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第三十五話 ヘイト
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30分もしないうちに鵡見さんはやってきた。
「直ぐにここを出るわよ。でもその前にベランダを見せて貰える」
「どうぞ」
鵡見さんは一人ベランダに出て行った。
そして窓越しに嗚咽が響いてくる。
「砂府で間違いないわ」
「そうですか」
鵡見さんの言葉に時雨さんも先程までと違い事実を呑み込んだ顔になった。きっとコンピューターのように情報として記録している、そうで無ければ戦えないから。戦いが終わって少女に戻った時に泣くのであろう。
「急いでここを出ましょう。準備はいい」
「はい。でもどこにいくのですか?」
「詳しい場所は決めていない、私の気分次第ね。暫くはホテル暮らしよ」
敢えて場所を決めないことで、敵の待ち伏せを防ぐ魂胆か。
「応援はどうなっているの? ブロンズの称号を持つ砂府さんが殺られたのよ。半端な応援じゃ返り討ちに遭うだけよ」
性格なのか防御より攻撃の方が気になる矢牛さんが鵡見さんに尋ねる。
「対応中よ。数を揃えるか質を揃えるか分からないけど明日には来る。だからそれまでは私が命に掛けても貴方達を守るわ」
決意の感情の籠もった鵡見さんの台詞に、時雨さんは心打たれたのか聖人にでも出会った顔をする。
「信用できないな」
「「「えっ」」」
予想外の俺の言葉に盛り上がっていた女3人が宇宙人でも見るような目を向けてくる。
「命を賭けて守るというなら、なぜあんたは生きている?」
気持ち悪い。気持ち悪い。互いに信頼し合い命を預ける? 砂府の死体を見ても起きなかった吐き気が湧いてくる。
映画の感動のシーンでも見ているようだが、リアルでやられているからか虫酸が走る。
「えっ」
「あんたが一番に守らなくては成らなかったのは砂府だろ。砂府がああなっちまった時にあんたは何をしていたんだ?」
そもそもこれが一番の疑問で、査問会でも開けばこれが追求される。まあ映画でのこういうシーンにおいて査問官は視聴者のヘイトを一身に集める舞台装置だがな。
「ちょうど別行動をしていて」
「つまり一番大事な時にあんたは『い』すらしなかったんだな。
そんな奴が・・・」
パチンッ、俺の頬が叩かれた。
加減の無い一撃に脳が揺れ視界がぐにゃりと歪むが、意地で頭を揺り戻し視線を向ければ嚇灼に染まる時雨さんの視線が突き刺さる。まるでユガミを見ているように俺を射竦めてくるが、俺も視線を反らさない。
「君は何でそんなことを言うの」
「事実だろうが」
「君には人の感情が無いの? 恋人だった砂府さんが死んで一番悲しんでいるのは鵡見さんなんだよ」
怒り一色だった時雨さんの瞳に涙がうっすらと浮かんでいる。それでも俺は引けない。
「知るかっ。そんな事情にいちいち構ってられるかっ。世の中結果が全てだ。そしてその結果から判断すれば、その女は君に本当に危険が迫った時にはいないぞ」
「君は最低だね」
「最低で結構だ。信用できない者は信用できない」
「なら一人ここに残る?」
「信用できない奴に君を託せない」
「なら勝手にすれば。その代わりその口は開かないでね。でないとボク、君のことを潰してしまいそうだよ」
もう時雨さんから怒りは消えていた。代わりに虫けらを見る侮蔑が籠もった冷たい瞳で俺を見下していた。
だがそれがどうした。俺は時雨さんに惹かれる。その事実だけは揺るがない。
そして嫌われたとしても、鵡見を心酔しようとする時雨さんの心に少しでも楔が打てたのなら意味はある。
「直ぐにここを出るわよ。でもその前にベランダを見せて貰える」
「どうぞ」
鵡見さんは一人ベランダに出て行った。
そして窓越しに嗚咽が響いてくる。
「砂府で間違いないわ」
「そうですか」
鵡見さんの言葉に時雨さんも先程までと違い事実を呑み込んだ顔になった。きっとコンピューターのように情報として記録している、そうで無ければ戦えないから。戦いが終わって少女に戻った時に泣くのであろう。
「急いでここを出ましょう。準備はいい」
「はい。でもどこにいくのですか?」
「詳しい場所は決めていない、私の気分次第ね。暫くはホテル暮らしよ」
敢えて場所を決めないことで、敵の待ち伏せを防ぐ魂胆か。
「応援はどうなっているの? ブロンズの称号を持つ砂府さんが殺られたのよ。半端な応援じゃ返り討ちに遭うだけよ」
性格なのか防御より攻撃の方が気になる矢牛さんが鵡見さんに尋ねる。
「対応中よ。数を揃えるか質を揃えるか分からないけど明日には来る。だからそれまでは私が命に掛けても貴方達を守るわ」
決意の感情の籠もった鵡見さんの台詞に、時雨さんは心打たれたのか聖人にでも出会った顔をする。
「信用できないな」
「「「えっ」」」
予想外の俺の言葉に盛り上がっていた女3人が宇宙人でも見るような目を向けてくる。
「命を賭けて守るというなら、なぜあんたは生きている?」
気持ち悪い。気持ち悪い。互いに信頼し合い命を預ける? 砂府の死体を見ても起きなかった吐き気が湧いてくる。
映画の感動のシーンでも見ているようだが、リアルでやられているからか虫酸が走る。
「えっ」
「あんたが一番に守らなくては成らなかったのは砂府だろ。砂府がああなっちまった時にあんたは何をしていたんだ?」
そもそもこれが一番の疑問で、査問会でも開けばこれが追求される。まあ映画でのこういうシーンにおいて査問官は視聴者のヘイトを一身に集める舞台装置だがな。
「ちょうど別行動をしていて」
「つまり一番大事な時にあんたは『い』すらしなかったんだな。
そんな奴が・・・」
パチンッ、俺の頬が叩かれた。
加減の無い一撃に脳が揺れ視界がぐにゃりと歪むが、意地で頭を揺り戻し視線を向ければ嚇灼に染まる時雨さんの視線が突き刺さる。まるでユガミを見ているように俺を射竦めてくるが、俺も視線を反らさない。
「君は何でそんなことを言うの」
「事実だろうが」
「君には人の感情が無いの? 恋人だった砂府さんが死んで一番悲しんでいるのは鵡見さんなんだよ」
怒り一色だった時雨さんの瞳に涙がうっすらと浮かんでいる。それでも俺は引けない。
「知るかっ。そんな事情にいちいち構ってられるかっ。世の中結果が全てだ。そしてその結果から判断すれば、その女は君に本当に危険が迫った時にはいないぞ」
「君は最低だね」
「最低で結構だ。信用できない者は信用できない」
「なら一人ここに残る?」
「信用できない奴に君を託せない」
「なら勝手にすれば。その代わりその口は開かないでね。でないとボク、君のことを潰してしまいそうだよ」
もう時雨さんから怒りは消えていた。代わりに虫けらを見る侮蔑が籠もった冷たい瞳で俺を見下していた。
だがそれがどうした。俺は時雨さんに惹かれる。その事実だけは揺るがない。
そして嫌われたとしても、鵡見を心酔しようとする時雨さんの心に少しでも楔が打てたのなら意味はある。
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