見捨てられたのは私

梅雨の人

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「小雪さん」 

「一宮様」 

「綺麗な空だな」 

「ええ…とても。一宮さま。改めて私を助け出してくださって本当にありがとうございました。」 

「いや、礼には及ばないよ。俺はそうしたくてしたんだ。君が俺に助けを求めてくれるかイチかバチかだったから内心ひやひやしてたんだが。

だから君が俺の手を取ってくれて嬉しかった。

…ああ、目に毒だな…まだ髪が濡れているじゃないか。しっかり拭かなければ。ほら動かないで。水気を拭うだけだけど俺が拭いても良いか?」 

迷いながらもわずかに頷いた私をに頷き返してくださった一宮様は大きな手でゆっくりと私の髪の毛を拭ってくださいました。 

その間、ゆっくり、ゆっくりと、とても幸せで心静かな時間だけが過ぎてゆきました。
一宮様を直視できなくてその間私はずっと下を向いておりました。

「さあ、小雪さん。しっかり拭いたからもういいだろう。それとこれ。風邪ひくだろ?好きなだけ着てていいからよければ使ってくれ。」 

ふわりと一宮様の上着を頭からスポンと被せられます。 


「大きい…」 

一宮様の上着はとても大きくて私が着ると膝上程まで丈があります。 

「………」 

「一宮様、…一宮様?」 

「あ?…ああ…ちょっと用事を思い出した。また後でな小雪さん。」 

首から上を真っ赤にさせてしまわれた一宮様が慌ててどこかへ行かれてしまいました。具合が悪くなっておられないと良いのですが。 

「…気の毒な奴だ…」 

「え?あら、お兄様。」 

「すっきりしたか小雪?ちょうどここで佇んでいるのを見て湯上りに風でも引いたらと思って上着を持ってきたんだが、あいつに先を越されてしまったよ。まったくなあ。まあいいか、小雪を連れ帰ってくれたんだし。今日は大目に見てやろう。さ、小雪。風邪をひいたら大変だ。部屋まで送ろう。」 

「ありがとうございます、お兄様。それと今夜の夕餉が楽しみですね。」 

「ああ、東吾じゃないけど本当に腹が減ったよ。」 

「ふふふっ」 


「じゃあ、夕餉が出来たら知らせるからそれまでゆっくり休んでおくんだぞ?」 

その後、部屋まで送って下さったお兄様は私を労わるような視線を向けて部屋を出ていかれました。 
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