虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
1,650 / 3,140
DIY、守り攻める

怪ノ物騒動 その09

しおりを挟む


 ポーション配りは順調、すでに上から停戦の指示が出ている以上、大半の者は物ノ怪たちへの戦意を失っている。

 なのでどんどん回復させ、恩を売るという計画は順調だ。
 何人かの権力保持者に約束を取り付け、更なる利益を獲得していく。

 中には俺の存在を訝しむ者もいたが、そういった者たちも周りで癒えていく者の姿を見れば大人しく飲んでいった。

「──さて、これでとりあえず動けなくなった方々は治りましたかね……ふぅ、しばらくは状態は膠着するか」

 広域に飛ばした細菌だが、あくまでも結界周辺に居た者が主な被害者だ。
 そうじゃない者にも倒れた奴は居るが、それは物ノ怪たちに危害を加えた連中。

 仮に貿易成立に役立つ者でも、それがいずれ物ノ怪に害を成すのであれば不要。
 なので治すのは後回しにして、少しでも苦しみを味わってもらっておいた。

「コミのアイデアがそのまんま実現したら、より深い交渉関係を築けるだろうな……実際できると思うか?」

《可能性は低いように思われますが、それでも試して損は無いかと》

「……そうだな。まあでも、コミならやり遂げてくれると思うんだよ──物ノ怪、そして怪ノ物たちの新たな関係の構築」

 コミは願った、真の意味でこの里が傷ついた者たちを癒す場所になることを。
 それは物ノ怪だけでなく、袂を別った怪ノ物も含んでいる。

 現在行われている交渉で、その半分ぐらいは話しているだろう。
 そして、いずれは物ノ怪の本家にも……それがどうなるのか、俺には分からない。

「あの人ならばできる、そう信じさせてくれる。交渉には重要な要素だよな、コミはそれが天然もので備わっているし」

 だからこそこの里の者は、最終的に俺を受け入れてくれた。
 そして、それゆえにこうして里を怪ノ物たちから防衛できている。

「──千苦、どうなると思う?」

「どう、とは?」

「人族とも、以前に怪ノ物とも戦ったことがあるんだろう? だからこそ、コミの提案が本当に上手くいくかどうかだ」

「──上手くいくはずがない……そう、これまでは考えていた。だが、貴様や狐魅童子様の行いは、これまでの常識やちっぽけな考えなどすべて変えていった。ただそれを、俺は信じてみるだけだ」

 ニヤリと笑う千苦は、すでに締結されることが決まっているかのように語った。
 だが間違いなく、荒れるだろうな……ある意味、両陣営を敵に回すわけだしな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 物ノ怪、そして怪ノ物たちにとって、この日は忘れられない一日となった。
 これが狐魅童子──『超越者:■■』誕生の始まりとも呼べる日。

「──なんてことになればいいけど」

《それは……難しいかもしれませんね。現在の孤魅童子は『ブルームフラワー』の能力を発現させていますので》

「コミなら行けると思うんだけどな。まあ、絶対の法則だから発現中は無理だろう。それでも、方法はいくらでもあるんだしな」

 今はただの妄想でしか無いが、すべてを成し得た時必ずコミは変わる。
 それがより良い方向になるよう、俺も千苦も頑張っていかないとな。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜

ファンタジー
「フォース」——それは、あらゆる生命の魂に宿るエネルギー。 23世紀、日本は新たなエネルギー「フォース」を発見した。 石油の枯渇による世界戦争の中、日本が生み出したこの力は、やがて世界を変革する。 フォースの研究は、「能力開発」へと発展し、人々は意志と感情によって能力を発現するようになった。 主人公・神谷錬(かみやれん)。 東京で働く25歳のサラリーマンであり、趣味は走ることと美味いものを食べること。 幼少期からフォースに興味を持ち、独学で研究を重ねた結果、**「空間干渉」**という独自の能力を会得する。 空間干渉——それは、フォースの膨大なエネルギーを利用し、空間を操る力。 レンは、自在に空間を歪め、破壊することすら可能となった。 しかし、ある事件をきっかけに、世界の壁の向こう側へと放り出される。 彼が目を覚ましたのは、何もない**「虚無空間」**——そこから、レンの果てしない旅が始まる。 辿り着いた異世界には、神々すら支配する強大な力が渦巻いていた。 しかし、レンの拳は、世界の理すら破壊する力を持っていた——。 世界の壁の向こうにあるのは、希望か?それとも絶望か? 異世界を旅する放浪者が、神々と拳を交える物語が、今始まる——。

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

合成師

盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

処理中です...