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変わる前に変えてみよう
密偵少女を回収しよう
しおりを挟む「……まあ、面倒になったわけだ」
あの後、マチスにいくつか指示を告げて、すべてを終わらせることにした。
国はいずれユウキのようなスバラシイ勇者がどうにかするわけだし、クラスメイトである聖女……の誰かさんが人工聖女の計画に組み込まれることもないだろう。
「メィシィを使った実験もある程度の成功したみたいだ。クラスメイトに死人が出れば、もしかしたら回収できるかな。それでなくとも、有効利用はできそうだ」
人工聖人を集めるのも目的だったが、一番の目的はこれだったかもしれない。
──死んだ異世界人の回収。
いくら夢の中の人物が所有していたスキルがコピーできるとはいえ、すでに停滞してしまったヤツのスキルなどコピーできないさ。
「だからこそ、メィシィが取り込んでスキルと思考パターンを回収する。そしてそれを解析し、進化させて派生したスキルを手に入れれば……完璧だ」
やる気が無いから一瞬で考え、そのまま思考を停止したアイデアだが……我ながらいいアイデアだろ。
倫理も道徳も関係ないさ。
そもそもこの世界の奴らが地球のルールを守る必要がないのだから、面倒で仕方がないじゃないか。
「この世界の聖人があのリア充組のスキルを一部とはいえ持っていたのは驚きだ。あとはそれを師匠に習えば、問題ないんだけど……実は導士だったなんてオチを防がないとダメだからな」
物語において、勇者とはある意味仲間を導いているじゃないか。
導士とは別の能力で、他者を導けるのならば厄介だ。
負の面で導ける俺の方が他者を導ける可能性は高いが、そもそものカリスマ性で俺は大敗している。
「そりゃそうだ、ただの面倒臭がりにいったい何ができるって言うんだよ」
俺の本質が変わらない限り、そこは決して変わらない。
なので別ベクトルから──自分以外をどうにかして、楽をしていく必要がある。
「とりあえず使える人材を誰よりも早く用意して、縛りつけておく。導く必要はないが、それでも確保しておかないとな」
奴隷を購入し、俺のスキルとしていくつかコピーしておいた。
コピーできないスキルを持つ奴もいたが、そこはソイツを確保し続けるために努力していくしかない……俺以外の誰かが。
「──結論として、俺にやることはない。巻き込まれないようにふらふらしてればいいってことだな」
というか、何もしたくないから仕方ない。
あの国で、のんびりとしているのが一番だと思うんだよ。
「せっかくの屋敷と奴隷たち。金は従魔と別の奴隷が動いて稼いでいるし……完璧だ」
さて、宗教国の旅のクライマックスを飾ることにしよう。
◆ □ ◆ □ ◆
「さて、この国での密偵お疲れ様」
「嗚呼、偉大なる我が君。このような場所まで来ていただけるとは!」
「……気にするな。多少面倒だったが、どうせ動くのは俺じゃない。お前たちが動いてくれるからこそ、俺は楽をできるんだ」
忘れていると思うが、俺がこの国について知れたのは一人の少女の功績だ。
だからこそ彼女が被検体として殺される前に、俺は彼女を回収する必要があった。
まあ、マーキングを奴隷には施してあるので危険性を無視すればいつでも回収できたんだけどな。
洗脳はしていないんだが、檻から出して病気を治したら神扱いしてきたこの少女。
俺としてもなかなかにインパクトのある出来事だったので、なんとなく覚えている。
「うん、それじゃあ次の指令があるまで休んでくれてもいいが……普通に休暇を取るのと屋敷で休むのとどっちがいい?」
「よ、よろしいのですか!?」
「ああ、働きには報酬が必要だ。本当に何もしない俺の代わりともなれば……まあ、次の指令まではゆっくりできるぞ」
構わないさ、だって休むだけなんだから。
白国でのミッションを完遂させ、やることが無くなったのなら休暇を与える。
働いた者にはそれなりの報酬が、そうして従業員のやる気を煽っていかないとマジで逃げられそうだよ。
「で、でしたら! 休暇を頂きたいです!」
「そうか──それなら、数日後にまた指示が入ると思う。それまでは自由にしてくれて構わない。……ああ、先にこれを渡しておいた方がいいな」
錬金のスキルで加工したアイテム。
今回の旅で集めた人工聖人のデータ。
それを彼女用にいくつかカスタマイズした特注品、とでも言っておこうか。
「もともと信仰心も篤いようだし、たぶん使えるだろう。……って、どうした?」
「…………キュー」
「お、おい!」
渡したアイテムを凝視すると、なぜか目を回して気絶してしまう。
おいおい、なんでそうなるんだ?
「仕事疲れもあるんだろうな……彼女の願いは休暇だったけど、一々確認するのも面倒だし、屋敷で休んでもらうか」
倒れた少女を腕に抱え、空間魔法で即座の移動を行う。
マチスたちはもう指示した場所に向かっているので、速く移動しないといけなかったからな。
「──と、いうわけでこの娘を頼む。指令完遂者として、一つ要求を訊いてやってくれ」
「はい、畏まりました。それとご主人様、マチス様より報告書が上がっています」
「……速いな。纏めておいてくれ」
「畏まりました」
名札に『アテラ』と書かれたメイドにそう伝えて少女を渡し、風呂場に向かう。
「死体の山とか見たからな……もう、風呂でゆっくり休みたい」
面倒事のない居心地の無い環境。
今は、そこでただのんびりしていたいよ。
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