糸と蜘蛛

犬若丸

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3章 死神が誘う遊園地

瑠璃、幼少期 1

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   子供の頃、正確に言うと10歳までのあたしはまさに純真無垢そのもので、それはもう天使の子だと言われていた。
   もし、その頃のあたしと会えるのなら、天使のようないい子ちゃんの細い首を絞め殺してやりたい。
   あたしの生い立ちを軽く説明すると、日本人の父とフランス人の母がパリで出会い、あたしが生まれた。フランスと日本を行き来する生活をしていたようだ。出産は日本らしく数年はそこで暮らしていたらしいけれど覚えてない。
   幼児期の記憶はフランスしかない。裕福な家庭でと閑静で広々とした自宅。教育熱心な母。恵まれた環境。幸福と愛に囲まれてあたしは育った。
   母と菓子作りをしたり、2人でピクニックに行ったり、ディズニーランドパリにも行ったことがある。そこで買ってもらったダッフィーが一番のお気に入りで、ベッドに抱いて寝ていたりもした。
   「るーりー?どこいるのー?」
   離れたところから母があたしを呼ぶ。
   母の呼びかけには応えずにあたしはいつもの遊び場で3つのぬいぐるみでいつもの遊びをしていた。
   ダッフィーを脇に抱え、赤いボタンがついた白ウサギのぬいぐるみに話しかける。
   「ばかにしないでよねわたしもないすばでいになるよていだったんだから」
   拙い言葉を喋り、白ウサギの片足を摘む。
   「瑠璃!」
   振り返ると母がしかめた顔をしている。何度も呼んでいたらしい。
   「ガレージで悪戯したらダメって言ってるでしょ。パパに怒られるのはママなんだから」
   自宅のガレージは地下に設置されていた。当時5才のあたしは「地下」という単語だけで冒険の妄想をしては胸を膨らませて、妄想の再現をしようと試みていた。
   「イタズラじゃないよ。ぼうけんなの。これからね、フランと一緒に」
   「冒険ごっこもいいけどホットチョコはどう?一緒に作らない?」
   「ホットチョコ!」
   喜びで身体が跳ね上がり、その拍子で白ウサギが手から離れた。
   あたしは急いで白ウサギを拾う。そんな仕草に母は笑った。
   「みんなで行こうね。オオカミさんはどこかな?」
   母は幼いのあたし を熟知している。あたしがリビングと子供部屋にいない時は地下のガレージで冒険しているし、白ウサギと白いオオカミのぬいぐるみはルージュとブランという名前で必ずペアでなければならないという大人には理解できない子供の信念も知っていた。
   あたしは物陰に隠した白いオオカミを取り出す。三つのぬいぐるみを腕一杯に抱えて母とのホットチョコを楽しみに脚を弾ませた。
   どれも光に満ちた思い出だった。家にいても外にいても母が傍にいる。思い出の中にもいる。それが暖かくて幸せに満ちていく。
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