催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

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 えっ、会議の模様?
 たたただくっちゃべって終わりだぞ。

 マチスが働いたお蔭で、現在の俺は複数のダンジョンを移動できるようになっている。

 そこで見つけた人(?)材を従魔としてスカウトし続けて結果――会議が行えるほどの数の魔物が従魔として……いや、俺の駒として働いてくれるようになった。

「色物ばかりなのが、ちょっと問題な気もするけどな」

 元が魔物だし、それも仕方ないか。
 一部の魔物は人に化けて活動しているが、人に化けられるからと言って、人と同じ考え方を持つということではない。

 ……あまりに言うことを聞かないから、仕方なく頭の中に無理矢理命令を書き込んだ奴もいるぐらいだ。
 そのせいで、少しだけ壊れてしまったが。

「えっと、今日の依頼は……うわっ、遂にこういう系が来たのかよ」

 ギルドのとある一室で、俺はその依頼を見るハメになった。

 いちおうでも異世界からの召喚者である。
 この世界のヒャッハーな冒険者に傷を付けられでもしたら大変だ! といった事情からか、個室での仕事の請負となっているぞ。

 まあ、俺に怪しいスキルでもあると困るからなのか、部屋にテーブルとイスと依頼書が在るだけで、いつも誰もいないけどな。

「近隣の村で怪しい魔物の影を発見。討伐を求む。ただし、『要:宿泊』……最悪だー」

 面倒だよなぁ。
 魔物の恐怖に怯える村人達を守るために、魔物を倒しても倒さなくても一日はその場所にいなきゃダメらしいぞ。

 ……実に面倒だ。

 せっかく自分の周りの環境を整えているというのに、別の場所に移動したら意味が無くなってしまうではないか。

「いや、やるけどさ。使い勝手の良い魔物なら従魔にしたいし、運が良ければお目当てのアレに逢えるかも知れないしさ」

 能力値的にはまったく運の無い俺ではあるが、スキルとして(幸運)をコピーしてある。

 ……実はLUK値に補正が入る効果、なんてオチさえ無ければどうにかご都合展開になるんじゃないか?

 えっと、場所は……今から行くと、もう夕方ぐらいの所。
 はい、宿泊確定デース。

  ◆   □  移 動  □   ◆

 この村は村である、名前はもう忘れた。
 村人が『ようこそ、ここは■■■村だ』とか言っていた気もするが、どうでも良かったので忘れてしまったからな。

 テンプレ的な髭を生やした長老から魔物の出現したポイントを訊き、(鷹の目)スキルに魔力を籠めて捜索中だ。

 ……まったく、夕方頃には来れると思っていたのだが、実際に着いた頃には日が沈みかけていたよ。

 依頼を受けた冒険者用なのか、誰も住んでいない空き家も用意されていた──のだが、自由行動が取りたかったので丁重にお断りして、村の外れの方で一人野宿を行っている。

「……コピーしたスキルのお蔭で、野宿には全然困らないからな」

 安全な場所は空間魔法で造ることのできる結界で確保できるし、食べ物は全部を異空間収納に大量に仕舞ってある。

 視界は夜目スキルがあるから良好だし、本当に危険ならば本来【勇者】のみしか扱えない神聖武具術で戦闘すれば良い。

 ……嗚呼、実に便利だ。

「それに、いつも通り催眠魔法も仕事をしてくれているしな。あの監視員でもない限りは大丈夫だろう」

 実際こっそりと密偵は送られてきているのだが……催眠魔法の餌食となり、俺の都合の好いように記憶は改竄されているだろう。

 そうして自由を確保して、望むままに行動していく。
 ただでさえ面倒事を引き受けているんだから、それぐらい構わないだろう。



「──おっ、やっと見つかったな」

 気が付けばもう日は完全に沈み、上には日本とは大違いの星空が広がっている。

 星座の配置など地球とはまったく異なり、いろいろとツッコミどころ満載なのだが……今は置いておこう。

 ずっと(鷹の目)を使い続けて依頼の魔物を探していたのだが、ようやくそれらしい反応が見つかったのだ。

 ここいらで確認できる魔物とは一線を超えた魔力を持ち、さらになんだか黒い靄まで見て取れる。

 ……邪神の眷属的な奴か?
 加護ってシステムがある世界だし、黒い靄から浮かぶものなんてそれくらいしか分からないな。

「まあ、結局これは当たりなのか? ただの放逐なら外れだし、まだ分からないな……印だけ付けて、もう少し様子を見るか」

 異空間収納から弓と矢を取り出し、フッと肩の力を抜いて構える。

 ただ、一直線に飛ぶと魔物からずれた場所に位置しており、本来ならば矢が当たることは不可能だ。

「これでマーキングは良し──『黄の矢』」

 矢が仄かに黄色に発光し、夜の世界を僅かに照らしながら飛んでいく。
 真っ直ぐに飛ぶ筈であったその軌道を、途中でカーブを描くように曲がっていき──

 ────ッ!!

 狙っていた魔物へと命中する。
 強化された聴覚には、はっきりと悲鳴のようなものが聴いて取れるぞ。

「やっぱり和弓女子の(必中)はチートの域に達しているな。お蔭でバレる可能性も低い低い。楽ができるってもんだよ」

 これで魔物が矢の飛んで来た方向から場所の特定を計ろうとしても、その先に俺が居ることはない。

 ……実に安全な攻撃方法だろう?



 今日の活動はこれで終了。
 鷹の目スキルで確認した魔物に関して、いちおう夢で確認して視るか。

 ──『おやすみ』なさいだ。

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