俺嫌な奴になります。

コトナガレ ガク

文字の大きさ
233 / 328
世界救済委員会

第232話 違和感

しおりを挟む
 カツンコツンと足音を響かせ滲む闇から現れる。
 全身を黒いフード付きガウンで覆った悪意がゆったりと歩いてくる。
 悪意は待ち構えていた俺達を見ると意外そうに言う。
「おや、欲しかった嚇怒の赤を求めてきてみれば、他にも数点掘り出し物があるな。
 今日はついている」
 響いてくる天音同様中性的な声、フードで顔が隠れていることもあって男か女か判断出来ない。
 しかしセウに刷り込まれた先入観から会えば鳥肌立つ悪意を感じるかと思えば、何も感じないどころかガラスに相対したように己の感情すら返ってこない。
 瞬きをすればいなくなってしまいそうな陽炎。だがそんな奴が誰よりもこの場の注目を集めている。
 そのちぐはぐさが気持ち悪い。
「誰だか知らないけど今忙しいんだ、日を改めてくれないかな」
 自分だとて乱入者だろうに石皮音はいけしゃあしゃあと曰う。
「愉悦たる灰色」
 フードは石皮音を指差して言い。
「傲慢たる黄金」
 今度は天見を指差して言う。
 完全に石皮音の問いかけなど無視というより耳に入っていない感じだ。
「これはいい、いいぞ。滅多に手に入らないレアキャラ、いやSレアキャラか。
 くっくっく」
 フードから漏れる声にはまさにコレクターの歓喜が含まれていた。
 あまりの朧気に幽霊じゃ無いのかと思い始めていたところ、初めて感じる感情に人間だったんだと少し安堵した。
「なんだ此奴?」
 一人しゃべり続ける様子に鬼から呆れの言葉が零れる。
「理性ある群青、共感の緑。ふむふむふむ、一歩劣るがどれも滅多にお目にかかれない逸品、レアキャラ。
 なんだなんだ、今日はフェスか何かか」
 鬼や音先を指差して言う。
 周りのことなど全く気にしていない態度。自分の好きな分野になると没頭するタイプか。
 気にしてないのか。
 次にフードは俺を指差そうとするのと合わせて俺は銃を抜く。
 ピタリとフードの指先と俺の銃口が互いに向き合い、互いに息が合ったこの感動に俺は引き金を引く。
 俺は滅多に人を信じないが信じたら一途、セウが恐れる相手に隙があるのなら躊躇無く付け込ませて貰う。悪いが俺はこのフードの正体などに未練は無い。好奇心に負けて勝機を見逃せるほど剛胆じゃ無い。
 最高のタイミングだった。目と目、指先と銃口が合って生まれた虚。
 避けられるものじゃ無く、狙いも外れていない、はずだった。
「ふむ、我が意識を向ける一瞬に合わせて来るとは、なかなかのもの」
 フードは躱す動作一つすること無く、弾丸だけが外れていった。
 弾道が曲がったとかじゃ無い、狙いが外れただけなのだが。俺が下手だっただけと素直に認められない腑に落ちない何かが喉に引っ掛かる?
 もしかしてこれが此奴の魔なのか。
「ふむ、感情のあり方が少し違うがレアじゃ無い。凡種が捻れて潰れてあらゆる感情が歪に混じり合って焼結した結果、すなわち塵か」
「人を好き勝手に評価してくれるじゃ無いか」
 足下を見られないためにも怒りの口調を滲ませて俺は言っておく。
 どうしたものか? このまま此奴の魔の正体が不明のまま攻撃を仕掛けても、さっきの二の舞になる気しかしない。
 流石セウが畏怖する存在だ。
 とっとと逃げ出したいところだが、今後を考えれば此奴の魔の情報がもう少し欲しい。 此奴の魔を見切るためにも天見と石皮音を上手く煽って嗾けたいが、どうにも流れ的に俺が逆に矢面に立たされている。
 この流れを読めない石皮音じゃ無い、俺の視界にすら入らないように退いている。
 仕方ない、いつもの如く情報は自らの足で稼ぐしかないか。
「この私を勝手に評価したこと不愉快だな」
「おや気に触りましたかな」
 俺が動こうとするより早く天見が前に出てきた。
 天見はこの流れが読めてなかった?
 いや寧ろ読んだからこそ、己が脇に追いやられるのを嫌った?
「本来なら三度許すが、貴様にその必要は無いようだな。
 天啓が告げる、貴様邪悪だな」
 フードの何が気に入らないのか、俺が煽るまでもなくどんどん天見はフードに敵愾心を燃やしていく。対して不気味なほどにフードからは感情が読み取れない、天見が断言する邪悪さを俺は全く感じ取れない。
 これは僥倖なのか?
 石皮音も俺と同じ事を考えているだろうから、この隙に俺やセウにちょっかいを出してくることは無いはず。
 ここは一応の警戒をしつつ観戦モードに入ってフードの魔を見切るべき流れ、俺が描いた流れに期せずしてなっている。
「邪悪とは言い切ってくれる。我はただ己の技術を研鑽しているだけ、褒められこそすれ貶される謂われはないがな」
「黙れっ。戯れ言は耳が腐る。
 滅せられる前に慈悲で名を聞いてやろう。名乗れ」
 この駆け引きもクソも無い対応。己に絶対の自信がある奴にしか出来ない態度。
 羨ましい。
 所詮駆け引きも小細工も弱者の知恵に過ぎない。俺も一度でいいから力押しで無双をしてみたいぜ。
「手厳しいな。
 だが我に恥じる名は無い、ならば名乗ろう。
 我が名はコーティングマスター、魔術師 乃払膜 重積」
 乃払膜は声高らかに誇るように名を名乗り、天見と石皮音が一気に緊張するのが感じられ空気が一変する。
 えっ誰?
 俺は一人盛り上がりから取り残されるであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

GATEKEEPERS  四神奇譚

ホラー
時に牙を向く天災の存在でもあり、時には生物を助け生かし守る恵みの天候のような、そんな理を超えたモノが世界の中に、直ぐ触れられる程近くに確かに存在している。もしも、天候に意志があるとしたら、天災も恵みも意思の元に与えられるのだとしたら、この世界はどうなるのだろう。ある限られた人にはそれは運命として与えられ、時に残酷なまでに冷淡な仕打ちであり時に恩恵となり語り継がれる事となる。 ゲートキーパーって知ってる? 少女が問いかける言葉に耳を傾けると、その先には非日常への扉が音もなく口を開けて待っている。

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。 === エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中 【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

都市街下奇譚

ホラー
とある都市。 人の溢れる街の下で起こる不可思議で、時に忌まわしい時に幸いな出来事の数々。 多くの人間が無意識に避けて通る筈の出来事に、間違って足を踏み入れてしまった時、その人間はどうするのだろうか? 多くの人間が気がつかずに過ぎる出来事に、気がついた時人間はどうするのだろうか?それが、どうしても避けられない時何が起こったのか。 忌憚は忌み嫌い避けて通る事。 奇譚は奇妙な出来事を綴ると言う事。 そんな話がとある喫茶店のマスターの元に集まるという。客足がフッと途絶えた時に居合わせると、彼は思い出したように口を開く。それは忌憚を語る奇譚の始まりだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

感染

宇宙人
ホラー
福岡県北九州市の観光スポットである皿倉山に航空機が墜落した事件から全てが始まった。 生者を狙い動き回る死者、隔離され狭まった脱出ルート、絡みあう人間関係 そして、事件の裏にある悲しき真実とは…… ゾンビものです。

かなざくらの古屋敷

中岡いち
ホラー
『 99.9%幽霊なんか信じていない。だからこそ見える真実がある。 』 幼い頃から霊感体質だった萌江は、その力に人生を翻弄されて生きてきた。その結果として辿り着いた考えは、同じ霊感体質でパートナーの咲恵を驚かせる。 総てを心霊現象で片付けるのを嫌う萌江は、山の中の古い家に一人で暮らしながら、咲恵と共に裏の仕事として「心霊相談」を解決していく。 やがて心霊現象や呪いと思われていた現象の裏に潜む歴史の流れが、萌江の持つ水晶〝火の玉〟に導かれるように二人の過去に絡みつき、真実を紐解いていく。それは二人にしか出来ない解決の仕方だった。 しかしその歴史に触れることが正しい事なのか間違っている事なのかも分からないまま、しだいに二人も苦しんでいく。 やがて辿り着くのは、萌江の血筋に関係する歴史だった。

処理中です...