36 / 135
小さな諸国に行ってみよう
燃やし尽くそう
しおりを挟むすでに五十階層に来ている。
「あっはははっははははっ!」
あれ以降、再び爆裂野郎が燃えていた。
ラクダを燃やしたのが不味かったのか、今まで以上に魔石を消費して魔物爆発を行う。
すると、爆発の勢いでドロップアイテムは傷付き消滅。
この国の者たちは、何も得られずに魔石だけを消費させられていく。
いちおう迷宮の中には宝箱があって、それが利益にはなるみたいだが……ほとんど出てこないので、結局は赤字であった。
「……まさに金の無駄遣いだな」
目の前では、爆裂野郎が階層主を相手に爆発を起こし嗤う様子が見て取れる。
一度に大き目の魔石を三個ほど消費し、火柱のような勢いで炎を解き放つ。
しかし、中ボスではなくラスボスだ。
これまでで最大級の一撃を放とうとも、階層主には一瞬火傷のような跡が残るだけで、即座に再生されていた。
「しかしまあ、ファンタジーの集合体だな」
その魔物は、木でできたドラゴンと例えるべきだろうか。
青々と緑を茂らせた巨大な大木、それが何重にも絡まってできたような見た目だ。
兵士によると、名前は『エルダーウッドドラゴン』──老木龍と言うらしい。
その下位の魔物『ウッドドラゴン』は爆裂野郎でも燃やせていたのだが、その上の存在で階層主として君臨する老木龍には……どうやら苦戦するようだ。
「これの小さいのは燃やせたんだ。こっちを燃やせたら……さぞ綺麗なんだろうな……」
猟奇的な言葉を呟きながら、爆裂野郎は何度も何度も炎を生みだしている。
独り言だったので普通聞こえないのだが、老木龍の弱点を探すために感覚を強化していたので聞こえてしまった。
兵士たちはヘイト値を無駄に稼ぐ爆裂野郎の尻を拭うため、必死に戦っている。
爆裂野郎は最大火力の魔法を連発させているだけで、自分が狙われていることには無頓着だった。
自分の欲求を満たすことだけに専念し、他の雑事はすべて兵士任せ。
「──救われないし、報われないよなー」
「何をやっているんだいトショク君! 君も手伝いたまえ!」
「最初に自分一人でやると言ったのはそっちだろう。途中から兵士を盾に使って、今度は俺にも盾役をさせるのか?」
「何を言っているんだ! こういったときは助け合い。日本人なら当然だろう!」
……爆裂野郎、日本人としての倫理観あったんだな。
火を見てブツブツと口を歪めて嗤うような奴に、普通は無いと思うんだが。
「ハァ……。別に構わないけど、その代わりこの迷宮の核を貰っていくぞ」
「そんな物持っていけ! それより早く攻撃しろよ!」
「あいよ。あと、口調が雑になってるぞ」
素晴らしき爆裂野郎様から言質が取れた。
兵士の中で一番偉そうにしていた、俺に一度も話しかけてこなかった兵士がギョッとした顔をしている。
さて、これでまた恩が売れるな。
「それじゃあさっそく──『赤の矢』」
赤色の矢を複数弓に番え──放つ。
上空に向けて放った矢は、勢いを保ったまま老木龍に突き刺さり発火する。
しかし、それも一瞬のこと。
すぐに火種は掻き消され、いっさいダメージの無い状態に戻っていく。
老木龍は今まで爆裂野郎にだけ向けていた見下した視線を、俺にまで向けてくる。
チッ……、微妙に腹が立つな。
「強引に燃やすか貫通させるか……どっちの方がいいか?」
透明な矢を大量に取りだすと、合成スキルで束ねていく。
数十本の矢は一つに纏まり、中に籠められた魔力もまた増大する。
そこに籠められるだけの炎の力を付与し、弓を引き絞った。
「轟炎魔法を付与──燃え尽きろ」
先ほど同様アーチを描くように矢を射り、老木龍の弱点──逆鱗を狙う。
すでに位置は確認済み、必中スキルの効果で確実にその場所へ矢は到達した。
俺がコピーしたスキルの中に、(轟炎魔法)と(業火魔)が存在する。
どちらも爆裂野郎が所持するスキルで、爆裂野郎らしいスキルであった。
轟炎魔法は火属性の魔法の中でも高位に近い魔法であり、業火魔は炎属性のスキルすべての効果を向上させる。
正直名前的に要らないとも思ったが、ある物は取っておいた方が良いと考え、コピーしておいた。
どうせ『赤の矢』を使っていることで、火属性の魔法が使えることはバレている。
ならば、異世界人らしくチート級の一撃を使っても構わないだろう。
────ッ!!
強力で強烈で強熱な一撃は、強圧的に老木龍へ襲い掛かる。
極限まで濃縮された魔力と、スキルによって高められた炎が逆鱗に刺さった。
瞬間、轟々と炎が爆発的に老木龍の全身を焦がすように生まれ、老木龍に悲痛な叫びを強要するように広がっていく。
再生は確かにしている。
だが、それ以上に火の勢いが強かった。
たしかに老木龍の木でできた鱗は、焦げた痕も即座に戻っている。
しかし、すぐさま炎がその部分に干渉し、再び火を付けて燃やす。
拮抗しているわけではなく、炎が優っているのが現状だ。
再生しても焦げる速さが少しずつ上回っていき、悲鳴を上げる声だけが空間内に木霊していく。
「これが……トショク君の炎……き、綺麗、綺麗だ……」
気持ち悪いセリフを語る爆裂野郎がいたような気もするが、記憶から消しておいたので覚えていないな。
しばらくすると声も止み、巨大な炭の塊と魔石だけが残る。
その二つに近づき、俺の担当国に渡されていた魔道具──物が多く入れられる袋に入れて兵士たちの方を向く。
「では、迷宮の核を貰いますね」
ニコリと笑う俺を相手に、全兵士が縦に頷くことしかできなかった。
1
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる