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傘
第324話 逆
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マスクを装着してお顔を隠し、堂々と正面から屋上の出入り口に歩み寄っていく。
ワン、ツー、スリー、ファイアー。
コンバットマグナムが火を噴き扉の前に備え付けられていた監視カメラが砕け散り、闘いのスタートが切られた。
ここからは1分1秒が生死を分ける。
直ぐさま扉のノブの部分を打ち抜き、ヤクザキックでドアを蹴り破りホテル内部へ突入した。
目指すは支配人室。
行く手を立ち塞がる者は薙ぎ払うのみ、政争や女のご機嫌取りに疲れた今の俺にピッタリのシンプル。
まずはドローンで偵察時に夜最後まで明かりが付いていた三階の部屋を目指す、違ったら従業員にでも教えて貰えばいい、米神に銃口を突きつければきっと喜んで教えてくれるだろう。
細かいことはどうとでもなる、大事なのは暴れること、憂さも晴らせれば明日から働く気力になる。
階段を駆け下り10階フロアに到着、この区画は従業員の作業用のようで客室がある区画とは防火扉で隔たれている。
豪華ホテルの裏側は薄暗く殺風景だが、作業用のエレベーターが階段の隣に設置されていた。
事前情報は無い、常に情報は更新され常に選択を迫られる。
ここで三択。
このまま階段を駆け下りていき3階を目指すか、攪乱を兼ねて一旦10階の顧客区画に出るか、強襲を狙ってエレベーターで3階を一気に目指すか。
エレベーターは論外、待ち伏せさせられたり外部から止められたら終わりだ。
このまま階段を使っていけるところまで行く。
いざとなったら顧客区画に逃げ込む選択肢を残せるのがいい。
決断したら即実行、俺は引き続き階段を駆け下りていく。
階段を何段抜かしで駆け下りていくのか、少しでも躓いたら階段で顔面を鑢掛けする嵌めになりそうだが恐怖で足を緩めるわけにはいかない。
速攻、スピードこそ俺の武器。
9F。
8F。
7階と順調にきたが、ここで下から駆け上がってくる足音が響いてきた。
ここまでか半分も距離が稼げなかったか、対応が早い。襲われたことなど無い鉄壁の防御に胡座を搔いて緩んでいてくれなかったようだ。
平穏の中部下の士気を保ち続けるのは難しい、ここのトップは中々出来る。
ここはこのまま6Fフロアまで降りて顧客区画に退避しようと加速を緩めだし6Fフロアに到着したところで、駆け上ってくる者の頭が階段から迫り上がってきた。
「!!?」
「遅い」
驚く暇があったら引き金を引く、流石のマグナムで命中と同時に追っ手を階段から突き落とし追っ手は転がり落ちていった。
「居たぞ!!!」
警備員の服を着た後続部隊が表れ俺を見て叫んだ。
「こんばんは」
挨拶と共に俺は手榴弾を警備員達に放り投げると急いで防火扉を開けて6F顧客区画に逃げ込んだ。
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ、フロア震えるを感じたが止まってられない、俺は6階フロアを走る。
作業区画と違いぴかぴかに磨かれ輝く壁に全力で走って何か足下がふわふわして夢の中を走っているような感じがする絨毯が敷かれている。
階段を駆け上がってきた敵は手榴弾で一掃できただろうか? 分からないが確認のために戻る気はない。このまま別の階段を見付けて3階を目指す。
こういったホテルの定番で対角くらいの位置に階段があるだろう。
走る走る、3階支配人室を目指して。
ゴールしたその先に何があるのか、それはゴールした者だけが知る。
「!」
ランナーズハイで走っている俺の行く手を塞ぐように客室のドアが開いた。
「一体何が?」
前のドアが開けられ、TVで見た記憶のある代議士が現れた。先程の爆発音に驚いて様子を見に出てきたのだろうが立ち塞がる者は何人だろうが排除するのみ。
代議士が俺を見て驚いた顔をして何かを言う前に俺の左のボディーブローが代議士の腹の脂肪にめり込んでいく。
「うごごっ」
白目を剥いた代議士が倒れてくるのを避けようとしたところで声が響いた。
「こっちだっ」
「ちっ」
俺が向かっている先から銃を抜いたボーイが3人ほど向かってくる。
先回りされていたか、ボーイだから元々このフロアにいたのか、どっちでもいい。俺は倒れてくる代議士を抱き抱え盾にしてボーイ達に対峙した。
「なっ」
「待てっ撃つな、代議士に当たる」
「悪党が躊躇うなよ」
逡巡したボーイ達に俺は容赦なく引き金を引く。
部下の教育が行き届いていたのが裏目に出たな。ただのチンピラだったら代議士諸共俺を撃っていただろうに。下手に客を殺した時の影響を考えるからこうなる。
凡人とはいえ訓練は積んでいる制止して制止した標的を撃つなら外しはしない。コンバットマグナムの弾丸3発は外れること無くボーイ3人に命中した。
「うご」
「うげええええ」
ボーイ達は流石の悪の組織で制服の下に防弾チョッキを着込んでいたようだが衝撃はどうにもならない。マグナムの破壊力を受け止めて床で陸揚げされた魚のようにのたうち回っている。
脳天に止めを刺したいところだが、弾丸に余裕は無い。俺はボーイ達が手放した銃を拾うと再び走り出した。
「どうなっているんだっ」
一流の調度品に囲まれた部屋の中、一人の男が受話器に怒鳴り込んでいる。
40代切れ者の風格がする彼は一日市ホテルの支配人である。
『もう少しお待ちを、侵入者の位置は把握しています。総動員しますので、今少しお待ちを』
「失態は許されないぞ」
『はっ』
男は部下を恫喝して受話器を置くと部屋に待機していた一人の男の方を向く。
「樹吊お前も行け」
「いいのか?」
樹吊は万が一に備え支配人の警備のためにこの部屋で待機していたようだ。
「これ以上の失態は許されない。下手をすれば私もあの御方に消される」
「なるほど自分の身を守っている場合じゃ無いという訳か。
いいでだろう、侵入者に心当たりもある。ここで汚名返上と行かせて貰おう」
樹吊の口角が嬉しそうに上がる。
「これはあの男の仕業だと思うのか?」
「タイミング的に他にいないだろ」
樹吊は確信しているようにあっさりと言う。
「手を出すべきでは無かったのか」
支配人の顔に苦渋の皺が刻み込まれる。
「今更だな。その議論は意味が無い。
逆にここで消してしまえば全ての問題が解決する」
「そうだな。頼んだぞ」
支配人は樹吊のことを信頼しているのが覗える。
「今度は逃がさない。あんたはそこで珈琲でも飲んで朗報を待っていればいい」
「分かった」
樹吊は音も無く支配人室を出て行った。
「ふう~、私も準備はしておくか」
支配人は一回深い溜息をするとデスクの引き出しを開ける。そこにはクロビカリする銃があった。
「残念、ここで会員名簿を出すかと思ったのに」
支配人がもう少し臆病で用心深かったらここで会員名簿を持って逃走をしていただろう。後で部下に何を言われようが生き残ってこそ明日が来る。
ただ予想外だったのは支配人もまた雇われ人で簡単に逃げるわけには行かない身分だったこと。
「誰だっつっ」
支配人は素早く引き出しに手を伸ばしたが銃を握る前に伸びてきた鎖が支配人をデスクから突き飛ばす。
「ぐはっごほ」
「ふふん、いい悪党面ね。ぞくぞくしちゃう」
窓側から現れたのは鎖府だった。彼女は屋上から鎖を使ってとっくの昔に支配人室のベランダに到達していたのだ。そして果無が暴れて支配人が一人になるチャンスをずっと伺っていた。
別に樹吊を倒せないわけでは無いが手こずっている間に万が一にも逃げられるわけには行かなかったのと、大口叩いて大見得切った雇い主を少々困らせてやろうという悪戯心もあった。
後は雇い主自ら囮になるという心意気に少しだけ惹かれてのもある。
男の心意気を邪魔しないのがいい女ってね。
「まずは」
鎖府は床でのたうち回っている支配人を置いておいてスタスタとドアに近寄ると鍵を閉める。
「あはっこれでここには私とあなたの二人きり、たっぷり楽しみましょう。
まずは私の旋律「新雪の黎明」を見せてあげるね。
滅多に見れないんだ感謝してよね」
鎖府はうっとりと笑って言うのであった。
ワン、ツー、スリー、ファイアー。
コンバットマグナムが火を噴き扉の前に備え付けられていた監視カメラが砕け散り、闘いのスタートが切られた。
ここからは1分1秒が生死を分ける。
直ぐさま扉のノブの部分を打ち抜き、ヤクザキックでドアを蹴り破りホテル内部へ突入した。
目指すは支配人室。
行く手を立ち塞がる者は薙ぎ払うのみ、政争や女のご機嫌取りに疲れた今の俺にピッタリのシンプル。
まずはドローンで偵察時に夜最後まで明かりが付いていた三階の部屋を目指す、違ったら従業員にでも教えて貰えばいい、米神に銃口を突きつければきっと喜んで教えてくれるだろう。
細かいことはどうとでもなる、大事なのは暴れること、憂さも晴らせれば明日から働く気力になる。
階段を駆け下り10階フロアに到着、この区画は従業員の作業用のようで客室がある区画とは防火扉で隔たれている。
豪華ホテルの裏側は薄暗く殺風景だが、作業用のエレベーターが階段の隣に設置されていた。
事前情報は無い、常に情報は更新され常に選択を迫られる。
ここで三択。
このまま階段を駆け下りていき3階を目指すか、攪乱を兼ねて一旦10階の顧客区画に出るか、強襲を狙ってエレベーターで3階を一気に目指すか。
エレベーターは論外、待ち伏せさせられたり外部から止められたら終わりだ。
このまま階段を使っていけるところまで行く。
いざとなったら顧客区画に逃げ込む選択肢を残せるのがいい。
決断したら即実行、俺は引き続き階段を駆け下りていく。
階段を何段抜かしで駆け下りていくのか、少しでも躓いたら階段で顔面を鑢掛けする嵌めになりそうだが恐怖で足を緩めるわけにはいかない。
速攻、スピードこそ俺の武器。
9F。
8F。
7階と順調にきたが、ここで下から駆け上がってくる足音が響いてきた。
ここまでか半分も距離が稼げなかったか、対応が早い。襲われたことなど無い鉄壁の防御に胡座を搔いて緩んでいてくれなかったようだ。
平穏の中部下の士気を保ち続けるのは難しい、ここのトップは中々出来る。
ここはこのまま6Fフロアまで降りて顧客区画に退避しようと加速を緩めだし6Fフロアに到着したところで、駆け上ってくる者の頭が階段から迫り上がってきた。
「!!?」
「遅い」
驚く暇があったら引き金を引く、流石のマグナムで命中と同時に追っ手を階段から突き落とし追っ手は転がり落ちていった。
「居たぞ!!!」
警備員の服を着た後続部隊が表れ俺を見て叫んだ。
「こんばんは」
挨拶と共に俺は手榴弾を警備員達に放り投げると急いで防火扉を開けて6F顧客区画に逃げ込んだ。
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ、フロア震えるを感じたが止まってられない、俺は6階フロアを走る。
作業区画と違いぴかぴかに磨かれ輝く壁に全力で走って何か足下がふわふわして夢の中を走っているような感じがする絨毯が敷かれている。
階段を駆け上がってきた敵は手榴弾で一掃できただろうか? 分からないが確認のために戻る気はない。このまま別の階段を見付けて3階を目指す。
こういったホテルの定番で対角くらいの位置に階段があるだろう。
走る走る、3階支配人室を目指して。
ゴールしたその先に何があるのか、それはゴールした者だけが知る。
「!」
ランナーズハイで走っている俺の行く手を塞ぐように客室のドアが開いた。
「一体何が?」
前のドアが開けられ、TVで見た記憶のある代議士が現れた。先程の爆発音に驚いて様子を見に出てきたのだろうが立ち塞がる者は何人だろうが排除するのみ。
代議士が俺を見て驚いた顔をして何かを言う前に俺の左のボディーブローが代議士の腹の脂肪にめり込んでいく。
「うごごっ」
白目を剥いた代議士が倒れてくるのを避けようとしたところで声が響いた。
「こっちだっ」
「ちっ」
俺が向かっている先から銃を抜いたボーイが3人ほど向かってくる。
先回りされていたか、ボーイだから元々このフロアにいたのか、どっちでもいい。俺は倒れてくる代議士を抱き抱え盾にしてボーイ達に対峙した。
「なっ」
「待てっ撃つな、代議士に当たる」
「悪党が躊躇うなよ」
逡巡したボーイ達に俺は容赦なく引き金を引く。
部下の教育が行き届いていたのが裏目に出たな。ただのチンピラだったら代議士諸共俺を撃っていただろうに。下手に客を殺した時の影響を考えるからこうなる。
凡人とはいえ訓練は積んでいる制止して制止した標的を撃つなら外しはしない。コンバットマグナムの弾丸3発は外れること無くボーイ3人に命中した。
「うご」
「うげええええ」
ボーイ達は流石の悪の組織で制服の下に防弾チョッキを着込んでいたようだが衝撃はどうにもならない。マグナムの破壊力を受け止めて床で陸揚げされた魚のようにのたうち回っている。
脳天に止めを刺したいところだが、弾丸に余裕は無い。俺はボーイ達が手放した銃を拾うと再び走り出した。
「どうなっているんだっ」
一流の調度品に囲まれた部屋の中、一人の男が受話器に怒鳴り込んでいる。
40代切れ者の風格がする彼は一日市ホテルの支配人である。
『もう少しお待ちを、侵入者の位置は把握しています。総動員しますので、今少しお待ちを』
「失態は許されないぞ」
『はっ』
男は部下を恫喝して受話器を置くと部屋に待機していた一人の男の方を向く。
「樹吊お前も行け」
「いいのか?」
樹吊は万が一に備え支配人の警備のためにこの部屋で待機していたようだ。
「これ以上の失態は許されない。下手をすれば私もあの御方に消される」
「なるほど自分の身を守っている場合じゃ無いという訳か。
いいでだろう、侵入者に心当たりもある。ここで汚名返上と行かせて貰おう」
樹吊の口角が嬉しそうに上がる。
「これはあの男の仕業だと思うのか?」
「タイミング的に他にいないだろ」
樹吊は確信しているようにあっさりと言う。
「手を出すべきでは無かったのか」
支配人の顔に苦渋の皺が刻み込まれる。
「今更だな。その議論は意味が無い。
逆にここで消してしまえば全ての問題が解決する」
「そうだな。頼んだぞ」
支配人は樹吊のことを信頼しているのが覗える。
「今度は逃がさない。あんたはそこで珈琲でも飲んで朗報を待っていればいい」
「分かった」
樹吊は音も無く支配人室を出て行った。
「ふう~、私も準備はしておくか」
支配人は一回深い溜息をするとデスクの引き出しを開ける。そこにはクロビカリする銃があった。
「残念、ここで会員名簿を出すかと思ったのに」
支配人がもう少し臆病で用心深かったらここで会員名簿を持って逃走をしていただろう。後で部下に何を言われようが生き残ってこそ明日が来る。
ただ予想外だったのは支配人もまた雇われ人で簡単に逃げるわけには行かない身分だったこと。
「誰だっつっ」
支配人は素早く引き出しに手を伸ばしたが銃を握る前に伸びてきた鎖が支配人をデスクから突き飛ばす。
「ぐはっごほ」
「ふふん、いい悪党面ね。ぞくぞくしちゃう」
窓側から現れたのは鎖府だった。彼女は屋上から鎖を使ってとっくの昔に支配人室のベランダに到達していたのだ。そして果無が暴れて支配人が一人になるチャンスをずっと伺っていた。
別に樹吊を倒せないわけでは無いが手こずっている間に万が一にも逃げられるわけには行かなかったのと、大口叩いて大見得切った雇い主を少々困らせてやろうという悪戯心もあった。
後は雇い主自ら囮になるという心意気に少しだけ惹かれてのもある。
男の心意気を邪魔しないのがいい女ってね。
「まずは」
鎖府は床でのたうち回っている支配人を置いておいてスタスタとドアに近寄ると鍵を閉める。
「あはっこれでここには私とあなたの二人きり、たっぷり楽しみましょう。
まずは私の旋律「新雪の黎明」を見せてあげるね。
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