69 / 644
2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
とある生徒の独白 1
しおりを挟む
「4月は希望そのものだった。
晴天は私たちを祝福して桜吹雪は制服姿の背中を押す。春風に包まれながら私はすずちゃんと将来の夢について語り合いながら登校する。
高校入学の目的は演劇部だった。
そこの演劇部は強豪校で実績も多いから、学校側も演劇部に力を入れているみたいだった。
私は女優になるのが夢だった。本当は演劇のスクールに通いたかったけど、家からは遠くて、お金もかかる。オーディションにも挑んでいるけれど、毎回書類審査で落ちてしまう。スクールにも通っていないし、そこまで美人でもないからだと思う。
それなりに勉強はしている。自分の演技を録画したり、舞台やテレビの女優さんたちを参考にしたりして、研究をしていた。
それらは独学でしかない。それでは限界がある。先に進みたいのに進めない。そんなもどかしさがあった。
だから高校で演劇をしっかり学ぼうと思った。
演劇部の見学を終えて、はずむ気持ちで入部届けを出した。
その次の日に美術チームに配属された。
希望も聞かず、一方的に言われた。
その時私は顧問に訴えた。“私は役者希望なんです、演劇をやりたいんです、変えてもらえませんか”
顧問の答えは、“お前には向いていない。そんなにやりたかったら見て学べばいい。努力次第では配属させてやる”
その後に目上に対する態度を指摘された。私が思っていたよりも上下関係は厳しかった。別に反抗するつもりで言ったわけではなかったのに周りの人にはわからずやに見えたらしい。
次からは気をつけようと心に留めて、美術チームに入った。
役者チームには入れなかったけれど、演劇に関われないわけではない。傍で見ているだけでも学べる事はあるはずだし、台本だって一時的であれば貸してくれると、私は前向きに考えた。
美術チームの中でもやっていけると。そういった私の甘い考えが愚かだと後々に思い知らされることになる。
美術チームは小道具や衣装までも作っていて、舞台のレイアウトやコンセプトなどチーム内で話し合いを繰り返し、演劇の背景を作っていく。
作る人の中には私みたいな演劇を希望していた人も多くいた。私の教育係を受け持った先輩もその1人だった。その人がなかなかに厳しい人だった。
“華やかな役者とは違って美術チームは裏方になる。だからといって手を抜いて作業しないで”それが先輩の口癖だった。毎日言っていた。
入部初日、顧問に抗議したこともあって特に私には厳しく指導した。
先輩からしてみて私はとろいらしい。初めての美術工作だったのも先輩にそれを言わせた理由になるかもしれない。作業効率の悪い私に先輩は何度も怒鳴った。
1日に何度も。怒られた。穏やかな顔は持っていないんじゃないかと思う位に顔を赤くさせて、甲高い声を鳴らした。
怒られるたびに私は萎縮して、怯えて震えた手の先が次のミスを起こす。ペンキ缶を床に落としたり、配色を間違えたり。そのたびに先輩が大声で怒るから出来損ないの私が浮き彫りになっていって、愚図な私が周りに認識されていく。
晴天は私たちを祝福して桜吹雪は制服姿の背中を押す。春風に包まれながら私はすずちゃんと将来の夢について語り合いながら登校する。
高校入学の目的は演劇部だった。
そこの演劇部は強豪校で実績も多いから、学校側も演劇部に力を入れているみたいだった。
私は女優になるのが夢だった。本当は演劇のスクールに通いたかったけど、家からは遠くて、お金もかかる。オーディションにも挑んでいるけれど、毎回書類審査で落ちてしまう。スクールにも通っていないし、そこまで美人でもないからだと思う。
それなりに勉強はしている。自分の演技を録画したり、舞台やテレビの女優さんたちを参考にしたりして、研究をしていた。
それらは独学でしかない。それでは限界がある。先に進みたいのに進めない。そんなもどかしさがあった。
だから高校で演劇をしっかり学ぼうと思った。
演劇部の見学を終えて、はずむ気持ちで入部届けを出した。
その次の日に美術チームに配属された。
希望も聞かず、一方的に言われた。
その時私は顧問に訴えた。“私は役者希望なんです、演劇をやりたいんです、変えてもらえませんか”
顧問の答えは、“お前には向いていない。そんなにやりたかったら見て学べばいい。努力次第では配属させてやる”
その後に目上に対する態度を指摘された。私が思っていたよりも上下関係は厳しかった。別に反抗するつもりで言ったわけではなかったのに周りの人にはわからずやに見えたらしい。
次からは気をつけようと心に留めて、美術チームに入った。
役者チームには入れなかったけれど、演劇に関われないわけではない。傍で見ているだけでも学べる事はあるはずだし、台本だって一時的であれば貸してくれると、私は前向きに考えた。
美術チームの中でもやっていけると。そういった私の甘い考えが愚かだと後々に思い知らされることになる。
美術チームは小道具や衣装までも作っていて、舞台のレイアウトやコンセプトなどチーム内で話し合いを繰り返し、演劇の背景を作っていく。
作る人の中には私みたいな演劇を希望していた人も多くいた。私の教育係を受け持った先輩もその1人だった。その人がなかなかに厳しい人だった。
“華やかな役者とは違って美術チームは裏方になる。だからといって手を抜いて作業しないで”それが先輩の口癖だった。毎日言っていた。
入部初日、顧問に抗議したこともあって特に私には厳しく指導した。
先輩からしてみて私はとろいらしい。初めての美術工作だったのも先輩にそれを言わせた理由になるかもしれない。作業効率の悪い私に先輩は何度も怒鳴った。
1日に何度も。怒られた。穏やかな顔は持っていないんじゃないかと思う位に顔を赤くさせて、甲高い声を鳴らした。
怒られるたびに私は萎縮して、怯えて震えた手の先が次のミスを起こす。ペンキ缶を床に落としたり、配色を間違えたり。そのたびに先輩が大声で怒るから出来損ないの私が浮き彫りになっていって、愚図な私が周りに認識されていく。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる