見捨てられたのは私

梅雨の人

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――妙子様、ご無沙汰しておりました。ねえ。妙子様。少し弱音を吐いても良いでしょうか?妙子さまのことですもの。そんな遠慮はなしよっておっしゃって下さることでしょう。
 

ねえ、妙子様。想いあうお二人を、死がこんなに早く別つだなんて神様は本当にいらっしゃるのでしょうか…。 

私事ですが…私は亮真様をお慕いしているのです。
幸せな夫婦になりたいのです。
亮真様が私と夫婦になって幸せだと感じてほしいのです。

でも、難しいですね。薄々感づいておりましたが、やっぱり私の一方通行みたいです。 

ふふふっ、おかしいですわね。亮真様と夫婦になれて嬉しいはずなのにいつも苦しいのです。

琴葉お義姉様に亮真様がやさしくして差し上げるのを見る度に心の中に冷たい風が吹き荒れるのです。完璧な私の片思いのようです。

だから思うのです。なぜ神様は妙子さまの代わりに私をそちらに連れていかれなかったのかと。ねえ妙子様。神様はおそらく私と間違えて妙子様を連れていかれたのではないでしょうか。

そうすれば妙子様ご夫婦はずっと一緒にいられたわけですし、亮真様だって私の存在にうんざりすることなく琴葉お義姉様に寄り添うことが出来たのではないでしょうか、

ねえ、妙子様。

亮真様の優しさに期待することも止められませんのに、亮真様のお心は違う方にあるようです。誰かをお慕いするのはこのように苦しくて悲しくて寂しいことだったのですね。 こんなことなら…亮真様をお慕いするのではなかったっ…


「ふっ。…」 
 

涙が止まりません。妙子様、私はどうしたらいいのでしょう… 
 

「よければ使ってくれ」 

急に男性の声が背後から聞こえてきました。
肩を震わせ振り返りますと、その男性の苦笑した声が返ってきました。 

「驚かせてしまったか、悪い、俺だよ。一宮東吾。以前君と、君の親友の夫君を助けた男だ。」 

「一宮様…。あっ、申し訳ございません。このようなみっともない姿を…。」 

「あーー、いや、そんなことはなぞ。君の泣き顔は美し…あー。とにかく気にしなくていい。君が落ちつくまで俺が邪魔なら向こうに行っているから。」 

「…いえ、その。大丈夫です。ハンカチを汚してしまいまして申し訳ございません。」 

「ああ、気にしなくていいさ。君が持っているといい。無理して涙を止める必要などないのだから。」 

「ありがとうございます、一宮様。…今はその優しさが身に染みます。妙子さまが一宮様に引き合わせてくれたのかもしれませんね。」 

「妙子様?もしかしてそちらの?」 

「ええ、私の大切な親友です。残念ながら数か月前に…今日もここでこうして私の話を聞いてもらっていたのです。」 

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