擦って。ちゃんと時計を見る。

「……あのさ、オレが真也の、買っちゃダメ?」
「何で。オレが買うつもりで連れてきたし」

「でも、真也のはオレが買いたい。オレが買ったの、つけてほしい」
「んー……じゃあ分かった。時計はお互いプレゼントな」
「うん!」
「今日、誕生会してやるから。そつちはオレが全部用意する」
「うん」

 誕生会だって。
 ……ふふ。

 うれしーなー。

 それから、一緒に選んで、一緒に買った。
 どっちもプレゼントにって言って、店員さんは普通に受けてくれたけど、なんかちょっと変かな?と、二人で笑いながら包装を待った。






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