見捨てられたのは私

梅雨の人

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「いつ来てもここの庭園は見事だなあ。」 

庭園についても私が添えた手をずっとふわりと握りしめて下さる一宮様とゆっくり庭園を歩きます。 


爽やかな風が花々や木々の香りを運んできております。 

「小雪さん、お願いがあるんだ。聞いてくれるか?」 

「お願いですか?ええ、それはもちろんでござます。これまでさんざん助けていたのですから。私でできることでしたら是非。」 



「俺と結婚してくれ。」 

「え…」

「小雪さん、俺と結婚してくれ。」

「私が一宮様と…ですか?」 

「ああ、君と夫婦になりたい。」 

「でも、私は出戻りですよ…しかもまだ半年しかたっておりませんが…」 

「いやな言い方になってしまって申し訳ないが、出戻ってくれて本当に良かった。」 

「それに一宮様なら私でなくとも他にたくさん…」 

「いるわけないだろ?俺はこう見えてとても一途なんだ。それにお願いっていっただろ?こんなにかわいい君がいつまたほかの男に掻っ攫われるんじゃないかと思うと夜な夜な眠れなくて困っているんだ。」 

「かわいいだなんて…」 

「君はかわいいよ。優しくて強くて思いやりがあって友人思いで健気で一途で…君のいいところなんて他にもいっぱいある。」 

「でも…」 

「お願いだ。君が俺の隣にいないと頭がそろそろおかしくなりそうなんだ。だから俺を助けると思って結婚してくれないか。」 

「一宮様を助ける…ですか?」 

「ああ、君がいないともう生きて行けない。」 

「それは…」 

「愛してる、愛してるよ小雪さん。結婚しよう。」 

 

頬を温かな何かが伝います。 

そっと一宮様が指で涙をぬぐってくださいます。 

「本当に私でよろしいのですか?」 

「君が良いんだよ、小雪さん」 

「私は案外嫉妬深くて、執着心もひどいもので…それに、これまで一宮様には情けないところをたくさんお見せしてしまって…」 

「ああ、俺は幸せ者だ。なかなか見れない君の一面を見てきた。それでもっと好きになった。だからお願い小雪さん。俺と夫婦になってくれ。」 

「…この気持ちを知られるのは怖くて怖くて、どうにかして一宮様にだけは知られないようにしておりましたのに…もうその必要もないということですか…?」

「君の気持ちを知って俺はもっと君を好きになる自信がある。」

「私がいないともう生きて行けないとおっしゃって下さいましたが、私も、もう一宮様がいないとどうやって生きて行っていいのかわからないのです。」

「…小雪さん…」

「私で…私で本当によろしいのですね?」

「君が良いんだよ。君しかいらないんだ。」

「一宮様…どうぞ不束な私でございますがこれからも…これからも…よろしくお願いいたします。」 

「ありがとう小雪さん…こちらこそよろしく頼むよ…」 

嬉し涙が止まらない私を一宮様はぎゅっと抱きしめてくださいました。 
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