俺嫌な奴になります。

コトナガレ ガク

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雨は女の涙

第百七十七話 黙考

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 皆それぞれやることを果たすべく飛び出していき誰もいなくなった会議室で俺は一人黙考していた。皆それぞれパーツを掻き集めるべく動く。その集められたパーツから勝利への道筋を立てるのが俺の仕事。
 誰もいない。
 誰も俺を認識しない。
 俺も目を瞑り世界を認識しない。
 ある意味世界に俺独り、誰の干渉を受けない空間で己の内に引き籠もる。
 気付かれたらお終い。気が変わってもお終い。巧みに餌をちらつかせて巣穴から誘き出し、捕らえるチャンスはオンリーワン。
 圧倒的に此方が不利の中、俺がフォンに対して持つ数少ないアドバンテージの一つが合谷達を襲った犯人の目的を知っていることがある。
 それは商売敵でも合谷達の金目当てでもない、純然たる恨み。
 合谷達にかつて襲われて人生をめちゃくちゃにされた女達の恨み。
 これを知っているかいないかで犯人へのアプローチの仕方が全く変わる。普通なら金と怨恨の二つの線で捜査しなければいけないところを俺は怨恨一本に絞れる。
 アプローチを怨恨に絞ると問題は恨みを持つ女と雨女がどうやって結びついたかだ。
 彼女自身の怨恨ということはない。この間遭遇した時、雨女自身から純粋な合谷達への恨みは感じられなかった。金か正義感かどっちかまでは絞れないが、彼女は依頼された者だと断言できる。
 普通なら合谷達の被害に遭った女性達を一人づつ当たっていけば、いつかは依頼人に辿り着く。合谷達が地下で販売している動画から被害者を割り出し、一人一人捜し出して尋問していく。まさしく工藤達警察の組織力を活かす仕事。



 だが、却下だな。
 雨女逮捕は本命じゃない。本命じゃないことの為に事件の傷が癒えるのをじっと耐えている被害者達の過去を穿り返すようなことはしたくない。
 甘いと分かっているが、他人の悪意に人生を潰されそうになった同じ経験を持つ者として、それはしたくない。
 恨む者と恨みを果たす者、どうやって結びつく?
 昔なら都市伝説的に駅の伝言板とか雑誌の投書欄、人づての紹介、今ならインターネットと古今東西何かしらのサインを雨女側から発しなければ依頼人を募集できないはず。
 魔の持つ超常的な力で恨みを持つ女の前に自然に現れるなら手の打ち用は無いが、その時は諦めるだけのこと、やれることはやる。
 そこでネットで恨み関連のサイトを延々とサーフィンしていくと、こんな都市伝説が目に付いた。
『雨の日に傘を差さずにうらぶれた神社の賽銭箱に恨みの手紙で包んだお賽銭を入れると男への恨みを雨女様が晴らしてくれる』
 雨の部分が引っ掛かった。だがこの噂を追跡しても、肝心のどの神社にお参りに行けばいいのか明記したサイトは無かった。
 もしかしたら本気で恨みを抱えた女なら場所を明記したサイトに辿り着けるのかもしれないが、そんな女知り合いにいない。
 ここで手詰まりか。
 多分だがフォンは合谷達を囮に使って襲ってきたところを返り討ちにするつもりだろう。雨女の動向を掴んでおければ、絶妙のタイミングで嗾けることも出来るし、逆に出てきて欲しくないときには引っ込んでいて貰うことも出来る。
 雨女は不確定要素として舞台を引っかき回してくれかも知れないが、それがいい方向に行くとは限らない。下手をすれば炙り出したフォンが引っ込んでしまうかも知れない。
 やはり、理系としてこんな不確定要素は排除したい。世の中にはカオス要因をその場の臨機応変で活用する主人公タイプもいるが俺は違う。用意周到に事前準備して詰め将棋の如く相手を追い詰めていくのが本領。
 つまり雨女は俺自身の手で確保してしまうのがベストなんだが今は手がない。叢雲と大原に期待させて貰うしかないのか。
 だが他人に期待という依存しきりはやはり性に合わない。ならばせめて虫除けを用意しておくくらいはすべきか。
 雨女の能力は、善人もしくは女には聞かないと予想される。
 そこそこ善人で女。そしてあの超人的体術に対抗できる者。
 時雨が一番に思い付くが、一番に候補から消す。時雨を強姦魔の合谷達に近づけたくない穢れてしまう。
 キョウ。すれていそうで意外と初心のような。
 如月さん。うん駄目だな。あの人が善人とか無い。
 弓流。戦闘力がそもそも無い。
 ユリ。そこそこ善人でそこそこ戦闘力もあるが、致命的にこういう仕事に向いていない。
 燦。能力に問題なし、性格もクールだ合谷達如きに汚染されることもないだろう。だが残念なことに治療中だ。
 やはりまだまだ俺にはツテが足りない。今後の為にはもっと増やす必要があるな。
 そうなると一人今後に期待する意味で使ってみたい女が居た。彼女の方から自分を使って欲しいとアプローチされているし、ダメ元で使ってみるか。駄目だったら切ればいい、使えるようなら今後も使えばいい。
 そろそろレンタルオフィスの使用時間が切れるか。俺は席から立ち上がった。

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