253 / 3,140
DIY、出合い出遭う
錬金王 その07
しおりを挟む「まあ待て、『生者』。紙を渡しただけで終わらせるほど、私も自惚れてはいない。それに資料はエリクサーの対価。救ってくれた礼がまだだ」
そう言って、立ち上がろうとした俺を止めようとする『錬金王』。
そんな言い方をされて去るのも、失礼っぽいので大人しく席に戻る。
「正式には『錬金王』の名はユリルが継ぎ、今の私に残ったのはその経験だけ。しかし、ユリルは生みだした人造人間だが私の娘……『生者』に渡す気はない」
「当然です。私もそのようなことを言うのであれば、すぐに去っていました」
こっちの世界で子供がどう扱われるものかは知らないが、少なくともお礼だからと相手へ子供を受け渡すのは貧しい農村か煌びやかな貴族たちだけだろう。
子供を渡されたとして、俺はどういった反応をすればいいんだろうか。
……うん、必要ないな。
「だから──私でどうだろうか?」
「…………は?」
思考が停止してしまったが、今回は仕方ないよな?
とりあえず事情を確認し、どうにか納得できる理由を聞き取れた。
「貴女の錬金に関するすべて、ですか」
「『生者』の指示ならば、作れる限りあらゆる物を錬成しよう。ポーションだろうとゴーレムだろうと、望まれれば望まれるがままに用意してみよう……どうだ?」
「……では、それでお願いしましょう」
要するに、頼まなければ特に何もしないということだろう。
俺が『錬金王』に訊きたかったことは訊き終えたし、資料を自由に読みに来る了承はすでに得ている。
本人が作ることを望むならともかく、人の嫌がることを無理矢理実行させるほど、俺はまだ腐っちゃいないさ。
「それでは今度こそ、お暇しましょうか。ユリルも貴女と話をしていたがってるでしょうし、私のことは気にせず、彼女の下へ行ってやってください」
「いやいや、それこそ娘に怒られてしまう。『恩人を見送りもしないで帰すなんて!』と叱られる姿が目に浮かぶ」
「あー、それでは仕方ありませんね。では、見送っていただいてから帰りましょう」
のだが、途中で俺たちを見つけたユリルも見送りにやってきた。
この屋敷はいくつか外に設置した転移術式の場所に繋げられる仕組み付きらしい。
目的の場所に対応した術式へ魔力を流すことで、扉がその場所へ繋がるのだとか。
「『生者』さん、また来てくださいね!」
「用がなくても構わないぞ、私たちはいつでも『生者』を歓迎しよう」
「そう言ってもらえるとありがたいです。ではお二方、お邪魔しました」
俺でも魔力が足りたので、術式は正しく作動して外の世界と繋がる。
俺はその扉に映る懐かしい景色へ向けて、足を動かして帰還した。
12
あなたにおすすめの小説
神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜
神
ファンタジー
「フォース」——それは、あらゆる生命の魂に宿るエネルギー。
23世紀、日本は新たなエネルギー「フォース」を発見した。
石油の枯渇による世界戦争の中、日本が生み出したこの力は、やがて世界を変革する。
フォースの研究は、「能力開発」へと発展し、人々は意志と感情によって能力を発現するようになった。
主人公・神谷錬(かみやれん)。
東京で働く25歳のサラリーマンであり、趣味は走ることと美味いものを食べること。
幼少期からフォースに興味を持ち、独学で研究を重ねた結果、**「空間干渉」**という独自の能力を会得する。
空間干渉——それは、フォースの膨大なエネルギーを利用し、空間を操る力。
レンは、自在に空間を歪め、破壊することすら可能となった。
しかし、ある事件をきっかけに、世界の壁の向こう側へと放り出される。
彼が目を覚ましたのは、何もない**「虚無空間」**——そこから、レンの果てしない旅が始まる。
辿り着いた異世界には、神々すら支配する強大な力が渦巻いていた。
しかし、レンの拳は、世界の理すら破壊する力を持っていた——。
世界の壁の向こうにあるのは、希望か?それとも絶望か?
異世界を旅する放浪者が、神々と拳を交える物語が、今始まる——。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
合成師
盾乃あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。
そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる