俺嫌な奴になります。

コトナガレ ガク

文字の大きさ
109 / 328
男三人ぶらり飲み

第百八話 その時あの人は?

しおりを挟む
 果無と卯場が意味の無い会談をしている頃、ビルとビルに挟まれた狭い路地裏で髪を掻き揚げ一人の女が卯場のビルを見上げていた。ドレスから青いライダースーツに着替えその体のラインがより月影に浮かびあがる弓流だった。こんな路地裏で晒すにはもったいない芸術的ラインだが、男がいれば卑猥な視線が穢す。孤高にて芸術は輝くということだろうか。
 ビルの裏手とはいえその筋のビル、普通なら裏手に女一人佇んでいれば見張りが直ぐさま飛んで来て、追い払われるどころかそのままビルの中に連れ込まれてしまう。だが今は弓流の捜索に大勢の者が街に出払い、残った少ない人員も果無が釘付けにしている。おかげでビルの裏にまで回せる人員が残っておらず、弓流は安心安全優雅に立っている。
「坊や達が頑張っている間に、私もお仕事果たさないとね」
 弓流は雌豹の如く舌舐めずりすると、ビルの裏手にある非常口、雨樋、配管、庇、窓のサッシなどありとあらゆる凹凸を見極め頭にルートを描いていく。
「それじゃ、お仕事お仕事」
 弓流が壁に手を突いたと思えば猫のように壁をするすると昇り始めた。ロッククライミング、それも一流と呼ばれる技術を身に付けている。
 僅かな窪み体重を預けられる強度があれば十分、彼女にしてみればごちゃごちゃしたビルの裏側など梯子を登っているようなもの。もしこの姿を動画にとって投稿サイトに投稿すればたちまちの内にPVが万は超えそうなほど、海外ならパルクールの一流チームがスカウトに来るだろう。
 それほどに滑らかで躍動感有る動きは美しく、なにより人の目を釘付けにする魅了がある。 
一度として流れが澱むこと無く僅か数分でビルの4階を越え、五階に設けられた空中庭園の柵まで辿り着いた。
「油断大敵と」
 鳥の如く柵の上に止まると懐から出したグラスを掛ける。すると弓流の目に庭園に張り巡らされた赤外線が映る。
「設置が甘いわね。この程度なら余裕ね」
 弓流はとんと空中庭園に降り立つと、助走で勢いを付けると一気に体操選手の如き動きで赤外線を躱してガラス戸の前まで辿り着く。
「ここで迂闊に開けるとアナクロな機械式開閉センサーに引っ掛かる。中年らしいねちっこさといやらしさね」
 今やセンサーが主流だが、これはガラス戸が開けられると共に押されていたピンがバネにより飛び出し、このピンが伸び切ることでアラームが鳴る仕組みになっている。何でこんな事を弓流が知っているかといえば、二人で楽しんだ一夜の情事の隙に調べておいたから。それも後でこういう事態になることを想定していたわけで無く、隙があれば自然と体が動くのが弓流という女なのである。
 弓流はガラス戸を少しづつあけ開けていき、ピンが伸びきるギリギリまで開けるとその隙間から接着剤を流し込む。
「わん、つう~、すり~、瞬間接着剤って便利ね」
ピンは固まり何の気兼ねなく弓流はガラス戸を開ける。
「おじゃましま~す」
 弓流は一歩入った部屋の中央にはキングサイズのベットが置かれる卯場の寝室のようである。
「感じる。確かにここに流れを止める何かを感じるわ。
 それさえ手に入れれば私に流れを止める手立ては無い、終わりよ卯場。だから、もう少し頑張って寝坊や」
 弓流は部屋の中央まで来ると目を瞑り流れを感じるべく神経を研ぎ澄まし出した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

GATEKEEPERS  四神奇譚

ホラー
時に牙を向く天災の存在でもあり、時には生物を助け生かし守る恵みの天候のような、そんな理を超えたモノが世界の中に、直ぐ触れられる程近くに確かに存在している。もしも、天候に意志があるとしたら、天災も恵みも意思の元に与えられるのだとしたら、この世界はどうなるのだろう。ある限られた人にはそれは運命として与えられ、時に残酷なまでに冷淡な仕打ちであり時に恩恵となり語り継がれる事となる。 ゲートキーパーって知ってる? 少女が問いかける言葉に耳を傾けると、その先には非日常への扉が音もなく口を開けて待っている。

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。 === エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中 【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

都市街下奇譚

ホラー
とある都市。 人の溢れる街の下で起こる不可思議で、時に忌まわしい時に幸いな出来事の数々。 多くの人間が無意識に避けて通る筈の出来事に、間違って足を踏み入れてしまった時、その人間はどうするのだろうか? 多くの人間が気がつかずに過ぎる出来事に、気がついた時人間はどうするのだろうか?それが、どうしても避けられない時何が起こったのか。 忌憚は忌み嫌い避けて通る事。 奇譚は奇妙な出来事を綴ると言う事。 そんな話がとある喫茶店のマスターの元に集まるという。客足がフッと途絶えた時に居合わせると、彼は思い出したように口を開く。それは忌憚を語る奇譚の始まりだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

感染

宇宙人
ホラー
福岡県北九州市の観光スポットである皿倉山に航空機が墜落した事件から全てが始まった。 生者を狙い動き回る死者、隔離され狭まった脱出ルート、絡みあう人間関係 そして、事件の裏にある悲しき真実とは…… ゾンビものです。

かなざくらの古屋敷

中岡いち
ホラー
『 99.9%幽霊なんか信じていない。だからこそ見える真実がある。 』 幼い頃から霊感体質だった萌江は、その力に人生を翻弄されて生きてきた。その結果として辿り着いた考えは、同じ霊感体質でパートナーの咲恵を驚かせる。 総てを心霊現象で片付けるのを嫌う萌江は、山の中の古い家に一人で暮らしながら、咲恵と共に裏の仕事として「心霊相談」を解決していく。 やがて心霊現象や呪いと思われていた現象の裏に潜む歴史の流れが、萌江の持つ水晶〝火の玉〟に導かれるように二人の過去に絡みつき、真実を紐解いていく。それは二人にしか出来ない解決の仕方だった。 しかしその歴史に触れることが正しい事なのか間違っている事なのかも分からないまま、しだいに二人も苦しんでいく。 やがて辿り着くのは、萌江の血筋に関係する歴史だった。

処理中です...