催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

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外国へ遊びに行こう

救いに行こう

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「王族が諸国を巡っているのは知ってんだろう? テメェもフレイアと一国巡ってんだ」

「ああ、たしかにそうだな」

「オレらの姉は聖人で、しかも美人だから人気もある。一番多くの国を巡って、この国を好くしようと駆け回ってんだ」

「へー、ずいぶんと立派な方なこって」

 あまりに有名だから、さすがに人工聖人プログラムに組み込めなかったのか?

 自慢話の一つに、一騎当千系のストーリーも混ざってたから刺客も撥ね退けたんだと思うが……ただ良い奴、って気もしないな。

「で、そんなお姉さまがピンチだと。誰でも救ってくれる【勇者】様にもお願いする時間がないと」

「そうなんだよ!」

「……ハァ。面倒な国だな、三の次は二が厄介になるって」

「んだとぉ!」

 いやいや、事実だから。
 妹さんの一言目『──チェンジで』だったのに、それをどう取り繕えと?

「まあいいや、面白いニュースぐらいにはなりそうだし……事情を言ってみろよ」

「にゅーす? って、そこはどうでもいい。ちゃんと話してやるから、しっかりと聴いとけよ!」

「あーはいはい」

 再び無駄な美辞麗句が混ざった説明が行われたので、話半分で暗示を施し脳内に字幕付きで認識できるようにしてみた。

 同時に魔法で遠くの物を操って、奴隷たちにいくつか指示をしておく。
 ……仕掛けって、大事だよな。



 数十分して、九割がた姉を褒め称えるだけでしかなかったストーリーが終わった。

「──要するに、条約締結をしたいなら迷宮踏破でもしてこいと言われた。けど、魔族の潜伏疑惑があると……そういうことか?」

「そうなんだよ! けど、クソ親父は何もする気がねぇし、オレ一人で行っても何もできねぇ……だからテメェなんだよ、異世界人」

「ああ、その自覚はあったんだな」

 ギロリと殺気付きの視線を向けられるが、涼しい顔と無表情スキルでスルーだ。

「……オレには姉のように優れた体も、妹みたいに凄い力もねぇ。けど、姉妹として助けたいって意志はある! どうにかして姉を救いてぇなら、妹としてやれることをやるのは当然のことだろう!」

 俺も妹に、こんなことを言われ続けていれば変わっていだろうか……あっ、ダメだ。
 そもそもそんな想像ができない、むしろ鳥肌が立ってきた。

「なら、一つだけ条件を出してやる。それを呑むってんなら、護衛ぐらいはしてやるよ」

「ほ、本当かよ!」

「ああ、とっても簡単だ……お前がそれをするって誓ってくれれば、それだけでいい」

「──なんでもする!」

 よし、これでオッケーだ!

「アテラ! 俺はこのバカシスコンを連れてその迷宮まで行ってくる、その間の面倒事は全部お前たちでやっておけ!」

「畏まりました」

 扉の向こう側から返事が聞こえたので、すぐに準備を始める。

「ば、バカシスコン……?」

「お前さんをそう評さなきゃ、いったいなんて呼べばいいんだよ。ほら、早く身支度をしてこい」

「……全部魔法袋に入れてきた。着替える場所だけくれれば、そこで準備する」

「ならこの部屋で着替えろ、俺は外で移動手段を取ってくる。お前がメイドに組み伏せられた場所に集合な」

 閉めたドアからギャーギャーと聞こえてくるが、それは無視しておく。
 シスコンがちょうどなんでもするって言ったんだし、有効的に利用しなければ。

 運が良ければ優秀なお姉さまにも恩が売れるし、まさに一石三鳥の展開だ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

『イム様、どこに行くっすカ?』

「ここから南に入った場所にある、海上都市『グストリー』だ。お前にはそこで魚をたんまり食わせてやるよ」

『マジッスか? 魚を食えるっすカ?』

「ったく、亜竜のクセにグルメに育ちやがって……なんで肉食生物が、野菜も魚も好んでやがるんだよ」

 二日連続でアシを呼び寄せ、南を進路に飛行させる。

 この会話は(魔物言語)という、魔物使い系の職業に就いた奴のスキルが無いと聞くことができないので、後ろのバカシスコンは首を傾げていた。

「まあそれも、今日中に着かないとやらねぇけどな。回復と付与、それに風の支援まで付けてやってんだから飛ばしていけよ」

『ラジャーッス!』

 物凄い勢いで飛んでいる今のアシは、並大抵のドラゴンでは追いつけない速度で飛行を行っている。

 何度か無茶なことをやらせていたら、自然と俺の支援付きの速度にも対応していた……だからこうしてタクシーとして使っていた。

「おい、バカシスコン」

「だ、誰がバカシスコンだ! オレのどこがバカなんだよ!」

「……シスコンの部分をいっさい否定しないところだよ」

「──ああ、否定する気はねぇ」

 そこだけはきっぱりと、なんだか漢感まで溢れ出るほどにカッコよく告げた。

「あの二人は、オレにとってかけがえのない存在なんだ。それを守れるためなら、テメェの言うことぐらい聞いてやるさ」

「……なあ、姉妹ってそんなものか?」

「ああん? どういうことだ」

「自分を犠牲にしてまで、姉妹ってのは守り合うものなのか? お前は二人と違ってロクな力もないってのに、誰かに頼ってまでそんな強い二人を守る意味があるのか?」

「……テメェこそ、バカじゃねぇか」

 第二王女は俺を軽く叩いてから、笑みを浮かべてこう言った。


「──理屈じゃねぇだろ、姉妹を守りてぇって気持ちはよ。何もできねぇ自分に後悔するぐらいなら、アッチが望んでなくても助けようとした方がいい。まあ、勝手に助かってたらそのときはそのときさ!」


 唖然とした……が、納得もいく。
 パシりパシられの兄妹とは違っている気もするが、似ている部分も見つかった。

「……もう少し加速する、しっかり捕まってろよ──シスコン王女」

「? おう!」

 アシの周りに複数の風と火を生みだし、ロケットエンジンの要領で推進力を得る。

『ギャー! イム様、これはまだ新感覚ッスよ! 対応できないッス!』

「慣れろ」

『でモ』

「──慣・れ・ろ」

 そう言うと渋々ではあるが、この速度に対応するために尽力し出す。
 ……さて、お姫様を救いに行きますか。

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