俺嫌な奴になります。

コトナガレ ガク

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第323話 狂った少女と詐欺師

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「お前のやり方じゃ何にもならない」
 覚悟を決め俺は鎖府の目を見据えながら言い切った。
 これでもう日和れ無い、説得できるか殺し合いが始まるかのどっちかだ。
 相手は旋律士、人間だ。鉛玉を脳天に喰らわせられれば殺せる分、ユガミより勝ち目はある。
「あっそっ、あなたも法とか小賢しい事言うのね」
 鎖府の殺気が膨れ上がりさり気なく鎖府の体に飾りのようにぶら下がっていた鎖が解かれ下に垂れ下がっていく。
 この女も殺意満々だな。
「最後には社会的影響を鑑みてとか言って煙に巻こうとする。
 あなたは違うかもって思っていたのに、残念ね」
 鎖府の赤い瞳孔が肉食獣の目のように開かれる。
 まあ、鎖府の言うこともあながち的外れじゃ無い。会員名簿を手に入れた後、五津府に相談すると日和った考えも無いことは無かった。
 正直チラッと覗き見ただけで出てくる豪華メンバー、これだけの上級国民を敵に回して生き残るには最適に立ち回ってなお運と実力がいる。一歩ステップを間違えれば、あっさりと上級国民に雇われたA級スナイパーに脳天を撃ち抜かれてしまう。
「俺の方こそ期待外れだ」
「そう残念ね。私があなたの立場なんか考慮すると思ってた~」
 鎖府の顔は完全に俺を嘲っている。
「とことん頭の悪い女だ」
「はい、死んだ」
「自分さえ救えればいいのかっ」
 気付いたら俺の目前で鎖が停止していた。
 はっ正直何時手元の鎖を俺には成ったのかモーションすら見えなかった。勝負になるなんて思い上がりだったようだ。
 まあ、それでも負けないけどな。
「どういう意味かしら?」
 鎖府は俺の言葉に興味を持ってくれたようだが殺気は少しも薄まっていない。ここで言葉を間違えれば今度こそ脳天を鎖で砕かれる。
「仮にここの建物を潰して何になる?
 また建てればいいだけだ。
 仮にここに捕まっている人達を助けて何になる?
 また集められてくるだけだ」
 まあ多少の時間は稼げるだろうが、雑草と同じで根を抜かない限りまた生えてくるだけのこと、その程度の理屈この女にだって分からないわけが無い。正義の怒りに取り憑かれて思考が狂っているだけ。
 説得は不可能だ、勝負の分かれ目はどれだけ俺がこの女の思考を誘導出来るかに掛かっている。
「それが今ここで少女達を見捨てる理由?」
「ならお前が未来に苦しむ人を見捨てる理由は何だ?
 今この場で正義の怒りを爆発させれば、さぞ気持ちいいだろうなお前は。
 だが未来で苦しめられる少女達を見捨てるのかっ」
 俺は鎖府を断罪する。
「私を侮辱する気?
 私がここで一人として逃さない、皆殺しにすれば一日市ホテルは終わりでしょ」
 多少を理性を戻したか、俺の断罪に武力で無く言葉で返してきた。
「無理だな。お前がどれだけ強いか知らないが、一人では不可能だ。
 逃げおおせた者がどこかで一日市ホテルを再建する」
「これだけの組織がそんなかん・・・」
「無理だと思うか、可能だ。
 会員名簿、あれさえあれば再建する為の資金も人員も簡単に集まる」
「一度失敗した残党に誰が金を出すのよ」
「会員だよ。
 彼等はこのホテルを必要としている、喜んで金を出すさ。その際には報復としてお前には刺客が差し向けられだろうな」
「返り討ちにしてやるだけよ」
「どんなに強くても人間である以上一人じゃ無理だな」
 一回二回なら俺のように凌げるだろうが、食べない寝ない排泄をしない人間はいない。四六時中一人でカバーすることは不可能。
「ならどうしろっていうのよ。小難しいことを言って私を言いくるめよう何て考えても無駄よ」
 まずい逆ギレ間近、理屈で押すのもここまで一気に核心に行く。
「だから最初から言っている。
 会員名簿を手に入れるんだよ。それこそが一日市ホテルといってもいい」
「どうやって?
 まだ時間を掛けて調査なんかしていたら私頭が可笑しくなりそうよ。
 そうなったらもう何するか分からないわよ」
 鎖府の顔は先程まで殺意は消えて泣きそうな顔に変わっている。
 もう少し凝縮してやれば、暴発するな。
 仕方が無いか。万全で挑むのが上策だが、それに拘って機を逃すのは下策。
「今苦しむ少女を助け、未来に苦しみ少女も助ける」
「何を言っているの?」
「今日でケリを付ける」
 吐いた言葉は戻せない。
 柄じゃ無いが、博打に出る。

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