俺嫌な奴になります。

コトナガレ ガク

文字の大きさ
203 / 328
世界救済委員会

第二百二話 遭遇

しおりを挟む
 森の迷い家から出てくると、今まで静寂の香りに包まれていたのが夢だったかのような人々が叩き出す雑音に囲まれる。
「これからどうする?」
 現実に帰って佇む俺にジャンヌが話し掛けてくる。
「策はある。下準備はしておくから、今日はゆっくりと休んでくれ」
 ジャンヌが協力してくれるなら思い付いた策がある。だがそれを思い付いたがままに今から実行するのは不用意すぎる。影響を考えれば準備は念入りに行うべきだ。今日はもう午後も中盤、多少巻いていくがこれから準備をしていれば夜になってしまう。
 無辜の命が失われる一刻を争う任務ならともかく馬鹿親の私事に睡眠時間を削って働く気はない。どうせ時間給じゃ無く成果給だしな。
 今日の所は明日行動をする為の根回しで終わらすので、ジャンヌがいても役に立つことは無いだろう。なら不用意に連れ回して変に悪目立ちするのはよろしくない。可愛い女を連れ回せば男共の嫉妬と反感を買い、更に踏み込めば俺とフランスの聖女様が組んだと知られれば、よからぬ勘繰りや利用しようとする政治的思惑を招いてしまう。
 尤も一番厄介な相手には知られているかもしれないがな。
 報告をすれば首輪は付けないなんて話を信じる俺はいない。一応辺りを探って監視がいないか探したが見つけられなかっただけだろう。ゲスの勘繰り被害妄想と言われるかも知れないが黒田が俺に監視を付けていないことはないと断言する。なら金髪少女の接触者が現れたことは知られていると思っていた方がいい。だが幸い波柴派は魔関連は畑違い、ならジャンヌが聖女だということが知られるまでには多少は時間が掛かるだろう。
 まあ、そもそもの話俺が報告をしないといけないんだがな。世界救済委員会とかいう世界規模の犯罪組織?とフランスの重要人物である聖女のことをいずれは報告しないわけにはいかないだろう。問題はタイミング。報告しても横槍が入れられなく隠蔽したと追求されない絶妙の加減を見極めるのは難しい。今日の所は現場に怪しい人物がいて危ないところを正義のヒロインに助けられたのでお礼に昼をご馳走したで誤魔化す。報告書の骨格はこれでいいとして、如何にして一見漫画のプロローグみたいな展開をまじめなしかめ面の文章に仕立て上げるか、理系なのに文系のような文章力が試される。こんな苦労をもうしたくなければ工夫がいる。
「いや違うな。ホテルで休む前にそこらの店で伊達眼鏡とかウィッグを用意して少しは目立たないようする変装の準備をしておいてくれ」
 こういうマメな行動の積み重ねが明日のトラブルを回避する。
「私そんな目立つかな」
 無意識だろうが膨らんだ胸の下で腕を組み軽く胸を押し上げ首を傾げる姿はファッション誌の表紙を飾れるコケティッシュ。これが計算なら直せるが自然体でこれなのが質が悪い。
 聖女として公の場では華やかでもいいだろうが、聖女として裏方で働くというのなら失格だな。
「可愛いって自覚があるんだろ?」
「まあ、そうだけど」
 一切の躊躇いなく自然に受け入れたぞこの女。奥床しいという日本語はまだ覚えてないようだ。
「だったら男の目を気にしろ」
「はは~ん、嫉妬? 可愛いジャンヌさんを他の男に見られたくないとか」
 ジャンヌがにやにやしながら此方を見てくる。
「言ってろ」
 おでこをデコピンしようとしたらするっと逃げられた。
「善処するわ。じゃあね、また明日」
 ジャンヌは此方を引っかき回すだけ回して笑顔で手を振りつつ去って行く。
 旋風のような女だ。
 ふう~明日から旋風が吹き起こすトラブルを少しでも抑えるために今日の下準備は念入りにしないとな、と振り返って駅の方に向くとそこには時雨と見知らぬ40代くらいの男性がいた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。 === エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中 【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

GATEKEEPERS  四神奇譚

ホラー
時に牙を向く天災の存在でもあり、時には生物を助け生かし守る恵みの天候のような、そんな理を超えたモノが世界の中に、直ぐ触れられる程近くに確かに存在している。もしも、天候に意志があるとしたら、天災も恵みも意思の元に与えられるのだとしたら、この世界はどうなるのだろう。ある限られた人にはそれは運命として与えられ、時に残酷なまでに冷淡な仕打ちであり時に恩恵となり語り継がれる事となる。 ゲートキーパーって知ってる? 少女が問いかける言葉に耳を傾けると、その先には非日常への扉が音もなく口を開けて待っている。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

都市街下奇譚

ホラー
とある都市。 人の溢れる街の下で起こる不可思議で、時に忌まわしい時に幸いな出来事の数々。 多くの人間が無意識に避けて通る筈の出来事に、間違って足を踏み入れてしまった時、その人間はどうするのだろうか? 多くの人間が気がつかずに過ぎる出来事に、気がついた時人間はどうするのだろうか?それが、どうしても避けられない時何が起こったのか。 忌憚は忌み嫌い避けて通る事。 奇譚は奇妙な出来事を綴ると言う事。 そんな話がとある喫茶店のマスターの元に集まるという。客足がフッと途絶えた時に居合わせると、彼は思い出したように口を開く。それは忌憚を語る奇譚の始まりだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

感染

宇宙人
ホラー
福岡県北九州市の観光スポットである皿倉山に航空機が墜落した事件から全てが始まった。 生者を狙い動き回る死者、隔離され狭まった脱出ルート、絡みあう人間関係 そして、事件の裏にある悲しき真実とは…… ゾンビものです。

かなざくらの古屋敷

中岡いち
ホラー
『 99.9%幽霊なんか信じていない。だからこそ見える真実がある。 』 幼い頃から霊感体質だった萌江は、その力に人生を翻弄されて生きてきた。その結果として辿り着いた考えは、同じ霊感体質でパートナーの咲恵を驚かせる。 総てを心霊現象で片付けるのを嫌う萌江は、山の中の古い家に一人で暮らしながら、咲恵と共に裏の仕事として「心霊相談」を解決していく。 やがて心霊現象や呪いと思われていた現象の裏に潜む歴史の流れが、萌江の持つ水晶〝火の玉〟に導かれるように二人の過去に絡みつき、真実を紐解いていく。それは二人にしか出来ない解決の仕方だった。 しかしその歴史に触れることが正しい事なのか間違っている事なのかも分からないまま、しだいに二人も苦しんでいく。 やがて辿り着くのは、萌江の血筋に関係する歴史だった。

処理中です...