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小さな諸国に行ってみよう
面接をしよう
しおりを挟む──トショク邸、それが屋敷の名前だ。
ほぼすべての者が記憶から忘却していると思うが、『トショク』とは俺の名字だ。
昔調べたけど、俺の家系以外でこの苗字を持っている日本人はいなかったな。
ここだけは、なんだかラノベの主人公みたいだな、と思っていた時期がある。
……珍しい苗字としてテレビに挙げられることも無かったので、結局はすぐにその思いも消え失せたけどな。
トショク邸は俺の居る国の建物の中でも、ベスト10ぐらいに入る大きさだと説明されたが……そんなに広くても正直引くだけだ。
日本人は狭い場所を好むんだ。
一所懸命という言葉が生まれるぐらいだしな(適当)。
「──まあそんなわけでお前たちには、さっそく面接をしてもらう」
「め、面接……ですか?」
「そうだ。まあ、一部生きる意志も無いような奴もいるが、ソイツは後回しにして全員がこれを行う。自分のやりたいことをすでに見つけてあるというのなら、俺はそれを全面的にサポートするつもりだ」
……なんせ、自分が努力しなくても一流の技術者が手に入るんだからな。
最初の職場探しとか機材の用意ぐらいだったら、恩を売るという体でやってやるつもりである。
ああ、話しているのは奴隷の内の一人だ。
俺に関する情報の内、開示してあるモノは従魔から聞いているだろうし、面倒なことにはならないだろう。
「それじゃあ、えっと──金髪。君から始めようじゃないか」
「き、金髪って……。ワタシには、ちゃんとスルフと言う名前が」
「えっ、そうなの? なら──はい、これを付けておいてくれ」
そう言って渡したのは、今殴り書きで『スルフ』と書いた名札である。
……いや、本当に人物名なんて面白そうなヤツ以外は忘れるからさ。
今はあんまり価値を感じられない奴隷たちの名前を、すぐに記憶するのは難しいのだ。
だからこそ、今回名前を確認したらこうして名札を渡す予定である。
それに、名前を主張しているのは彼女がまだ奴隷歴が浅い証明でもある……思いだしたが、まだ売り物にされる前だったし。
金髪の奴隷はそれを見て嫌そうな表情を浮かべたが、自分の立場を鑑みて大人しくその名札を留めた……バッチリだ。
◆ □ 移動中 □ ◆
面接には、執務室っぽい場所を使う。
他の奴隷には従魔が飯を配っているだろうよ……俺の作った料理スキル実験用に調理した品の数々をな。
「それじゃあ、面接を始めるぞ」
「はっ、はい。お願いします」
金髪……じゃなかったスルフは少し緊張しているようだが、ここは地球の(圧迫)面接会場ではない。
催眠魔法で暗示を掛けてから、いくつかの質問を行うだけである。
まあ、必要なことだけであって、相手のトラウマを抉るような質問はしなかったがな。
「──はい、お仕舞いだ。最後に一つ、お前はこれから何をしてみたい?」
「……強く、強くなりたいです。もうこんな風に、未来をグチャグチャにされるのは嫌ですから」
「了解。なら、二つの職場を用意するから、その二つから自分の未来に合った方を選んでおいてくれ」
そう告げて置いて、面接を終了した。
スルフには次の奴隷を呼ぶように指示し、その間に従魔を通してその職場に関する支度やら何やらを済ませておく。
……いや、俺独りで準備するとは、一言も言って無いじゃないか。
◆ □ 面接中 □ ◆
「……これで、全員終わったか」
《お疲れ様です》
「ああ、疲れたも疲れた。今まででベスト5に入るぐらいの疲れっぷりだぞ。催眠も調整しながら掛けないと壊れるし、面倒だったぞまったく……」
全員の面接が終了して大きく伸びをしていると、マチスから労いの言葉が入る。
本当に大変だった。
最初の方の奴隷はだいたい簡単にできたんだけど、後回しにしていた奴隷の中には、精神が病んでたり崩壊していたり異形だったりとヤバいのが多かったからな。
それをすべて俺の望むように調整を行い、尚且つ調整で壊れないようにと、わりと細心の注意を払うんだぞ……実に面倒だった。
《主よ。それで結果の方は》
「普通に侍従として働きたいのが少しと、復讐をしたいのが少し。後は……だいたい、とにかく強くなりたい的なヤツだったな」
《……その者らはどちらに》
「さぁな。俺も考えてはいるが、正直見せただけだと片方に人員が集中する気がしているからな。強引に押し込むか、その危険性を知らしめ……ても諦めないか」
《主がいなければ、その者らの未来はより悲惨なものであったと思われます。ならば、その未来から逃れる力を得るため、平気で修羅の道を歩もうとするでしょう》
「バランスよく行ってもらって、スキルの派生を増やそうと考えてたんだが……普通安全な道を選ばないか?」
細かいことは説明しないが、俺が力を求めた者に用意していた道は二つ。
──主人公的スキル覚醒ルートと、モブ的成長ルートである。
俺としてはモブ的成長ルートでゆっくりとしてほしかったんだが……まあ、主人公的スキル覚醒ルートでも良いか。
「……やれやれ、どうしてみんな前に進もうとするのかね。矛盾した思考を植え付けようとすると、それはそれで導きから解き放たれる可能性が上がるんだよな」
「停める者を選ばれればよろしいのでは?」
「それしかないんだよな~」
面接内容を改めて纏めてから、今日はもう寝ることにする。
……頭脳労働が半端ない一日でした。
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