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2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
望まぬ再会 9
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そういえば、さっき演劇部って言ったわね。
「演劇部も残っていたんですか?」
「あぁ、安斉先生の弔いとか言ってな。今年度の大会は必ず優秀賞とるんだと躍起になっているんだ。心意気は立派なんだかな。注意したんだ。近頃危ないからな。君たちは若いから平気だろうって簡単に思えんるんだろうけどな。それは違うぞ」
田口の長々とした話をあたしは聞き流す。
亡くなった安斉も未確認の獣に殺されたのよね。
この怪事件と演劇部、カウンセリング。山崎 千秋も同じ殺され方をしていて、彼女にいじめられていた清音は長野、蝶男のところにいた。そして、元演劇部のすみれも。蝶男は鬼をコントロールする能力があった。
殺したのは蝶男?何の為に?何のメリットがあるの?
田口の話を聞かないで黙々と様々な可能性を考えて巡らしてみる。
情報が足りない。そもそも蝶男が謎の存在なのよね。正体も狙いもわからない。光弥たちができないと言っている鬼のコントロールも蝶男はできてしまう。
光弥も彼の父親もあたしの白鋏と白糸を狙っている。蝶男の狙いも同じだと考えるべき?
そこで思考が止まり、鼻奥から熱を感じた。それはどろりと流れてきて、鼻下を伝う。指先でそれを拭うと微熱が籠もった血が皮膚の上を引いていた。
鼻血?体調不良でもないのに?
胃の底から同じ熱量が沸くのを感じた。
「聞いているのか?」
後からついてきているはずのあたしの気配がなくなり、田口は振り返る。
廊下の真ん中で膝をついて蹲っていたあたしは溢れた血液を受け止めようとして片手で口を覆っていた。手の平で収まらない血量は指間からポタポタと落ちては床に赤く丸い模様をつける。
「おい!どうした!どこが悪い?」
突然の吐血に田口も慌てて背中をさする。
あたしの身に何が起きたのか、それは言葉にもできない。喋ろうとすればまた同じ量の血が喉を逆流して外界へと飛び出す。
鼻も胃も頭も痛い。トンカチで何度も強打しているみたい。
「救急車呼ぶからな!しっかりろ!」
目の前にいる田口の声が遠くから聞こえた。トンカチの頭痛に加えて耳鳴りが脳内で響き合う。
視界もぼやけて身体が鉛になって動かせない。
あたし、なんで暑い、こんな重い。なんで。
駄目、耳鳴りと頭痛のせいでまともに考えられない。
鼻血も止まらない、咳と一緒に血を吐く。涙も流れてきた。いや、涙じゃない。
目頭から一滴、落ちたのは赤色をした雫。血涙なんて生まれて初めて。
視界がぼやけて赤に侵食されていく。その中ではっきりと捉えた黒く映える蝶の模様があたしの腕で揺らめく。
黒い、蝶。様々な熱と痛みで思考が拡散される。でも、1つの事実に辿り着くのはあの紅茶、やっぱり何か入っていた。
飲んですぐ吐いたのに。なんで?
これ以上の事実は見つけられなかった。脳がまともに動けないのもあったけれど、私の目前に落ちたスマホが思考を止めた。
光るディスプレイが写し出したのは数字が打たれていないキーパッド。そして、床から50㎝ほど離れて垂れ下がる青いキャンパススニーカー。生物の田口のものだ。
頭上で引き千切られる音が鳴った。固いものを砕いたような、柔らかいものを潰したような、水を打ったような、そんな複雑な音。そこから咀嚼音がして田口の身体が捨てられる。首から上がない。切断面は綺麗とは言えず、伸ばされ千切られた頸動脈が裂かれた表皮から垂れる。
あたしの背後にそいつがいるのは確かだった。なのに、頭を上げて振り向けない。危機を感じているのに立ち上がって逃げることができない。
身体が鉛みたいになってしまった。脳が生命本能を叫んで「逃避」を訴えても指一本すら動かせない。鼻血・血涙は流れ、血反吐が溢れる。
「演劇部も残っていたんですか?」
「あぁ、安斉先生の弔いとか言ってな。今年度の大会は必ず優秀賞とるんだと躍起になっているんだ。心意気は立派なんだかな。注意したんだ。近頃危ないからな。君たちは若いから平気だろうって簡単に思えんるんだろうけどな。それは違うぞ」
田口の長々とした話をあたしは聞き流す。
亡くなった安斉も未確認の獣に殺されたのよね。
この怪事件と演劇部、カウンセリング。山崎 千秋も同じ殺され方をしていて、彼女にいじめられていた清音は長野、蝶男のところにいた。そして、元演劇部のすみれも。蝶男は鬼をコントロールする能力があった。
殺したのは蝶男?何の為に?何のメリットがあるの?
田口の話を聞かないで黙々と様々な可能性を考えて巡らしてみる。
情報が足りない。そもそも蝶男が謎の存在なのよね。正体も狙いもわからない。光弥たちができないと言っている鬼のコントロールも蝶男はできてしまう。
光弥も彼の父親もあたしの白鋏と白糸を狙っている。蝶男の狙いも同じだと考えるべき?
そこで思考が止まり、鼻奥から熱を感じた。それはどろりと流れてきて、鼻下を伝う。指先でそれを拭うと微熱が籠もった血が皮膚の上を引いていた。
鼻血?体調不良でもないのに?
胃の底から同じ熱量が沸くのを感じた。
「聞いているのか?」
後からついてきているはずのあたしの気配がなくなり、田口は振り返る。
廊下の真ん中で膝をついて蹲っていたあたしは溢れた血液を受け止めようとして片手で口を覆っていた。手の平で収まらない血量は指間からポタポタと落ちては床に赤く丸い模様をつける。
「おい!どうした!どこが悪い?」
突然の吐血に田口も慌てて背中をさする。
あたしの身に何が起きたのか、それは言葉にもできない。喋ろうとすればまた同じ量の血が喉を逆流して外界へと飛び出す。
鼻も胃も頭も痛い。トンカチで何度も強打しているみたい。
「救急車呼ぶからな!しっかりろ!」
目の前にいる田口の声が遠くから聞こえた。トンカチの頭痛に加えて耳鳴りが脳内で響き合う。
視界もぼやけて身体が鉛になって動かせない。
あたし、なんで暑い、こんな重い。なんで。
駄目、耳鳴りと頭痛のせいでまともに考えられない。
鼻血も止まらない、咳と一緒に血を吐く。涙も流れてきた。いや、涙じゃない。
目頭から一滴、落ちたのは赤色をした雫。血涙なんて生まれて初めて。
視界がぼやけて赤に侵食されていく。その中ではっきりと捉えた黒く映える蝶の模様があたしの腕で揺らめく。
黒い、蝶。様々な熱と痛みで思考が拡散される。でも、1つの事実に辿り着くのはあの紅茶、やっぱり何か入っていた。
飲んですぐ吐いたのに。なんで?
これ以上の事実は見つけられなかった。脳がまともに動けないのもあったけれど、私の目前に落ちたスマホが思考を止めた。
光るディスプレイが写し出したのは数字が打たれていないキーパッド。そして、床から50㎝ほど離れて垂れ下がる青いキャンパススニーカー。生物の田口のものだ。
頭上で引き千切られる音が鳴った。固いものを砕いたような、柔らかいものを潰したような、水を打ったような、そんな複雑な音。そこから咀嚼音がして田口の身体が捨てられる。首から上がない。切断面は綺麗とは言えず、伸ばされ千切られた頸動脈が裂かれた表皮から垂れる。
あたしの背後にそいつがいるのは確かだった。なのに、頭を上げて振り向けない。危機を感じているのに立ち上がって逃げることができない。
身体が鉛みたいになってしまった。脳が生命本能を叫んで「逃避」を訴えても指一本すら動かせない。鼻血・血涙は流れ、血反吐が溢れる。
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