2 / 3,140
プロローグ
しおりを挟むトントントン トントントン
ある昼下がり、軽快なリズムが何処からか聞こえてくる。
それは、ある男が起こしているものだ。
「ふぅ、これで完了かな?」
男が金槌を振るうことを止めると、目の前には小屋が出来上がる。
その出来に満足げな笑みを浮かべ、男は完成した小屋の調子を確かめていった。
そうしていると、一人の少女が男の前に現れる。
優しげな顔立ちで、栗色の髪色を馬の尾のように括っていた。
そんな少女は現在、唖然とした表情で、男に詰め寄っている。
「──お父さん、もうできたの!?」
「ふっふっふ。可愛い娘のお願いだからな。お父さん、張り切って作ったぞ」
「だけど……これは大きすぎない?」
「マイは【調教師】だからな。これからも増えていくペットのことを考えると……これぐらいの大きさの方が良いと思ってな」
少女の目の前にある小屋は、白馬山荘程の大きさを誇っていた(それは、小屋なのだろうかという質問は控えてほしい)。
彼らはれっきとした血の繋がった親子だ。
巨大な小屋の中に関して語り出す父親と、それを聞いて表情筋をヒクヒクとさせる娘。
そんな混沌に染まり出した場所に、もう一人──母であり妻である女性が現れる。
「あらあら、まったくアナタは……こんなにデカい物を作って、一体何処に置いておくつもりなの? もう倉庫は満タンになったって言ってたじゃないの」
「あ。…………ま、まぁまぁ、ちゃんと仕舞えるようにしてあるよ。見てくれよ──」
男はそう言って、小屋にある『危険!』と書かれたボタンを押す。
すると、小屋が振動を始め、段々と折り畳まっていくではないか。
「マイがどこにでもペットを連れて行けるように、こうやって仕舞えるようにしたんだ。お父さん、工夫したぞ」
「またこんな物を……前にもレジャー用だと言って、何でも入る時間が止まったクーラーボックスを作った時、生産ギルドの皆さんに怒られたのを忘れたの?」
「だって、ショウがいっぱい食べたいと言っていたから「何でも子供達のせいにしたらダメでしょ?」……はい、ごめんなさい」
男の作った(時空停止)クーラーボックスの試作品は、生産ギルドの長が直々にやって来て購入交渉をしていった。
──そのクーラーボックスの存在が世に知られれば、生産界に革命が起こってしまうからだ。
夫のしょんぼりとした表情に心を温めながらも、妻は注意を続ける。
「良いですか? アナタも少しは自重してください。こっちでのアナタは、ただのDIY好きではないんですよ」
「そうかな? 俺はいつも、作りたいと思った物しか作ってないぞ」
「そう言って作った物が、何でも切れる包丁だったり、盗難を必ず防止するキーホルダーだったりする人は……普通に収まりませんからね」
「あれらだって……ルリが切れない食材があるっていったから作った包丁と、子供達の為に作った物が盗まれないように用意した防犯アイテムだぞ」
そう言って作った包丁は石でも龍でも切れるような包丁に、キーホルダーは盗賊プレイヤーが敵視するような代物となっている。
「……ハァ。あまり無茶はしないでくださいよ。いくら死んでも死なない体だからと言っても、痛いものは痛いのでしょ? アナタにだけは、私の魔法も効かないのだから」
「了解、気を付けるよ」
「では、わたしはこれからマイと一緒に、クエストを見に行ってきます。途中でショウも捕まえて一緒にクエストを行います。──ですので、誰もいませんが、強盗には気を付けてくださいね」
「行ってきまーす!」
「ああ、気を付けていってらっしゃい……って、この場所に強盗って来るのか?」
男は二人を見送ると、再び金槌を握る。
「……たしか、ショウが戦闘力測定器が欲しいと言っていたな……よし、作るか!」
愛するもう一人の子供である息子のため、男は一つのスキルを行使する。
「――:DIY:、スタート!」
ここはEvery Holiday Online。
毎日が休日のように、ゆったりとした時間が楽しめるVRMMOだ。
22
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜
神
ファンタジー
「フォース」——それは、あらゆる生命の魂に宿るエネルギー。
23世紀、日本は新たなエネルギー「フォース」を発見した。
石油の枯渇による世界戦争の中、日本が生み出したこの力は、やがて世界を変革する。
フォースの研究は、「能力開発」へと発展し、人々は意志と感情によって能力を発現するようになった。
主人公・神谷錬(かみやれん)。
東京で働く25歳のサラリーマンであり、趣味は走ることと美味いものを食べること。
幼少期からフォースに興味を持ち、独学で研究を重ねた結果、**「空間干渉」**という独自の能力を会得する。
空間干渉——それは、フォースの膨大なエネルギーを利用し、空間を操る力。
レンは、自在に空間を歪め、破壊することすら可能となった。
しかし、ある事件をきっかけに、世界の壁の向こう側へと放り出される。
彼が目を覚ましたのは、何もない**「虚無空間」**——そこから、レンの果てしない旅が始まる。
辿り着いた異世界には、神々すら支配する強大な力が渦巻いていた。
しかし、レンの拳は、世界の理すら破壊する力を持っていた——。
世界の壁の向こうにあるのは、希望か?それとも絶望か?
異世界を旅する放浪者が、神々と拳を交える物語が、今始まる——。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
合成師
盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。
そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる