61 / 135
外国へ遊びに行こう
救いに行こう
しおりを挟む「王族が諸国を巡っているのは知ってんだろう? テメェもフレイアと一国巡ってんだ」
「ああ、たしかにそうだな」
「オレらの姉は聖人で、しかも美人だから人気もある。一番多くの国を巡って、この国を好くしようと駆け回ってんだ」
「へー、ずいぶんと立派な方なこって」
あまりに有名だから、さすがに人工聖人プログラムに組み込めなかったのか?
自慢話の一つに、一騎当千系のストーリーも混ざってたから刺客も撥ね退けたんだと思うが……ただ良い奴、って気もしないな。
「で、そんなお姉さまがピンチだと。誰でも救ってくれる【勇者】様にもお願いする時間がないと」
「そうなんだよ!」
「……ハァ。面倒な国だな、三の次は二が厄介になるって」
「んだとぉ!」
いやいや、事実だから。
妹さんの一言目『──チェンジで』だったのに、それをどう取り繕えと?
「まあいいや、面白いニュースぐらいにはなりそうだし……事情を言ってみろよ」
「にゅーす? って、そこはどうでもいい。ちゃんと話してやるから、しっかりと聴いとけよ!」
「あーはいはい」
再び無駄な美辞麗句が混ざった説明が行われたので、話半分で暗示を施し脳内に字幕付きで認識できるようにしてみた。
同時に魔法で遠くの物を操って、奴隷たちにいくつか指示をしておく。
……仕掛けって、大事だよな。
数十分して、九割がた姉を褒め称えるだけでしかなかったストーリーが終わった。
「──要するに、条約締結をしたいなら迷宮踏破でもしてこいと言われた。けど、魔族の潜伏疑惑があると……そういうことか?」
「そうなんだよ! けど、クソ親父は何もする気がねぇし、オレ一人で行っても何もできねぇ……だからテメェなんだよ、異世界人」
「ああ、その自覚はあったんだな」
ギロリと殺気付きの視線を向けられるが、涼しい顔と無表情スキルでスルーだ。
「……オレには姉のように優れた体も、妹みたいに凄い力もねぇ。けど、姉妹として助けたいって意志はある! どうにかして姉を救いてぇなら、妹としてやれることをやるのは当然のことだろう!」
俺も妹に、こんなことを言われ続けていれば変わっていだろうか……あっ、ダメだ。
そもそもそんな想像ができない、むしろ鳥肌が立ってきた。
「なら、一つだけ条件を出してやる。それを呑むってんなら、護衛ぐらいはしてやるよ」
「ほ、本当かよ!」
「ああ、とっても簡単だ……お前がそれをするって誓ってくれれば、それだけでいい」
「──なんでもする!」
よし、これでオッケーだ!
「アテラ! 俺はこのバカシスコンを連れてその迷宮まで行ってくる、その間の面倒事は全部お前たちでやっておけ!」
「畏まりました」
扉の向こう側から返事が聞こえたので、すぐに準備を始める。
「ば、バカシスコン……?」
「お前さんをそう評さなきゃ、いったいなんて呼べばいいんだよ。ほら、早く身支度をしてこい」
「……全部魔法袋に入れてきた。着替える場所だけくれれば、そこで準備する」
「ならこの部屋で着替えろ、俺は外で移動手段を取ってくる。お前がメイドに組み伏せられた場所に集合な」
閉めたドアからギャーギャーと聞こえてくるが、それは無視しておく。
シスコンがちょうどなんでもするって言ったんだし、有効的に利用しなければ。
運が良ければ優秀なお姉さまにも恩が売れるし、まさに一石三鳥の展開だ。
◆ □ ◆ □ ◆
『イム様、どこに行くっすカ?』
「ここから南に入った場所にある、海上都市『グストリー』だ。お前にはそこで魚をたんまり食わせてやるよ」
『マジッスか? 魚を食えるっすカ?』
「ったく、亜竜のクセにグルメに育ちやがって……なんで肉食生物が、野菜も魚も好んでやがるんだよ」
二日連続でアシを呼び寄せ、南を進路に飛行させる。
この会話は(魔物言語)という、魔物使い系の職業に就いた奴のスキルが無いと聞くことができないので、後ろのバカシスコンは首を傾げていた。
「まあそれも、今日中に着かないとやらねぇけどな。回復と付与、それに風の支援まで付けてやってんだから飛ばしていけよ」
『ラジャーッス!』
物凄い勢いで飛んでいる今のアシは、並大抵のドラゴンでは追いつけない速度で飛行を行っている。
何度か無茶なことをやらせていたら、自然と俺の支援付きの速度にも対応していた……だからこうしてタクシーとして使っていた。
「おい、バカシスコン」
「だ、誰がバカシスコンだ! オレのどこがバカなんだよ!」
「……シスコンの部分をいっさい否定しないところだよ」
「──ああ、否定する気はねぇ」
そこだけはきっぱりと、なんだか漢感まで溢れ出るほどにカッコよく告げた。
「あの二人は、オレにとってかけがえのない存在なんだ。それを守れるためなら、テメェの言うことぐらい聞いてやるさ」
「……なあ、姉妹ってそんなものか?」
「ああん? どういうことだ」
「自分を犠牲にしてまで、姉妹ってのは守り合うものなのか? お前は二人と違ってロクな力もないってのに、誰かに頼ってまでそんな強い二人を守る意味があるのか?」
「……テメェこそ、バカじゃねぇか」
第二王女は俺を軽く叩いてから、笑みを浮かべてこう言った。
「──理屈じゃねぇだろ、姉妹を守りてぇって気持ちはよ。何もできねぇ自分に後悔するぐらいなら、アッチが望んでなくても助けようとした方がいい。まあ、勝手に助かってたらそのときはそのときさ!」
唖然とした……が、納得もいく。
パシりパシられの兄妹とは違っている気もするが、似ている部分も見つかった。
「……もう少し加速する、しっかり捕まってろよ──シスコン王女」
「? おう!」
アシの周りに複数の風と火を生みだし、ロケットエンジンの要領で推進力を得る。
『ギャー! イム様、これはまだ新感覚ッスよ! 対応できないッス!』
「慣れろ」
『でモ』
「──慣・れ・ろ」
そう言うと渋々ではあるが、この速度に対応するために尽力し出す。
……さて、お姫様を救いに行きますか。
1
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる