見捨てられたのは私

梅雨の人

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目の前の出来上がったばかりの白無垢はとても見事なものです。 

それなのにお父様もお母さまもお兄様も複雑な顔をしておられます。 

この見事な白無垢を着て、もうすぐ私は亮真様と婚姻の儀を行うことになっております。 

生まれ育った藤堂の家を出ていくのだと思うと不安ばかりが胸をよぎります。 

近頃の私は後ろ向きで卑屈な気持ちばかりを持ち合わせてしまっておりました。 

そのような気持ちを持ち合わせておりますので当日衣装に負けてしまうのではないかと気が気ではありません。 
 

「あなたたちみたいに仲良くやっていけるのかしら、ねえ。」

チチチッ 


お兄様の知り合いの方に譲って頂いた小鳥を眺めながら話しかけるのが日課のようなものになってしまいました。 

狭い籠に入っている庭の小鳥たちはいつ見ても寄り添っております。 

狭い籠の中で、誰も入ってくることもない、お互いだけが唯一の世界に生きるということは幸せなことなのでしょうか。
亮真様と式をもうすぐ挙げるというのにそんなことを考えてしまいました。 
 

夫婦になった折にはーーー亮真様は私を妻と認めてくださいますでしょうか。 

そして私に笑いかけてくださるのでしょうか。 

幸せだと感じてくださるのでしょうか。 

とうとうあれから亮真様と言葉を交わすこともないまま結婚式を迎えます。 

 ◇◇◇◇


「小雪?本当にいいの?今ならまだ間に合うわよ?」 

「お母さま、いつも私のことを心配してくださってありがとうございます。私が亮真様と夫婦になりたいのです。それにこれからたくさん時間もありますし少しずつ歩み寄っていければと思っております。だから心配しないで、お母様。これまで育ててくださってありがとうございました。お母さまの娘で私はとても幸せです。」 

あれからというもの、家族全員から最後の最後まで結婚など嫌ならやめたらいいなどと言われて参りました。 

心の奥底では警報を発しておりますのに、それでも亮真様のもとに嫁ぎたいと恋願う私は愚かなのでしょうか。 

真っ白な白無垢に身を包んだ私は、本当に久しぶりに亮真様と再会しました。 

私を見て目を瞠った亮真様は何かをおっしゃろうとされたかと思うと口を噤んでおられます。そして滞りなく式が行われて行きました。その後、私は亮真様と並んで粛々と祝いの言葉を受け取っております。 

亮真様はずっと私のそばから離れず寄り添ってくれておりました。 

宴は夜遅くまで続きそうですが私と亮真様は一足先にお暇して、今日から私達が暮らすことになる屋敷へ向かいます。 

私と夫婦になるのを機に、実家である本家の大河内家を出て新たに亮真様が屋敷を立るとおっしゃったそうで、お父様もそれならばと共同で建ててくださりました。 

これから新たな生活が始まることに不安はございますが、改めて亮真様とこれから生活を共にするのだと思うと不安と緊張と期待で鼓動が高鳴ります。 

屋敷に就くと使用人が勢ぞろいして出迎えてくれました。この屋敷の女主人として挨拶をしてから亮真様に手を引かれて部屋に向かいます。 

「ここが夫婦の部屋で、その隣が君の部屋、反対側が私の部屋だ。」 

落ち着いた内装で私好みの内装に仕上がっておりほっといたしました。 

内装に関しては私の意見をふんだんに取り入れてくださっていたようで、屋敷全体が落ち着いた色彩で統一されております。 

その後ゆっくりとお湯につかり体を洗い流してから、遂に夫婦の間へ足を進めました。 
 
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