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世界救済委員会
第百九十七話 とばっちり
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「はあーーーーーーーっ」
ジャンヌは空き地に飛び出すと同時に鳥の如く飛び上がった。
漫画や格闘ゲーム、現実ならプロレスでよく見る派手な空中殺法。奇襲としてなら相手の意表を突いて有効かも知れないが、冷静に対処すれば空中で身動き出来ないジャンヌは鴨撃ちの如き的。
事実男は冷静にジャンヌの軌道を見切ってカウンターを狙っている。
お見事、だが俺の存在を忘れているぜ。これは一対一の試合じゃ無い。殺し合いならルールは無く興業なら乱入は盛り上げ要素だろ。
丁度良く地面に転がっている俺は腕をにゅっと伸ばして男の足を手で鷲掴み、文字通り足を引っ張る。
「!」
「セビアン」
男は虚を突かれた顔をしジャンヌは鷹のごとく鋭い顔になる。
ジャンヌは俺のアシストで生まれた隙を冷静に見積もったのか、ここで更にくるっと縦に回って遠心力を加えた跳び蹴りを男に叩き込む。
だが男も並みじゃ無い崩された体勢ながらクロスブロックでジャンヌの跳び蹴りを受けきった。小鳥のように軽いジャンヌの蹴りとはいえ並みの体幹じゃ無い。俺より少し背が高いくらいの体格、大熊みたいな生まれ持った巨漢とは違う、どれほどの修練を積み重ねてきたのか覗える。
予測していたのか動揺すること無くジャンヌは大幹の如く受け止められた反動を利用して再度垂直に舞い上がる。その軽やかさ、風乙女、重力ですらジャンヌを縛れないのか。
今度は人間が尤も対処しにくい真上からの襲撃。もしかしてここまでの流れはジャンヌの思惑通りなのか、ここで決めるとばかりに気付いたときにはジャンヌの両手の指にスローイングナイフが挟み込まれていた。
ジャンヌは両手を翼のように広げる。後は羽ばたけばナイフが雨のように広範囲に降り注いでくるのであろうが・・・。
えっこれって下手すれば俺に当たるんじゃ?
手を離して逃げるべきだ。ここまで持ち込めばジャンヌの期待に十分応えただろうし、ジャンヌも俺が傷付くことを望んではいない。
流石に俺もここでジャンヌが俺諸共男を始末しようとしているなんて被害妄想はしない。ジャンヌはここで俺が当然逃げると思っている。
分かりきった明晰な判断、だがここで男の実力を見切った故の一歩踏み込んだ合理が混じり込む。
これだけの男相手に相打ちならお釣りが来る。
無視出来ない。
振り払えない。
笑い飛ばせない。
この男をまともに相手したらどれほどの出血を強いられるか。ここでナイフに刺さるくらいの怪我はするだろう。
どうせ怪我するなら、有意義に。リターンがあるなら無駄じゃ無い。
ここでジャンヌが決めてくれるとも怪我をしないで勝てるとも思えない悲しい俺。
俺は手を離さなかった。
ジャンヌは一瞬だけ顔を顰めたが俺の心意気を汲んでくれたのか一切の躊躇無くスローイングナイフを放った。
「ぬんっ」
男は俺を無理に振り払うことに労力を費やしたりしなかった。変身するかの如く一瞬でジャケットを脱ぎ去り頭上に振り払った。旗の如くはためくジャケットに鋭く迫るスローイングナイフは全て巻き取られ地面に投げ捨てられる。
「いい加減その手を離せ」
男は此方を睨むと同時に俺が掴んだ足を軸に体を回して蹴りを俺の頭に叩き込んでくる。咄嗟に手を離して腕でガードしなかったら頭をサッカーボールにされていた。
蹴りを放った反動を利用して男は頭上から落下してくるジャンヌに対してジャケットを再度振り払う。
ジャンヌもジャケットに絡め取られてしまうのか?
だがジャンヌは振り払われ巻き付いてくるジャケットの上に蝶の如くぴたっと止まった。そして何事も無くそこから飛び去っていく。
はああ~!? 俺は夢でも見てるのか?
ジャンヌは神業を披露しておいて何でも無いことの如く地面にふわっと着地する。
こっこの化け物共が。こんな戦い凡人の身で付いていけるか。俺は蹴られたことを利用して地面を転がり二人から距離を取ると立ち上がった。
モブに等しい俺としては隠れて戦いの解説でもしているのがお似合いなのだが、そうもいかない。致命的なことに男を挟んでジャンヌの方に退路がある。逃走路の確保が出来ない状態で暢気にしていられるほど剛胆じゃ無い。
どうしたものか。
「逃がさないわよ」
ジャンヌは男を闘志燃える瞳で睨み付ける。
「美しい少女からの熱烈なアプローチには答えてあげたいが、今は色々と立て込んでいてね。後日再会するわけにはいかないかな。その時にはとっておきのレストランにご招待するよ」
意外なほどに男はドンファン。
ジャンヌは闘志満々だが男の方はそうでもなさそうである。うまいことジャンヌを諌めれば男の方から去ってくれそうである。
「連れないのね。でも私の方は貴方に今用があるの。セクデスとシン世廻の橋渡しをしたことは分かっているのよ。
世界救済委員会エージェント」
なにやら聞き慣れた名と聞き慣れない名が出てきた。シン世廻だけでも食べあぐねているというのに、余計なサービスで追加料理は辞めてくれ。俺は小食なんだよ。
「ほう、そこまで辿り着いたのか。流石聖女候補といったところなのか、いや寧ろその程度出来て貰わなくては困るかな」
「私じゃ無いわ。アランよ。アランがもしもの時に残してくれた記録に貴方達のことが記されていたわ」
怒れる聖女。怒りは禍々しくさせるが、ジャンヌの怒りには神々しさを感じてしまう。
アランの名が出た以上もうジャンヌに次の二文字は無いことを悟った。是が非でも、この男とここで決着を付ける気だろう。
「その人徳も貴方の力さ。
それにしても記録を残されるとはヨーロッパ支部の連中の失態だな。めんどくさいことにしてくれる」
巫山戯た名前だが、日本ローカルどころか世界規模の組織なのかよ。
ますます小市民の俺の出る幕は無い。
「失態じゃ無いわ。アランの功績よ」
「ふむ。しかしものは考えようか。
これで僕が君を多少味見しても文句は言わせない」
男は料理の素材を吟味するかのようにジャンヌを観察する。
「そんな心配は気が早いんじゃ無くて」
ジャンヌは男の値踏みする視線に不快感を表し言い返す。
「聖女としての貴方は買うが、純粋な戦闘力としてなら僕の方が上だよ」
それには賛成だ。ジャンヌがじゃじゃ馬だからか前に出てくるようだが、ジャンヌの真価は後衛にある。
加えて、この男は魔人でもユガミでも無い人間だ。普通に鍛えて強い人間という、ジャンヌの天敵だ。
なのになぜああも強気なんだか。アランも相当苦労したんだろうな。
「そうかもね。一対一ならそうかも知れないけど。今の私にはアランにも劣らない信頼出来る相棒がいる。
負けないわ」
ジャンヌの信頼する仲間への微笑み、勝利を疑わない視線。それらが男を通り越して俺に注がれてくる。
男の実力を見切ってこの場を濁そうとしていた身には心が痛く。
過大評価して俺の実力を見誤っているのはジャンヌに胃が痛い。
「それは後ろの彼のことを言っているのかい? 彼は確かに日本の警官にしてはやるようだが、所詮その程度僕等には付いて来れない」
悔しいが今会ったばかりのこの男の方が俺を正確に把握している。
「彼を馬鹿にするのは私が許さないし、見下したしっぺ返しは自分自身で味わうことになるわよ」
これも褒め殺しというのか?
信じられないことに、これは嫌みでも当て擦りでもないんだぜ。
言葉通り、俺が馬鹿にされてジャンヌは怒っているし、俺なら男に一泡吹かせると信じている。
これが俺を煽てて上手く利用してやるくらいの女の打算ならやりやすいというのに、胃が何やらむずむずする。
そして嫌な予感に頭がズキズキする。
「へえ~彼がねえ。
ならまずは君の人を見る目が正しいか評価してあげよう。それも聖女にとって大事な能力の一つ」
ほらみろ。
男はRPGの基本の如く雑魚から潰そうと一気に回って一気に俺に詰め寄ってくるのであった。
完全にとばっちりだ。
ジャンヌは空き地に飛び出すと同時に鳥の如く飛び上がった。
漫画や格闘ゲーム、現実ならプロレスでよく見る派手な空中殺法。奇襲としてなら相手の意表を突いて有効かも知れないが、冷静に対処すれば空中で身動き出来ないジャンヌは鴨撃ちの如き的。
事実男は冷静にジャンヌの軌道を見切ってカウンターを狙っている。
お見事、だが俺の存在を忘れているぜ。これは一対一の試合じゃ無い。殺し合いならルールは無く興業なら乱入は盛り上げ要素だろ。
丁度良く地面に転がっている俺は腕をにゅっと伸ばして男の足を手で鷲掴み、文字通り足を引っ張る。
「!」
「セビアン」
男は虚を突かれた顔をしジャンヌは鷹のごとく鋭い顔になる。
ジャンヌは俺のアシストで生まれた隙を冷静に見積もったのか、ここで更にくるっと縦に回って遠心力を加えた跳び蹴りを男に叩き込む。
だが男も並みじゃ無い崩された体勢ながらクロスブロックでジャンヌの跳び蹴りを受けきった。小鳥のように軽いジャンヌの蹴りとはいえ並みの体幹じゃ無い。俺より少し背が高いくらいの体格、大熊みたいな生まれ持った巨漢とは違う、どれほどの修練を積み重ねてきたのか覗える。
予測していたのか動揺すること無くジャンヌは大幹の如く受け止められた反動を利用して再度垂直に舞い上がる。その軽やかさ、風乙女、重力ですらジャンヌを縛れないのか。
今度は人間が尤も対処しにくい真上からの襲撃。もしかしてここまでの流れはジャンヌの思惑通りなのか、ここで決めるとばかりに気付いたときにはジャンヌの両手の指にスローイングナイフが挟み込まれていた。
ジャンヌは両手を翼のように広げる。後は羽ばたけばナイフが雨のように広範囲に降り注いでくるのであろうが・・・。
えっこれって下手すれば俺に当たるんじゃ?
手を離して逃げるべきだ。ここまで持ち込めばジャンヌの期待に十分応えただろうし、ジャンヌも俺が傷付くことを望んではいない。
流石に俺もここでジャンヌが俺諸共男を始末しようとしているなんて被害妄想はしない。ジャンヌはここで俺が当然逃げると思っている。
分かりきった明晰な判断、だがここで男の実力を見切った故の一歩踏み込んだ合理が混じり込む。
これだけの男相手に相打ちならお釣りが来る。
無視出来ない。
振り払えない。
笑い飛ばせない。
この男をまともに相手したらどれほどの出血を強いられるか。ここでナイフに刺さるくらいの怪我はするだろう。
どうせ怪我するなら、有意義に。リターンがあるなら無駄じゃ無い。
ここでジャンヌが決めてくれるとも怪我をしないで勝てるとも思えない悲しい俺。
俺は手を離さなかった。
ジャンヌは一瞬だけ顔を顰めたが俺の心意気を汲んでくれたのか一切の躊躇無くスローイングナイフを放った。
「ぬんっ」
男は俺を無理に振り払うことに労力を費やしたりしなかった。変身するかの如く一瞬でジャケットを脱ぎ去り頭上に振り払った。旗の如くはためくジャケットに鋭く迫るスローイングナイフは全て巻き取られ地面に投げ捨てられる。
「いい加減その手を離せ」
男は此方を睨むと同時に俺が掴んだ足を軸に体を回して蹴りを俺の頭に叩き込んでくる。咄嗟に手を離して腕でガードしなかったら頭をサッカーボールにされていた。
蹴りを放った反動を利用して男は頭上から落下してくるジャンヌに対してジャケットを再度振り払う。
ジャンヌもジャケットに絡め取られてしまうのか?
だがジャンヌは振り払われ巻き付いてくるジャケットの上に蝶の如くぴたっと止まった。そして何事も無くそこから飛び去っていく。
はああ~!? 俺は夢でも見てるのか?
ジャンヌは神業を披露しておいて何でも無いことの如く地面にふわっと着地する。
こっこの化け物共が。こんな戦い凡人の身で付いていけるか。俺は蹴られたことを利用して地面を転がり二人から距離を取ると立ち上がった。
モブに等しい俺としては隠れて戦いの解説でもしているのがお似合いなのだが、そうもいかない。致命的なことに男を挟んでジャンヌの方に退路がある。逃走路の確保が出来ない状態で暢気にしていられるほど剛胆じゃ無い。
どうしたものか。
「逃がさないわよ」
ジャンヌは男を闘志燃える瞳で睨み付ける。
「美しい少女からの熱烈なアプローチには答えてあげたいが、今は色々と立て込んでいてね。後日再会するわけにはいかないかな。その時にはとっておきのレストランにご招待するよ」
意外なほどに男はドンファン。
ジャンヌは闘志満々だが男の方はそうでもなさそうである。うまいことジャンヌを諌めれば男の方から去ってくれそうである。
「連れないのね。でも私の方は貴方に今用があるの。セクデスとシン世廻の橋渡しをしたことは分かっているのよ。
世界救済委員会エージェント」
なにやら聞き慣れた名と聞き慣れない名が出てきた。シン世廻だけでも食べあぐねているというのに、余計なサービスで追加料理は辞めてくれ。俺は小食なんだよ。
「ほう、そこまで辿り着いたのか。流石聖女候補といったところなのか、いや寧ろその程度出来て貰わなくては困るかな」
「私じゃ無いわ。アランよ。アランがもしもの時に残してくれた記録に貴方達のことが記されていたわ」
怒れる聖女。怒りは禍々しくさせるが、ジャンヌの怒りには神々しさを感じてしまう。
アランの名が出た以上もうジャンヌに次の二文字は無いことを悟った。是が非でも、この男とここで決着を付ける気だろう。
「その人徳も貴方の力さ。
それにしても記録を残されるとはヨーロッパ支部の連中の失態だな。めんどくさいことにしてくれる」
巫山戯た名前だが、日本ローカルどころか世界規模の組織なのかよ。
ますます小市民の俺の出る幕は無い。
「失態じゃ無いわ。アランの功績よ」
「ふむ。しかしものは考えようか。
これで僕が君を多少味見しても文句は言わせない」
男は料理の素材を吟味するかのようにジャンヌを観察する。
「そんな心配は気が早いんじゃ無くて」
ジャンヌは男の値踏みする視線に不快感を表し言い返す。
「聖女としての貴方は買うが、純粋な戦闘力としてなら僕の方が上だよ」
それには賛成だ。ジャンヌがじゃじゃ馬だからか前に出てくるようだが、ジャンヌの真価は後衛にある。
加えて、この男は魔人でもユガミでも無い人間だ。普通に鍛えて強い人間という、ジャンヌの天敵だ。
なのになぜああも強気なんだか。アランも相当苦労したんだろうな。
「そうかもね。一対一ならそうかも知れないけど。今の私にはアランにも劣らない信頼出来る相棒がいる。
負けないわ」
ジャンヌの信頼する仲間への微笑み、勝利を疑わない視線。それらが男を通り越して俺に注がれてくる。
男の実力を見切ってこの場を濁そうとしていた身には心が痛く。
過大評価して俺の実力を見誤っているのはジャンヌに胃が痛い。
「それは後ろの彼のことを言っているのかい? 彼は確かに日本の警官にしてはやるようだが、所詮その程度僕等には付いて来れない」
悔しいが今会ったばかりのこの男の方が俺を正確に把握している。
「彼を馬鹿にするのは私が許さないし、見下したしっぺ返しは自分自身で味わうことになるわよ」
これも褒め殺しというのか?
信じられないことに、これは嫌みでも当て擦りでもないんだぜ。
言葉通り、俺が馬鹿にされてジャンヌは怒っているし、俺なら男に一泡吹かせると信じている。
これが俺を煽てて上手く利用してやるくらいの女の打算ならやりやすいというのに、胃が何やらむずむずする。
そして嫌な予感に頭がズキズキする。
「へえ~彼がねえ。
ならまずは君の人を見る目が正しいか評価してあげよう。それも聖女にとって大事な能力の一つ」
ほらみろ。
男はRPGの基本の如く雑魚から潰そうと一気に回って一気に俺に詰め寄ってくるのであった。
完全にとばっちりだ。
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