162 / 644
2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
蜘蛛の脚 12
しおりを挟む
光弥はどうしたのか言えば彼は黒い鬼の餌になって、光弥だったものは血肉の塊になっていた。
「彼女はいない。わかるだろう」
「どこにどこに」
血塗れの光弥に唖然となっていたあたしは目の前にいる蝶男へと意識を戻す。
蝶男が囁き、カンダタが困惑する。
「ほら、よく思い出して。誰が奪った?」
「うばっ、た」
蝶男の声にカンダタが呼応した。これはまずい。
何がまずいかだなんてわからない。直感で悟った兆しに理屈は要らない。
あたしは隠し持っていたカッターの刃を振りかざし、蝶男の首を狙って切りつける。
刃と肌が接触した瞬間、蝶男の首は無数の蝶になって刃は空気を切る。
肩から身を乗り出していたあたしは虚を突かれて態勢を崩す。
落ちそうになっていたあたしを蝶男は捕らえる。カッターを持った手を掴み、高く持ち上げた。そのせいであたしの片手から腰まで真っ直ぐに伸ばされて空中に垂れる。
「まさか、これを取り返しにくるとは。君の勇敢さには感服するよ」
「嬉しくないわね」
刃物が通じないなんて。片手を掴まれ、空中に垂れ下がっている状況では抵抗する策も浮かばない。せめての抵抗として蝶男を睨む。
蝶男にはその強がりも見透して、子供の浅知恵で行った作戦を一掃して笑う。
「頑張った方だよ。満点をあげたいところだ。けれど1つだけ減点がある。これだ」
蝶男はカンダタを指差す。あたしがわざわざ校庭に来てしまったのがミスなのだと彼は言う。
「これの魂は修復できない。手遅れなんだよ。君は無駄なものに気を取られ、僕に捕まったんだ」
「無駄も手遅れもあたしが決める。あんたの言う通りなんてしてやらない」
手遅れ、無駄。そういった言葉があたしを逆撫でさせた。剥き出しの単純な台詞に蝶男は鼻で笑うとたった1本の腕であたしの身体を投げた。
ふわりと浮いたかと思えば、泥状の地面に転がり落ちる。その後にハクがあたしを追いかけてきて守るように覆い被さった。
蝶男はカンダタの頭を撫でて囁く。彼の赤い瞳があたしに向けられる。
感情の薄れた虚ろな目はしていなかった。ただ、怒り一色で染まっていて血走った赤目は狂人そのものだった。
「ハク、立ち向かわず逃げ回るのよ。いい?これは鬼ごっこなの」
威嚇して敵意を示すハクを宥めて言い聞かせる。
カンダタが声を荒らげて、殺意と憎悪の雄叫びをあげる。そして、背中から8本目の脚が産声をあげる。
逃避、それだけを考えていた。目の前にいる蝶男とカンダタにしか頭に入れていなかったせいで足元に注意を払っていなかった。すみれの蔦が地面を這い、あたしの足首に巻きつく。
蔦に引っ張られたあたしは引きずられて、すみれに近づく。
ハクはあたしを助けようとした。けれど、カンダタがあたしを追いかけてくる。状況を把握したハクは方向を変えて虫の脚へと食らいつく。
一方、あたしはすみれに対する対抗策を考える。といってもこの短時間で案は出なかった。そしてすみれ間合いに入ってしまう。
「彼女はいない。わかるだろう」
「どこにどこに」
血塗れの光弥に唖然となっていたあたしは目の前にいる蝶男へと意識を戻す。
蝶男が囁き、カンダタが困惑する。
「ほら、よく思い出して。誰が奪った?」
「うばっ、た」
蝶男の声にカンダタが呼応した。これはまずい。
何がまずいかだなんてわからない。直感で悟った兆しに理屈は要らない。
あたしは隠し持っていたカッターの刃を振りかざし、蝶男の首を狙って切りつける。
刃と肌が接触した瞬間、蝶男の首は無数の蝶になって刃は空気を切る。
肩から身を乗り出していたあたしは虚を突かれて態勢を崩す。
落ちそうになっていたあたしを蝶男は捕らえる。カッターを持った手を掴み、高く持ち上げた。そのせいであたしの片手から腰まで真っ直ぐに伸ばされて空中に垂れる。
「まさか、これを取り返しにくるとは。君の勇敢さには感服するよ」
「嬉しくないわね」
刃物が通じないなんて。片手を掴まれ、空中に垂れ下がっている状況では抵抗する策も浮かばない。せめての抵抗として蝶男を睨む。
蝶男にはその強がりも見透して、子供の浅知恵で行った作戦を一掃して笑う。
「頑張った方だよ。満点をあげたいところだ。けれど1つだけ減点がある。これだ」
蝶男はカンダタを指差す。あたしがわざわざ校庭に来てしまったのがミスなのだと彼は言う。
「これの魂は修復できない。手遅れなんだよ。君は無駄なものに気を取られ、僕に捕まったんだ」
「無駄も手遅れもあたしが決める。あんたの言う通りなんてしてやらない」
手遅れ、無駄。そういった言葉があたしを逆撫でさせた。剥き出しの単純な台詞に蝶男は鼻で笑うとたった1本の腕であたしの身体を投げた。
ふわりと浮いたかと思えば、泥状の地面に転がり落ちる。その後にハクがあたしを追いかけてきて守るように覆い被さった。
蝶男はカンダタの頭を撫でて囁く。彼の赤い瞳があたしに向けられる。
感情の薄れた虚ろな目はしていなかった。ただ、怒り一色で染まっていて血走った赤目は狂人そのものだった。
「ハク、立ち向かわず逃げ回るのよ。いい?これは鬼ごっこなの」
威嚇して敵意を示すハクを宥めて言い聞かせる。
カンダタが声を荒らげて、殺意と憎悪の雄叫びをあげる。そして、背中から8本目の脚が産声をあげる。
逃避、それだけを考えていた。目の前にいる蝶男とカンダタにしか頭に入れていなかったせいで足元に注意を払っていなかった。すみれの蔦が地面を這い、あたしの足首に巻きつく。
蔦に引っ張られたあたしは引きずられて、すみれに近づく。
ハクはあたしを助けようとした。けれど、カンダタがあたしを追いかけてくる。状況を把握したハクは方向を変えて虫の脚へと食らいつく。
一方、あたしはすみれに対する対抗策を考える。といってもこの短時間で案は出なかった。そしてすみれ間合いに入ってしまう。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる