仲良くなったと思った相手は、どうやら友達なんて作りたくないらしい

たけむら

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第3話

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ー「…友達とかさ、ひとりも要らないんだよね」

「え、待って…俺って奏明の友達じゃなかった、ってこと…?」

奏明に別れを告げた後。よくよく奏明の言葉を思い出してみると、何だかとんでもないことを言われたような気がする。

サークル同期のあいつと仲良くなれないという意味なのかと思って気軽にスルーしてしまったけれど、よく考えたら、俺さえも友達としてカウントされていないということじゃなかろうか。

「なんか、仲良くなれた気がしてたけど…もしかして俺、迷惑だった?」

でも思い返してみれば、俺が勝手に奏明に話しかけて、つきまとっていた感じもしなくもない。

ー「え、名字かっこいいね。壬生忠岑みぶのただみねってさ、祖先だったりするの?」

初めて奏明に話しかけた日、古今和歌集の編纂者と同じ名字を目にしてちょっとテンションが上がってしまった俺が、奏明にかけた言葉。

「いやいや、初対面の人に話しかける言葉のチョイスとして0点でしょ…」

突然そんなふうに話しかけられた奏明は、若干固まっていた。後にも先にも、あんな奏明は見たことがない。

「そりゃあ驚くよな…、オタク丸出しになっちゃってたし」

その後も、古今和歌集オタクの血が騒ぐまま、奏明に話しかけ続け、こちらは勝手に友達面をしていたわけだが、どうやら違ったらしい。

「無理…さすがにちょっと落ち込む…」
「おうおう、元気印がどうしたよ」

サークル部屋の机に突っ伏していたら、聞き慣れた声がしてくる。

津島つしまのせい」
「はあ?」
「津島のせいで、知りたくもない事実が明らかになった」
「なんだそれ」

心底めんどくさそうな調子だけれど、隣に座って話を聞こうとしてくれるあたり、津島は面倒見が良いのだ。確か、三人兄弟の一番上だとか何とか言っていた気がする。

「…そういえば、奏明の兄弟のことも…何も知らないや」
「壬生のこと?」

声を出すのも億劫で、机に突っ伏したままわずかに頷く。

「仲良しさんがどうしたんだよ」
「…俺だって、仲良しだと思ってたよ」
「違うのか? …あれで?」
「…ひとりも友達なんて要らないって、奏明が」

もう無理だ。奏明の言葉を思い出すだけで、ちょっと泣けてきそうになる。

「…俺が友達だって、勝手に思い込んでただけだった」
「それでお前はこんなにぺしょぺしょになってんのか」
「なるだろ…津島と友達になりたくないならともかく、俺も友達じゃなかったとか…」
「おい、今聞き捨てならんことを言ったな」

そういえば寝ていた授業の分を誰に教えてもらおうと考えて、性懲りもなく、奏明の顔が思い浮かんだ。

「駄目だ、奏明から自立しなきゃ」
「…おう?」
「津島、ノート見して」
「嫌だ」
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