101 / 644
2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
雨に潜む 11
しおりを挟む
「辻褄が合わないのならハザマ側の仕業じゃないんだろう」
「カンダタはどう考えてるのよ。名推理でもしてくれるの?」
「俺は時代遅れの人間だ。わかるはずもない。瑠璃は他にあるんじゃないか?」
確かに、ハザマとは別の人物を私は想像している。蝶男だ。
あの男が単独であたしを狙っている。
それにしても、 あたしはカンダタに蝶男のことを話していない。なのに、核心をついたような問い。変なところで勘がいいのよね。
「この怪異が瑠璃を狙っているなら学び舎に通っている場合じゃないだろ」
「それは嫌よ。ニート・ヒキコモリは人権を放棄した人種なのよ。そんなものになりたくないわ。それだったら外出しているほうがマシ」
「実際、死人が出ているわけだろ」
「何しようがあたしには関係ないわよ」
彼らは運がなかったとしか言いようがない。
カンダタはまだ何か言いたそうだった。でも、言葉は思い浮かばず、窓を叩く雨粒が強くなって土砂降りを知らせる。
連日続く雨は強くなったり弱くなったりを繰り返す。天気予報では今週末まで暗鬱な空が続くらしい。本当、最悪。
「それずっと言っているが 口癖か?」
そう言われてやっと気付く。
最悪という言葉を無意識に口に出していたらしい。積もりに積もった鬱憤が口癖になってしまっていた。
「いつも言っているわけじゃないわよ。嫌なことが起きる時は決まって雨が降るから雨の時は言ってしまうのよ」
この暗雲も嫌なもの運んできたみたい。
そう考えるとどんよりとした重い雲が心の中で広がった。それと同時に雨に惹かれている一面もあった。なぜなら、あたしにとって雨は死を連想するから。
死は現実に寄せた幻だとあたしは思う。
放送室で首を吊った2年生。もし死んでいたとするなら、彼が座った席、通った通学路、使った文房具。彼がそこにいてそれを使ったと証明できるのは他人の記憶と記録になる。
それは現在の証明にはならない。現在に自分がそこにいると証明できるのは自分自身しかできないから。死というのは自分の証明を失う。他人の記憶が明確であったとしてもそこに自分がいないのなら幻と同じ。
人は幻に触れられない。生きたままその領域には行けない。死は魔法であり、ファンタジーなんだ。
その幻想をほんの少しだけ触れたのが首を吊った男子生徒。その時の風景を想像してみる。
ぶら下がる身体、停止を体験する血脈と心臓。彼の背後では静寂を囁く雨の音。
雨は嫌い。けれど、雨と死体は親和された関係を築いているようだった。2つの共通点は静寂と恐怖。その共通点が雨と死体を着飾って怪しいくも美麗な放送室へと変貌させる。
あたしはその美しさに惹かれていた。
「カンダタはどう考えてるのよ。名推理でもしてくれるの?」
「俺は時代遅れの人間だ。わかるはずもない。瑠璃は他にあるんじゃないか?」
確かに、ハザマとは別の人物を私は想像している。蝶男だ。
あの男が単独であたしを狙っている。
それにしても、 あたしはカンダタに蝶男のことを話していない。なのに、核心をついたような問い。変なところで勘がいいのよね。
「この怪異が瑠璃を狙っているなら学び舎に通っている場合じゃないだろ」
「それは嫌よ。ニート・ヒキコモリは人権を放棄した人種なのよ。そんなものになりたくないわ。それだったら外出しているほうがマシ」
「実際、死人が出ているわけだろ」
「何しようがあたしには関係ないわよ」
彼らは運がなかったとしか言いようがない。
カンダタはまだ何か言いたそうだった。でも、言葉は思い浮かばず、窓を叩く雨粒が強くなって土砂降りを知らせる。
連日続く雨は強くなったり弱くなったりを繰り返す。天気予報では今週末まで暗鬱な空が続くらしい。本当、最悪。
「それずっと言っているが 口癖か?」
そう言われてやっと気付く。
最悪という言葉を無意識に口に出していたらしい。積もりに積もった鬱憤が口癖になってしまっていた。
「いつも言っているわけじゃないわよ。嫌なことが起きる時は決まって雨が降るから雨の時は言ってしまうのよ」
この暗雲も嫌なもの運んできたみたい。
そう考えるとどんよりとした重い雲が心の中で広がった。それと同時に雨に惹かれている一面もあった。なぜなら、あたしにとって雨は死を連想するから。
死は現実に寄せた幻だとあたしは思う。
放送室で首を吊った2年生。もし死んでいたとするなら、彼が座った席、通った通学路、使った文房具。彼がそこにいてそれを使ったと証明できるのは他人の記憶と記録になる。
それは現在の証明にはならない。現在に自分がそこにいると証明できるのは自分自身しかできないから。死というのは自分の証明を失う。他人の記憶が明確であったとしてもそこに自分がいないのなら幻と同じ。
人は幻に触れられない。生きたままその領域には行けない。死は魔法であり、ファンタジーなんだ。
その幻想をほんの少しだけ触れたのが首を吊った男子生徒。その時の風景を想像してみる。
ぶら下がる身体、停止を体験する血脈と心臓。彼の背後では静寂を囁く雨の音。
雨は嫌い。けれど、雨と死体は親和された関係を築いているようだった。2つの共通点は静寂と恐怖。その共通点が雨と死体を着飾って怪しいくも美麗な放送室へと変貌させる。
あたしはその美しさに惹かれていた。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる