俺嫌な奴になります。

コトナガレ ガク

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世界救済委員会

第266話 囮

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「うっうわああああああああああああ」
「にっ逃げろ」
 突っ込んでくる軽トラックを見てエントランスにたむろしていた数名の自警団員は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
 愛は盲目とは言うが、軽トラックを体を張って止めようとするほどでは無いか。そこまでの愛があるなら見てみたかった気もするが、おかげで無駄な死傷者に心痛めること無くアクセルを踏みっぱなしに出来る。
 バリアフリー設定で住人が入口に横付けした車にスムーズに乗り込めるように中庭とエントランスの間は緩い坂で繋がっていて段差は無い。おかげで軽トラックはスピードを減ずることなく自動ドアに体当たりした。
 防犯対策で特殊強化ガラスで出来ているようだが、今時の潰れて衝撃を吸収するフレームを鼻で笑う重く頑強なフレームは潰れること無く特殊強化ガラスを砕いてくれた。代わりに気を抜いていたらむちうち下手すれば首の骨がずれる衝撃が襲い掛かってくる。
「ぐおっっっ」
 歯を食いしばり全身の筋肉に力を入れて衝撃に耐えつつもクラッチを一速に変えブレーキを踏み抜く。
 本来こういう役は俺じゃ無い。だが隣の助手席に座りGキャンセラーでもあるのか平然と座っているくせるでは足が届かないので運転が出来ないし(此奴ならそれでも出来そうな気がしてきたが)、瞑夜のように荷台にいたらそれこそ放り出されて今以上の衝撃に襲われる。消去法で俺しかいなかった。そもそも強襲隊にいなければいいのでは良かったのだが、それでは俺の存在意義が無くなる。それに自ら動かなければお宝は手に入らない。
 愚痴と思いと野望が走馬燈とでもいうように頭の中で駆け巡るが、軽トラックは何とか壁の手前で停止し激突するのは防げた。
 流石に壁に激突してはただでは済まなかった。今のところ体は無事、タイヤが焦げる臭いに顔を顰める程度で済んでいる。
「瞑夜っ」
 俺は後ろを確認すること無くシートベルトを外しながら叫べば、停止した軽トラックの荷台からは白煙が湧き出しエントランスを包み込みだす。
 確認するまでも無く無事だった瞑夜が荷台に積んだ装置を起動してくれたようだ。
「うわっ爆発するのか」
「侵入者の排除をっ」
「どうすればいいんだ」
 白煙がエントランスに蔓延し視界は塞がれ、所詮乃払膜に洗脳されただけの素人達は強襲に浮き足立ちおろおろするばかり。
 そんな中力強い声が響き渡る。
「狼狽えるな。
 侵入者には構うな、上層階の人達に任せておけば問題は無い。それよりも騒ぎを聞きつけ警察が介入してくるぞ。全員外に出て警察が介入するのを阻止しろ。
 それこそが主のお役に立てる」
「おっそうだな」
「警察はまずいな」
「上の人なら大丈夫だな」
 力強く指示を出す俺の声に次々と賛同する声が上げられ自警団員はぞろぞろと外に出ていく。
 ちょっと考えれば誰の声かなんて分かりそうなものだが、そもそも乃払膜の愛に自己判断能力が低下している連中は力強い指示に簡単に同調し従ってしまう。洗脳して部下を増やすのも考えものだな、数だけ増えてもこんな組織遠からず自壊する。
 取り敢えず彼等は忠実に命令を実行してくれる。本来なら烏合の衆で本気を出せば簡単に蹴散らせるが、彼等は洗脳された一般人なので警察も無碍に排除は出来ない。これで俺にとっても厄介な警察の介入から時間を稼いでくれる。
 俺は荷台に用意しておいたリュックを瞑夜から受け取りつつ背負う。
 鉄板入りブーツにポケット付きベストにガンベルト、それにリュックが合わさると重力が倍になったかのように体がズシリとする。
 朧川区の闇の店を周り揃えた装備一式、これで残金100万はほとんど無くなったが、俺みたいな凡人が此奴等化け物とやり合うには最低でもこれくらいの装備は必要だ。
 魔法やスキルはどうにもならなくても、筋肉は裏切らないか。脳筋になりそうだ。
「よし、俺達はエレベーターを使って20階まで一気行くぞ」
 俺は目の前に迫っていたエレベーターの前に行きボタンを押す。
 住人全てを配下しようとも、どうせ乃払膜がいるのは最上階で捕らえた人達は富裕層用の21~24階までにいるだろう。変化球を使って15階とかの途中にいる可能性は薄い、乃払膜みたいな奴は奇策を嫌い基本に忠実に上で構えているだろう。
 それに外れたら外れたでもいい、俺達の目的はあくまで陽動だ。
「一気に最上階まで行かないのか?」
「俺達の目的は乃払膜を倒すことじゃないだろ。
 それに」
「それに?」
「このエレベーターは20階までしか行かない」
 富裕層のいる階には隣にある直通の専用のエレベーターを使わないといけないが、ロックがかかっていてパスワードを入れないと使用出来ないようになっている。
 まずは20階まで、その後は非常用階段なりなんなりを使って上を目指すしか無い。
「なるほど」
「時間が惜しい行くぞ」
 俺達は扉が開かれたエレベータに乗り込むのであった。
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