虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
185 / 3,140
DIY、忙しく動く

決意

しおりを挟む


 ヘノプスの瞳は黒く濁り、完全に事切れたことを示す。
 死亡レーダーにも反応しなくなったので、それは俺にも分かっていた。

 どっかりと地面に腰を下ろした古代人たちの間を通り、代表の元へ向かう。

「──それじゃあ、死体は貰いますね」

「ああ、それがお前との約束だ。これからお前がそれをどうしようと、俺たちはいっさい気にすることはない」

 ありがとうございます、と言ってから会話に戻る。

「まったく、代表もずいぶんと大胆なことをしましたね。これが貴方なりの覚悟、というヤツですか?」

「そうだ、タビビトにも迷惑をかけたな。俺はこれまでの代表たちの努力を継ぎたいがために、こうした愚行を行ったんだ」

「ですが──みんな納得していることですよね? そうですよね!」

 そう、守護獣を殺さずとも生き残る案は、すでに俺が提示してあったのだ。
 俺はその案を確実でないと告げると、代表が守護獣を討伐することを強く願った。

 そのときはどうして、と思ったが……守護獣戦を終えた今ならばなんとなく分かる。

 それでもだ、共に戦った精鋭部隊たちの行動も愚行と評するのは駄目だと思う。
 まあ、独り善がりだと困るし、念のため後ろを振り返っておく。

「そうだぜ、代表」「アンタの思い、さっきまでの戦いでしっかり見てたぞ」「そうよそうよ、みんなやりたくてやってたんだから、愚行なんて言わないでよ」「むしろ、俺たちであの守護獣を倒したことを誇りに思っていこうぜ!」

「おまえたち……」

 うん、よかった。
 ここで全員が後ろを向いて見て見ぬ振りをする、なんて展開だったら俺は傷心のあまり引き籠もるところだったぞ。



 さて、話を戻そう。
 死体はもう回収し、代表が何も存在しない湖の中心で魔核を掲げていた。
 何やらブツブツと唱え、こちらにも聞こえる大きな声で叫ぶ。

「我は全ての試練を超えし者。我は永遠の安息を拒み、焦燥の世に旅経つ者。大いなる罪の証を今この場に示し、庇護を断ちて楽園を抜けることを誓おう──“楽園追放”!」

 どこからか、軋む音が聞こえ始める。
 空が悲鳴を上げるように、高々しくそれは鳴り響いていく。

 代表が水辺から上がる頃には、その軋みも止んでいた。

「魔核を受け取った瞬間、この呪文が脳裏に浮かんだ。これで俺たちは、正式にこの場所から脱出することができるようになる」

「そうなんですか、私の方法では長期間できなかったので良かったです」

「ああ、世話になったな。一度砦に戻って支度をした後、再びこの地に戻ろう」

「…………代表、一つだけ確認しておいてもいいでしょうか?」

 ここで今さら、そして当たり前の疑問を代表に訊いてみることにした。

「なんだ?」

「代表は、この先どうするのですか? 当てのない外の世界で──それに、この先って水没してますから、脱出するの大変ですよ。たぶん、魔法も持ちませんし」

「…………タビビト、ならお前はどうやってここに来た」

 なんだろう、このタイミングで物凄い眼力で睨み付けてくるんだけど。
 俺、なんか不味いことって……あっ。

「だ、代表。もう一つだけ──」

「くだらない質問だったら、例えタビビトでも容赦はしないぞ」

「『死の灰』はいつ来ますか?」

「──明日、夜明けと共に山が噴火する」

 歯を食いしばって、そう教えてくれた。
 俺はその言葉を聞くと、代表に告げる。


「仕方ありません、私の策を実行することにしましょう。──箱庭を乗っ取り、この地を救うことにします」


 箱庭を、神様から奪い取ってみようか。 

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜

ファンタジー
「フォース」——それは、あらゆる生命の魂に宿るエネルギー。 23世紀、日本は新たなエネルギー「フォース」を発見した。 石油の枯渇による世界戦争の中、日本が生み出したこの力は、やがて世界を変革する。 フォースの研究は、「能力開発」へと発展し、人々は意志と感情によって能力を発現するようになった。 主人公・神谷錬(かみやれん)。 東京で働く25歳のサラリーマンであり、趣味は走ることと美味いものを食べること。 幼少期からフォースに興味を持ち、独学で研究を重ねた結果、**「空間干渉」**という独自の能力を会得する。 空間干渉——それは、フォースの膨大なエネルギーを利用し、空間を操る力。 レンは、自在に空間を歪め、破壊することすら可能となった。 しかし、ある事件をきっかけに、世界の壁の向こう側へと放り出される。 彼が目を覚ましたのは、何もない**「虚無空間」**——そこから、レンの果てしない旅が始まる。 辿り着いた異世界には、神々すら支配する強大な力が渦巻いていた。 しかし、レンの拳は、世界の理すら破壊する力を持っていた——。 世界の壁の向こうにあるのは、希望か?それとも絶望か? 異世界を旅する放浪者が、神々と拳を交える物語が、今始まる——。

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

合成師

盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

処理中です...