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2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
雨に潜む 1
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土曜午前の病院は診察待ちの来客と見舞客で人が多くなる。それでも誰もが静寂を守るから人の気配はあるのに人の賑わいがない。
そういった病院特有の空気は慣れないわね。こんなところを1日過ごすと逆に病気になってしまいそう。病院食はまずいし、退屈だわ。入院してもいいことないわね。
そんな死にそうなほど退屈な時間もやっとおさらばできる。
あたしは荷物を整理して大きな鞄に詰め込む。そうはいっても荷物は多くない。1泊分の着替えと歯ブラシ・貴重品、後は暇つぶしに購買で買った本。
「病院の手続きは済ませました。あと不備はないですか?」
そう言って個室に入ってきたのはさえりという女性だった。父の秘書をしている人。
「強いて言うならスイーツが食べたいわ。病院食はまずいもの」
「わかりました。お求めのものはコンビニですかそれとも専門店でしょうか?タクシーを呼んできますのでそれまでにご決断をお願いします」
「嫌味なくらいに親切なのね。毒でも盛られるのかしら?」
「適切な対応しているだけです」
「父に押し付けられたからって真面目にならなくてもいいのよ。あたしもあなたが目障りなんだから適切な対応はしなくてもクレームはないわよ」
鞄のファスナーを閉めて、病室から出ようとする。
「タクシーもいらないわ。バスで帰る」
「1人で帰られるのですか。ここ最近物騒になっています。怪事件もありますし、あなたの学校でも男子生徒が首を吊っていたと」
看護婦たちもそんな話をしていたわね。首を吊っていたけれど一命は取り止めて、今はこの病院で意識不明のままになっているって。確か名前は藤井 涼、だったわね。私が通う学校の2年生。
「お節介をするように父に言われたの?給料も上がらないからやめておいたほうがいいわよ」
「人として忠告しているんです。ましてや、瑠璃は階段から落ちて3日間、目が覚めなかった」
「あなたとしては悔しかったんじゃない?あたしが起きないほうが都合が良いものね」
「それは」
さえりの言葉が詰まる。図星みたいね。
「あたしの前で偽善者を装うのも疲れたんじゃない?いっそのこと背中から刺せばいい。犯罪を隠せるのは死体が多く出ている今だけよ」
さえりは何か言いたげな顔をしていたけれど、諦めたような深いため息を吐く。あたしはそんな彼女に背中を見せて病室を出た。
「喧嘩の内容理解していないが、君のお姉さんは放っておいていいのか?」
気持ち悪いほどに沈黙を守っていたカンダタがやっと喋った。
カンダタとハクにとって病院は初めての場所になる。不慣れな空間に置いていかれないように1人と1匹は私の背中について歩く。
「喧嘩じゃない。姉でもない。彼女は蒲谷 さえり。父の秘書をしていて、上司に子供を押し付けられた哀れな部下よ。彼女との会話はあれが普通なの」
さえりとは毎日顔を合わせるような仲ではない。今回のような保護者が必要になる手続きや保護者が同伴する際は彼女が代わりになっている。入学式の保護者同伴もさえりが来た。明らかに仕事の範疇を超えている。訴えられてもおかしくない。
そういった病院特有の空気は慣れないわね。こんなところを1日過ごすと逆に病気になってしまいそう。病院食はまずいし、退屈だわ。入院してもいいことないわね。
そんな死にそうなほど退屈な時間もやっとおさらばできる。
あたしは荷物を整理して大きな鞄に詰め込む。そうはいっても荷物は多くない。1泊分の着替えと歯ブラシ・貴重品、後は暇つぶしに購買で買った本。
「病院の手続きは済ませました。あと不備はないですか?」
そう言って個室に入ってきたのはさえりという女性だった。父の秘書をしている人。
「強いて言うならスイーツが食べたいわ。病院食はまずいもの」
「わかりました。お求めのものはコンビニですかそれとも専門店でしょうか?タクシーを呼んできますのでそれまでにご決断をお願いします」
「嫌味なくらいに親切なのね。毒でも盛られるのかしら?」
「適切な対応しているだけです」
「父に押し付けられたからって真面目にならなくてもいいのよ。あたしもあなたが目障りなんだから適切な対応はしなくてもクレームはないわよ」
鞄のファスナーを閉めて、病室から出ようとする。
「タクシーもいらないわ。バスで帰る」
「1人で帰られるのですか。ここ最近物騒になっています。怪事件もありますし、あなたの学校でも男子生徒が首を吊っていたと」
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「人として忠告しているんです。ましてや、瑠璃は階段から落ちて3日間、目が覚めなかった」
「あなたとしては悔しかったんじゃない?あたしが起きないほうが都合が良いものね」
「それは」
さえりの言葉が詰まる。図星みたいね。
「あたしの前で偽善者を装うのも疲れたんじゃない?いっそのこと背中から刺せばいい。犯罪を隠せるのは死体が多く出ている今だけよ」
さえりは何か言いたげな顔をしていたけれど、諦めたような深いため息を吐く。あたしはそんな彼女に背中を見せて病室を出た。
「喧嘩の内容理解していないが、君のお姉さんは放っておいていいのか?」
気持ち悪いほどに沈黙を守っていたカンダタがやっと喋った。
カンダタとハクにとって病院は初めての場所になる。不慣れな空間に置いていかれないように1人と1匹は私の背中について歩く。
「喧嘩じゃない。姉でもない。彼女は蒲谷 さえり。父の秘書をしていて、上司に子供を押し付けられた哀れな部下よ。彼女との会話はあれが普通なの」
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