催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

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「……まあ、ゆっくりのんびりだな」

 招集が掛かったとはいえ、すぐに行くのはユウキが率いる勇者パーティーぐらいだ。
 普通は派遣された国で甘い汁を啜り、可能な限り粘る……はずなんだよな。

「けど、クラスメイトには精神操作が掛けられているからな。もしかしたら、国の命令を最優先に……なんて指示が入っているなら、みんなすぐに行っているかもしれない」

「──ぱむ、どうするの?」

「俺が使えないってことは、もうとっくにバレているだろうからゆっくりでいいさ。もともと召集日を遅めに設定しているみたいだから、俺を殺すために準備しているだろう」

「ぱむ、たいへん」

 寄生していた国を抜け、召喚した大国へ向かう旅をする俺。
 そんな俺に付いてくるのは、真っ白な髪色の少女──もちろん、関係者だ。

「『ラーム』、いい加減その適当な呼び方を変える気はないか?」

「ぱむはぱむ、かえたくない」

「……まあ、面倒だしやっぱいいや。けど、その分の働きはしてもらうからな」

「おまかせあれ、ぱむ」

 手をうねうねとする謎のポーズを取って、自信ありげな表情を浮かべるラーム。
 俺もそれを信用しているので、頷き再び会話を続ける……暇だからな。

「ぱむ、おなかすいた」

「さっきのお任せあれはどこにいった」

「……それはそれ、これはこれ」

「しょうがないな……じゃあ、ちょうどいい餌も来たし──それでも喰え」

 分かりやすく威圧を放つと、少し離れた場所でそれに応えるように魔力をほんの一瞬強めた気配を感じた。

 ここはすでに寄生していた国の外、あの大国の手が行き渡っている場所なのでやれることはやろうとしているのだろう。

「ぱむ、いただきます」

 掌を合わせ、ペコリとお辞儀をする。
 その後、ラームは──ドロリとその肉体を液体へ還し、凄まじい速度で先ほど捉えた気配の下へ向かう。

 十秒も経たない内に、気配が一つ消える。
 それからさらに数が減っていき、俺が気怠げに欠伸をすればすべてが終わっていた。

「ぱむ、ただいま」

「もう満足か?」

「まだたりない……けど、がまんする」

「そっか。じゃあ、もう少し見つけたら補給しておこう」

 ラームはスライム、それも俺が魔改造を施した特殊な個体だ。
 そのためか、『パパ』と『イム』が合体した『ぱむ』と呼ばれている。

 なぜそうなったのかは分からないが、別にどうでもいいので現状を維持していた。
 何はともあれ使えるには使えるので、扱き使っているのがいつものことだ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「ぱむ、おなかいっぱい……けど、えいようがたりない」

「相手は雑魚だったってことか……何か使える情報は無いのか?」

「じがいのまどうぐ、まずい──ぺぺっ」

「……お前に任せてよかったよ」

 一瞬で殺され、そのうえラームの体内へ取り込まれたため自害の魔道具とやらは機能しなかったのだろう。

 お蔭で安全にそれを確保できたうえ、解析する機会まで与えられた。
 指輪型のスマホというわけのわからないアイテム使えば……即座の転送もできる。

「ぱむ」

「ん、なんだ?」

 指輪に刻まれた術式が作動し、屋敷へ魔道具を転送し終えたそのとき、ラームがこちらへ近づいてくる。

「ていじれんらく。ぜんいんしゅうごう」

「うーん……早いな。俺の到着予定、あっちの希望でもまだ一週間ぐらいあるのに」

「もうすこし、しらべるって」

 ラームは情報担当でもあるので、クラスメイトが全員集まったことを教えてくれた。
 ……全員には一人足りないのだが、俺以外のメンバーはほぼ集まったようだ。

「そういえば、ヒ……ヒロアキ君は今どこに居るんだ?」

「だんじょんのなか、だいめいきゅう」

「わおっ、そりゃあ凄い。前の報告じゃハーレムヒロインパーティーになっているみたいだし、次にクラスメイトと接触したら、あのヒロインっぽいヤツは付いていくかもな」

 物語のテンプレとしては、そんな感じになるかもしれない。
 今じゃユウキ以上に強くなっているみたいだし、復讐は止められないだろう。

「バレないように気を付けろよ。可能な限り対策はしているけど、世の中に絶対なんてないからな」

「いっぱいおいて、みんなでがんばってる。だからだいじょうぶ」

「……理由になっていないが、まあラームが言うならそれでいい。最悪、見失ってもいいからちゃんと逃げてこい」

「つたえておく」

 スライムのリーダーっぽいラームは、世界中にバラ撒いた俺の使役下にあるスライムの情報すべてを常に処理している。

 まあ、言語能力が拙いのも、そちらに大半の処理能力が持っていかれているのが原因だと思う。

 ……と考えていると、再び『検索』範囲内に刺客が入ってきた。
 ラームが全部喰ってしまったから、もう来ないと思ったんだがな。

「ぱむ、またみつけた。こんどは?」

「──面倒だな。今度は一人ぐらい捕まえて使うか。お腹も膨れたんだから、少しぐらい残してもいいだろう?」

「たべてもたべてもおなかはへる」

「あとでちゃんと渡すから。嫌なら食べても記憶を把握できるようにしろ──ほら、それよりも捕まえてこい」

 そんなことを言えば、そのうちそれもできるようになるかもしれない。
 ラームのコンセプトは、何でもできる万能スライムだしな。

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