231 / 644
3章 死神が誘う遊園地
瑠璃、幼少期 14
しおりを挟む
高速を降りてからも緊迫したドライブは続くようだった。
母は安物の衣服を取り扱う店の前で停まると急ぎ足で店内に入り、彰は近くのコンビニに向かった。あたしは言いつけ通り、身体を小さくして車内で帰りを待つ。
今日のうちに車から出ることはほとんどなかった。あたしが外に出れたのはトラックさえ停めまっていない人気のないパーキングエリアでトイレに立ち寄ったくらい。
遠出のドライブと言うより車に閉じ込められたみたいだった。その上、車窓から顔を出さず、他人に見られないようにと指示を受けていた。その結果、シートの下で小さく身体を丸めて何もない時間を耐えていた。
母は20分ほどで戻ってきた。格好が変わっていた。
おそらく、店内のトイレで着替えたのだろう。自慢のスタイルを隠したサイズ大きめの服装、金髪、目を隠す地味な帽子。お洒落好きな母とは思えない。
手には大きなビニール袋がある。
「これに着替えて」
説明もなしに簡潔に言われた指示に頭を項垂れる。
ビニールから出したのは男の子が好むような服ばかりだ。あたしパンツよりはスカートを着たい。レースやリボンがいいのに母は真逆のものを渡してくる。
「着ないと駄目?」
母はいつもあたしが着たいと思ったもの買ってくれて、いつもあたしを可愛くコーデしてくれた。ビニール袋から取り出された安物の衣服に龍のプリントとジーンズのパンツ、地味な色の帽子。着たいとは思えなかった。
「言うことを聞いて。悪い子にならないでよ」
息が詰まりそうなドライブに母も疲れているようだった。あたしの小さな拒否でさえ困惑し、眉間に皺を作る。
「悪い子」初めて言われたそれが心に突き刺さった。母を困らせた悪い子。刺された痛みは罪悪感となった。
「ごめんなさい」
この謝罪に不服はなかった。母が「悪い子」とを呼んだのならきっとそうなのだろう。悲しいのは母を落胆させてしまったことだ。
だから、「愛してる」くれなくなったのだ。私が悪い子だから。
何がいけなかったのか考えてみても答えは出なかった。家事は毎日していた。掃除も洗濯も行ったことはなかった。
学校も行かなくていいって言ったのは母だ。なら、母は何であたしを悪い子と判断したのか。
その質問に答えを求めるのはやめた。考えなたくなかった。そんなことよりも名誉挽回に尽力を注ごうと子供なりの結果論があたしを動かした。
好きでもない服を着て、地味な帽子で人目を引く金髪と青目を隠す。男の子用の靴は少しだけ大きい。
少し経って彰が戻ってきた。コンビニで買ってきたのは3人分の食料でその量からして当分は車での生活が続くのだろうと悟った。
無骨に手渡されたおにぎりを口に運ぶ。母も無言でおにぎりを食べ、彰はおにぎりを片手に持ちながら車を発進させる。
あたしの食生活では会話をするのが当たり前だった。母との食事が1日の楽しみだった。
陰湿な車内時間の経ったお米が虚しく、陰湿となった心ではツナや塩の味でさえわからなくなる。
運転中は常にラジオからのニュースが流れている。母と彰は集中してニュースを聞き入れる。それもそのはずで、ケータイといったメディアを取り入れる道具を2人は置いてきていた。
世間が関心を向けている問題を知る術はラジオしかなかった。しかし、2人が聞き入っていたのはそうした理由ではない気がする。世間が向ける様々な問題よりもただ1つのニュースばかりを2人は知りたがっていた。
CEOの妻子誘拐、身代金狙い、なくなった会社の大金、電子系大学院生の行方。
増えた単語に冷や汗を浮かべては手に持ったおにぎりでさえ、食べるのを忘れている様子だった。
母は安物の衣服を取り扱う店の前で停まると急ぎ足で店内に入り、彰は近くのコンビニに向かった。あたしは言いつけ通り、身体を小さくして車内で帰りを待つ。
今日のうちに車から出ることはほとんどなかった。あたしが外に出れたのはトラックさえ停めまっていない人気のないパーキングエリアでトイレに立ち寄ったくらい。
遠出のドライブと言うより車に閉じ込められたみたいだった。その上、車窓から顔を出さず、他人に見られないようにと指示を受けていた。その結果、シートの下で小さく身体を丸めて何もない時間を耐えていた。
母は20分ほどで戻ってきた。格好が変わっていた。
おそらく、店内のトイレで着替えたのだろう。自慢のスタイルを隠したサイズ大きめの服装、金髪、目を隠す地味な帽子。お洒落好きな母とは思えない。
手には大きなビニール袋がある。
「これに着替えて」
説明もなしに簡潔に言われた指示に頭を項垂れる。
ビニールから出したのは男の子が好むような服ばかりだ。あたしパンツよりはスカートを着たい。レースやリボンがいいのに母は真逆のものを渡してくる。
「着ないと駄目?」
母はいつもあたしが着たいと思ったもの買ってくれて、いつもあたしを可愛くコーデしてくれた。ビニール袋から取り出された安物の衣服に龍のプリントとジーンズのパンツ、地味な色の帽子。着たいとは思えなかった。
「言うことを聞いて。悪い子にならないでよ」
息が詰まりそうなドライブに母も疲れているようだった。あたしの小さな拒否でさえ困惑し、眉間に皺を作る。
「悪い子」初めて言われたそれが心に突き刺さった。母を困らせた悪い子。刺された痛みは罪悪感となった。
「ごめんなさい」
この謝罪に不服はなかった。母が「悪い子」とを呼んだのならきっとそうなのだろう。悲しいのは母を落胆させてしまったことだ。
だから、「愛してる」くれなくなったのだ。私が悪い子だから。
何がいけなかったのか考えてみても答えは出なかった。家事は毎日していた。掃除も洗濯も行ったことはなかった。
学校も行かなくていいって言ったのは母だ。なら、母は何であたしを悪い子と判断したのか。
その質問に答えを求めるのはやめた。考えなたくなかった。そんなことよりも名誉挽回に尽力を注ごうと子供なりの結果論があたしを動かした。
好きでもない服を着て、地味な帽子で人目を引く金髪と青目を隠す。男の子用の靴は少しだけ大きい。
少し経って彰が戻ってきた。コンビニで買ってきたのは3人分の食料でその量からして当分は車での生活が続くのだろうと悟った。
無骨に手渡されたおにぎりを口に運ぶ。母も無言でおにぎりを食べ、彰はおにぎりを片手に持ちながら車を発進させる。
あたしの食生活では会話をするのが当たり前だった。母との食事が1日の楽しみだった。
陰湿な車内時間の経ったお米が虚しく、陰湿となった心ではツナや塩の味でさえわからなくなる。
運転中は常にラジオからのニュースが流れている。母と彰は集中してニュースを聞き入れる。それもそのはずで、ケータイといったメディアを取り入れる道具を2人は置いてきていた。
世間が関心を向けている問題を知る術はラジオしかなかった。しかし、2人が聞き入っていたのはそうした理由ではない気がする。世間が向ける様々な問題よりもただ1つのニュースばかりを2人は知りたがっていた。
CEOの妻子誘拐、身代金狙い、なくなった会社の大金、電子系大学院生の行方。
増えた単語に冷や汗を浮かべては手に持ったおにぎりでさえ、食べるのを忘れている様子だった。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる