催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

文字の大きさ
50 / 135
変わる前に変えてみよう

復讐を始める

しおりを挟む


「さて、今頃頑張ってるだろうか」

 すでにメィシィと別れ、この国の裏に隠された情報を集め始めていた。
 マチスと合流、そして行動させており、彼女がどうするかを監視させている。

「アイツ自身に憎悪は足りない、憎しみも欠けている……復讐はできない。けど、力を合わせればどうとでもなる」

 情報自体は、少し偉そうな奴や小物臭い男どもから集められた。
 クローン増産所とその技術、サンプルに関する情報まで盛り沢山である。

「一人はみんなのために、みんなは一人のために……だったけか? 素晴らしいことだ」

 陽動作戦は成功し、俺がやることはもう片付いたというわけだ。
 関係各所へのサービスもしておいたし、俺の行動を邪魔する奴はもういない。

「誰かに責任を押し付け、誰かの利益を貪る考え方。面倒事を嫌う俺にとって……嗚呼、実に最高な思想だ」

 お土産は掻っ攫って手に入れてあるので、もうここに来る必要はなくなった。
 あとはマチス……それに生き残っていればメィシィを連れて帰るだけだ。

 この国の悪事に気づいたユウキが動き、いつか正される色んな意味で正義に溢れた場所になる瞬間を、どこかで見ることになる。

「さて、アイツらはどこにいるのかな?」

 ふらふらと足を進める俺。
 その足元には赤色しか残っていなかった。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「ついてこい」

「はいっ!」

 イムと別れたメィシィは、一人の男性とともに動いていた。

 黒に近い茶色の髪色に合わせた格好をする男は、聖堂の中を忍ぶこともなく真っ直ぐに進んでいく。

「主の指示はお前……メィシィを守護だ。これから主に仕えるのならば、その実力をテストしろということだろう」

「や、やります!」

「ああ、お前の復讐対象は聖人のクローン研究を行っていた学者ども。主がお前のためにそのままの状態で置いておいたそうだ。場所は分かっているな?」

「はいっ!」

 イムに与えられた武器で身を包み、戦闘態勢を整えていたメィシィ。
 体の調子は起きてから絶好調で、万全の準備ができているとも言える。

「配下もいるが手は出さない。己が手で力を証明しろ」

 入ったその部屋には異常が集まっていた。
 禍々しい色をした薬品や腐臭のする生き物の部位、カプセルの中で蹲ったまま眠る少年少女たち。

 それを見届けるように、数人の男たちがその場には居た。

「おや? 招かれざるお客様のようだ。その見た目からして、聖人モデル『アリシア』の一体みたいだね。ここは立ち入り禁止だと刻み込んでいたんだが……エラーか?」

 中でも特別な勲章のような物をぶら提げた男が、メィシィを眺めてブツブツと呟く。

 人工聖人たちには生まれる前から呪印が刻まれており、聖堂に属する者の命令には絶対に従うようにしているはずだった。

 しかし事実この場に居るメィシィに疑念を抱きつつも、学者としての興味本位を掻き立たせ始める。

「私はメィシィ、偉大な御方によって力を与えられた者。貴方がたに復讐を遂げるため、地の底より蘇りし者」

「ふむ。その御方という者によって新たな名前を貰ったようだね。エラーもあるみたいだから命令は……『座れ』」

「効きません」

 魔力の籠もった命令。
 人工聖人ならば、この言葉を聞いてしまえば聖堂に属する者の言うことへ従う。

 これは絶対的な強制権によるもので、本人の意思に反して必ず命令が実行されるものであった。

 しかし、イムがリュフをメィシィに改造している際、さまざまな不必要な術式を見つけては取り除いていたため、機能を発揮せずに不発に終わる。

「──“聖迅剣”」

 聖人は体に聖気というエネルギーを宿し、人智を超えた力を扱うことができた。
 中でも聖迅と呼ばれる技術は、体や武器へ聖気を宿して戦いに用いるために使われる。

「おぉっ、まさか聖気が使えるとは! 地下に送り出した廃棄物はすべて聖気が使えぬ不良品だったというのに! 御方という人物、それを利用可能にしたというのですか!!」

「黙ってください。命令が効かないとはいえど、昔を思いだして腹が立ちます」

「ふむ。ならばこちらも、簡単に済ませることにしましょう──『こいつを殺せ』」

 その言葉にこの場に居た数人の者たちが、ふらふらと動きだす。

 メィシィ同様に白髪の少年少女たち。
 人工聖人の中でも、始めから聖気を扱える者たちである。

 命令に逆らえず、同朋を殺させることに対して必死に抗っているのか……握られた拳は出血をしていた。

『──“聖迅”』

 彼らもまた、聖気を操り自身の体や武器に纏わせていく。
 苦しもうと体は動き、傷つけたくない少女の元へ一歩一歩近づく。

「生きたいですか? 死にたいですか? 逝きながら死にたいですか? 死にながら逝きたいですか?」

「──『返事をするな』。君が与えられた力に関する質問なら、防いでおいた方が正しいからね。黙らせておいたよ」

「口が動かずとも意志は伝えられます、そのことを私は知っています。さぁ、想いことばを交わしましょう」

 瞬間、メィシィと操られた人工聖人たちが戦闘を始める。

 ぶつかり合う力は空気を振動させ、極限まで強度を高められた人工聖人を仕舞うカプセル以外が次々と壊れていく。

 学者たちはただ、貴重な研究データとしてそれを眺め続けた……遠くでそれを観る男にも気づかず。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...