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第2話
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「はる、そろそろ起きて」
「う、ん」
「ごはんのあとで眠くなるのは分かるけど、頑張って」
「…そう、めい?」
薄目を開けると、ぼんやりとした視界でもはっきりとわかる美形がこちらをのぞき込んでいる。
「授業始まるから、ほら」
「…うん」
奏明に促されて無理やり目を開ける。スマホを確認すると、13:57、つまり、4限目が始まろうというところだった。昼休み直後の3限目の記憶は全くないから、丸々寝こけていた、ということになる。
「…やば」
いくらなんでも授業ひとつをまるっと寝ているのはまずい。次の授業は起きなければと伸びをする。
「はる、ちょっとそのまま」
「何?」
伸びてくる奏明の手に目を閉じると、髪の毛が手ぐしで整えられる。
「髪の毛が跳ねてたよ」
そう言いながら、奏明はずいぶんと楽しげだ。
「さっき伸びしてたところとか、ねこさんに似てるね」
「なにそれ…っふ」
さっきからりすだの、ねこだのと、奏明は動物に例えることにはまっているらしい。
「奏明は…なんだろ」
「何が?」
「動物に例えたら、ってこと」
「就活の面接みたいな質問だね」
こちらの言葉を軽くいなしながら、奏明は授業を聞くモードに切り替わる。
姿勢がいつもまっすぐで、ましてや授業中に寝ているところなんて見たことがない。前にふたりで旅行に行った時だって、せっかくのお泊りだから夜更かしするぞと意気込んでいたら、早々に寝落ちをかましていた。翌朝も奏明に起こしてもらうという体たらくで、ちょっと情けない。
そういえば、奏明がリングを付け始めたのもその頃だったなと思い出す。はじめは単なるおしゃれかと思っていたけれど、同じリングを同じ指にしているのは、何か特別な意味でもあるんだろうか。
(右手の、薬指…)
結婚指輪も薬指だったよな、と思い出しながら、スマホで検索をかける。もし奏明が結婚したとしたらおめでたいことだけれど、知らされていないままなのは少し寂しい。
(結婚指輪は、左手の薬指…)
奏明がリングをつけているのは右手であることをもう一度確認する。どうやら結婚指輪ではないらしいことになぜか猛烈にほっとして、スマホを閉じる。
そんなこんなで、ぼんやりとしていたら、いつの間にか授業は終わっていた。途端に声があふれる中、リュックに荷物を詰めていると、声をかけられる。
「あ、石見じゃん。休み時間お前の気配が消えてたから、休んでんのかと思ったわ」
「いや、眠すぎたからしっかり寝てた」
「何だよ、うざ絡みしに行ってやろうと思ったのに」
「いや、すんなよ」
ばいばい、と手を振ってヤツを見送る。サークルの同期で、言葉は粗いけど、あれはあれで良い奴だ。
「…あ、奏明」
「うん?」
「あいつならさ、奏明は話せる?」
「…あいつ?」
「さっきの、サークルの同期なんだけど」
逡巡するような間をおいて、奏明が合点がいったように頷いた。
「昼休みにはるが言ってたこと?」
「うん。あいつなら、奏明の友達になれる?」
「どうだろう」
困ったように笑う奏明が、ぽつりと呟く。
「…友達とかさ、ひとりも要らないんだよね」
「う、ん」
「ごはんのあとで眠くなるのは分かるけど、頑張って」
「…そう、めい?」
薄目を開けると、ぼんやりとした視界でもはっきりとわかる美形がこちらをのぞき込んでいる。
「授業始まるから、ほら」
「…うん」
奏明に促されて無理やり目を開ける。スマホを確認すると、13:57、つまり、4限目が始まろうというところだった。昼休み直後の3限目の記憶は全くないから、丸々寝こけていた、ということになる。
「…やば」
いくらなんでも授業ひとつをまるっと寝ているのはまずい。次の授業は起きなければと伸びをする。
「はる、ちょっとそのまま」
「何?」
伸びてくる奏明の手に目を閉じると、髪の毛が手ぐしで整えられる。
「髪の毛が跳ねてたよ」
そう言いながら、奏明はずいぶんと楽しげだ。
「さっき伸びしてたところとか、ねこさんに似てるね」
「なにそれ…っふ」
さっきからりすだの、ねこだのと、奏明は動物に例えることにはまっているらしい。
「奏明は…なんだろ」
「何が?」
「動物に例えたら、ってこと」
「就活の面接みたいな質問だね」
こちらの言葉を軽くいなしながら、奏明は授業を聞くモードに切り替わる。
姿勢がいつもまっすぐで、ましてや授業中に寝ているところなんて見たことがない。前にふたりで旅行に行った時だって、せっかくのお泊りだから夜更かしするぞと意気込んでいたら、早々に寝落ちをかましていた。翌朝も奏明に起こしてもらうという体たらくで、ちょっと情けない。
そういえば、奏明がリングを付け始めたのもその頃だったなと思い出す。はじめは単なるおしゃれかと思っていたけれど、同じリングを同じ指にしているのは、何か特別な意味でもあるんだろうか。
(右手の、薬指…)
結婚指輪も薬指だったよな、と思い出しながら、スマホで検索をかける。もし奏明が結婚したとしたらおめでたいことだけれど、知らされていないままなのは少し寂しい。
(結婚指輪は、左手の薬指…)
奏明がリングをつけているのは右手であることをもう一度確認する。どうやら結婚指輪ではないらしいことになぜか猛烈にほっとして、スマホを閉じる。
そんなこんなで、ぼんやりとしていたら、いつの間にか授業は終わっていた。途端に声があふれる中、リュックに荷物を詰めていると、声をかけられる。
「あ、石見じゃん。休み時間お前の気配が消えてたから、休んでんのかと思ったわ」
「いや、眠すぎたからしっかり寝てた」
「何だよ、うざ絡みしに行ってやろうと思ったのに」
「いや、すんなよ」
ばいばい、と手を振ってヤツを見送る。サークルの同期で、言葉は粗いけど、あれはあれで良い奴だ。
「…あ、奏明」
「うん?」
「あいつならさ、奏明は話せる?」
「…あいつ?」
「さっきの、サークルの同期なんだけど」
逡巡するような間をおいて、奏明が合点がいったように頷いた。
「昼休みにはるが言ってたこと?」
「うん。あいつなら、奏明の友達になれる?」
「どうだろう」
困ったように笑う奏明が、ぽつりと呟く。
「…友達とかさ、ひとりも要らないんだよね」
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