催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

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小さな諸国に行ってみよう

監視の目を誤魔化そう

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 ああ、そういえば迷宮ダンジョンに関する説明をしていなかった気がするな。
 迷宮は、その規模によって小・中・大迷宮と分類されているんだ。

 小迷宮:階層が30階層以内のモノ
 中迷宮:階層が70階層以内のモノ
 大迷宮:それ以上の階層のモノ全部

 大きさが小さい迷宮はこの世界に沢山あるらしいが、大迷宮は世界に限られた数しか存在していない。

 召喚された国にあったのは……たしか、大迷宮だったな。
 おそらくだが、わざとその場所に国を築き上げたんだろう。

 迷宮は周囲の魔力や中で死んだ者を糧にして、日々成長を行っている。
 ある一定の条件を満たすと成長し、階層が少しずつ増えていく……それが『成長』だ。

 そんな迷宮には地上とは比べ物にならない程に凶悪な魔物がいるが、人々は迷宮に眠るレアなアイテムを求めて欲望のままに死地へと足を突っ込んでいる。

 金銀財宝や強力な魔剣、珍しい物だと古代に作られたステータスプレート的な物まで見つかったらしい。

 この世界では異世界人以外は言うだけでのステータスの表示はできないので、それは財宝などよりも貴重な価値を持つ物である。

 無事それも量産化が成功し、今ではギルドが管理して人々に配ることも可能な状態だ。

 そのステータスプレートって、量産型の場合は色々と注意が必要なのだが……今はどうでも良いよな。

 とにかく言いたいのは──迷宮に出会いを求めるのは間違っていないということだ。

  ◆   □  七階層  □   ◆

 この国の迷宮は、十階層で成長が止められた管理された迷宮らしい。

 細かいことは省くが、ステータスプレートと同じ時代に作られたとあるアイテムを使うと、迷宮の成長が止まる──つまり、階層が増えるようなことが無くなるのだ。

 定期的に魔物は間引かれ、生み出されるアイテムの数々を冒険者は手に入れて経済を回す……いやはや、ファンタジー世界らしい産業じゃないか。

 国は迷宮を置いておくことを許可するための金を、ギルドは貴重なアイテムを国に売って金を、冒険者は不必要なアイテムや貴重な品をギルドに売ることで金を入手する。

 ──まさに、迷宮スパイラルとも言える循環法だな。

「……まあ、俺には関係ないけど」

 体を岩で包んだ蜥蜴のような魔物を、魔力MPによって生み出した魔力の矢──非透明──で射抜く。

 ただの矢であろうと、魔力によって貫通性能が向上しているので、体のもっとも硬い部分に刺さっても体へ到達するだろう。

 ──俺が当てたの、脳みそだけど。

「……ふぅ。私の実力では、どうやら魔力を使用しないと倒せない魔物みたいですね」

「いえ、直接体に攻撃する近接の者ならともかく、遠距離専門のイム様はそれができるだけ充分なお力をお持ちですよ」

 ……俺の注意が散漫になっている(フリをした)隙を突いて、どんな魔物も一撃で倒しているヤツに言われても説得力に欠けた。

 あるときはナイフを投げ、あるときは石を投げ、またある時は高速で移動して直接──とにかく俺の安全を守るためか、彼女はこっそり無双をしている。

 召喚されたばかりの俺ならば分からなかったが、幸いクラスメイトの中には特殊な探知系統のスキルの持ち主がいた。

 それを使うことでどうにか捕捉できたよ。

 気づいたことに気づかれたら、それだけの能力があると報告されてしまうからな。
 気づかぬフリをして……というか、催眠で一時的に忘却して知らないことにしている。

「ありがとうございます。それじゃあ、どんどん先に進みましょうか」

「はい、護衛はお任せください。とは言っても、魔物はすべてイム様が倒してしまっていますけどね」

「あはは、申し訳ありません」

 それぞれが腹の中にいろいろと黒い物を溜めこみながらも、迷宮攻略は進んでいく。

  ◆   □  十階層  □   ◆

「アレが……この迷宮のボスですか?」

「『ビッグロックゴーレム』、胸の所で光っている核が弱点です。少し位置が高いので、本来なら苦戦する相手ですが……」

「私の弓なら、ということですね」

 あっ、この迷宮の魔物は基本的に石とか鉱物とかが多かった。
 だからボスも、ゴーレムといういかにもな魔物なんだな。

 離れていればだいたい倒せるし……なるほど、たしかに俺向けな迷宮ではある。

 弓を番えてそこに魔力を流していく。
 ゴーレムはパッシブとのことなので、ゆっくりと焦らずに魔力を矢が包むようなイメージを行い、矢の強化を図る。

「──では行きます、“強射パワーショット”!」

 弓術スキルの武技“強射”は魔力を消費することで、通常より高い威力を対象に与えるという技だ。

 武技独特の光をも纏った矢は、真っ直ぐにゴーレムの核へと命中し──ゴーレムはバラバラに崩れて消滅した。

 残ったのは、ゴーレムのドロップアイテムとなる鉱物だけだ。

「さすがイム様です。ロックゴーレムをまさか一撃でお倒しになるとは……」

「偶然ですよ。あっ、魔法陣が出てますね。早く戻りましょうか」

 階層主を倒したことで、フィールドの奥の方に地上へ帰還するための魔法陣が現れる。
 俺と彼女はそれに乗り、地上へと戻った。

 ──バレなかった……よね?

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