247 / 644
3章 死神が誘う遊園地
夢楽土会 9
しおりを挟む
水分をとってもアイスを食べても、照りつける日差しはあたしから涼を奪う。自宅のクーラーを浴びたいと歩調を早めていると唐突にマンションの前で立ち止まった。
カンダタとハクは彼の存在に気付いたようで、ぼんやりとした顔つきは警戒に変わる。
「あの男だ」
カンダタが警告する。
マンションの木陰にいるのは今朝、あたしの部屋を観察しては必死にメモして去った男だ。
朝と夜で決まった時間で現れていた。今は14時近くであり、学校関係者でなければ高校生がこの時間帯に帰宅するとは把握していない。
あたしは制服のポケットに手を入れ、白鋏を握る。いつでも逃げれる。
止まらせていた足を進ませて、あたしはマンションのエントランスを目指す。
そのタイミングで男は木陰から出るとあたしに向かって来る。長時間で待っていたようで額からはてらつく汗が湧いている。
「笹塚 瑠璃、ちゃんだよね?」
苗字とちゃん付けで呼ばれ、皮膚に拒絶を表す鳥肌がたつ。
無視して、通り過ぎようとする。男はあたしの前に立ち、進行を阻む。
怪しい者じゃない、と笑顔と共に差し出したのは名刺だった。有名な週刊誌記者と男の名前があった。
「記者?」
あまりに予想外で思わず声を出してしまった。記者が女子高生に何の用があるわけ?
「夢楽土会って知ってる?この地域を中心に活動している新教団なんだけど」
それは光弥が調べているものね。
「知りません」
言葉は短く、語気を強めた。
嘘でもない。その名前を聞いたのは今朝だったし、内容も知らない。
「なら、笹塚 昌次郎はさすがに知っているよね。君のお父さんだ」
身体に熱が籠るのを感じた。髪の毛が逆立っているみたい。
「知りません」
2言目のそれは震えていた。
「そうなの?やっぱり隠し子だから疎外されてるの?高いマンションに1人で住んでるもんね。でも、連絡はとってるんでしょ?」
白鋏を握る手が強くなった。警戒ではなく、怒りから来る仕草だった。
「君のお父さんが夢楽土会と関わりがあるみたいなんだ。薬みたいなもの貰ってる?」
「父じゃない」
震えた声で否定する。瞬発的に出たもので、声は小さく震えていたせいで記者には聞こえていなかった。
「何も知らない。話すことはない」
荒らげた情緒を鎮めて声を発する。
「またまた。何か聞いてない?さりげない会話でもいいからさ」
しつこい。あたしは何も知らない。父とは6年も会っていない。声すら忘れているのに。
真夏の日差しがあたしの脳を焼いている。クーラーのある場所に行きたい。不快な汗も流したい。なんでどいてくれないのよ。どいてくれないのなら。
白鋏を握る手が無意識に動く。
邪心を察知したカンダタが咄嗟に手首を掴んで阻止する。いよいよあたしの殺意は行き場をなくして叫びそうになる。
「何か用ですか?」
凍てついた口調は背後から聞こえた。
カンダタとハクは彼の存在に気付いたようで、ぼんやりとした顔つきは警戒に変わる。
「あの男だ」
カンダタが警告する。
マンションの木陰にいるのは今朝、あたしの部屋を観察しては必死にメモして去った男だ。
朝と夜で決まった時間で現れていた。今は14時近くであり、学校関係者でなければ高校生がこの時間帯に帰宅するとは把握していない。
あたしは制服のポケットに手を入れ、白鋏を握る。いつでも逃げれる。
止まらせていた足を進ませて、あたしはマンションのエントランスを目指す。
そのタイミングで男は木陰から出るとあたしに向かって来る。長時間で待っていたようで額からはてらつく汗が湧いている。
「笹塚 瑠璃、ちゃんだよね?」
苗字とちゃん付けで呼ばれ、皮膚に拒絶を表す鳥肌がたつ。
無視して、通り過ぎようとする。男はあたしの前に立ち、進行を阻む。
怪しい者じゃない、と笑顔と共に差し出したのは名刺だった。有名な週刊誌記者と男の名前があった。
「記者?」
あまりに予想外で思わず声を出してしまった。記者が女子高生に何の用があるわけ?
「夢楽土会って知ってる?この地域を中心に活動している新教団なんだけど」
それは光弥が調べているものね。
「知りません」
言葉は短く、語気を強めた。
嘘でもない。その名前を聞いたのは今朝だったし、内容も知らない。
「なら、笹塚 昌次郎はさすがに知っているよね。君のお父さんだ」
身体に熱が籠るのを感じた。髪の毛が逆立っているみたい。
「知りません」
2言目のそれは震えていた。
「そうなの?やっぱり隠し子だから疎外されてるの?高いマンションに1人で住んでるもんね。でも、連絡はとってるんでしょ?」
白鋏を握る手が強くなった。警戒ではなく、怒りから来る仕草だった。
「君のお父さんが夢楽土会と関わりがあるみたいなんだ。薬みたいなもの貰ってる?」
「父じゃない」
震えた声で否定する。瞬発的に出たもので、声は小さく震えていたせいで記者には聞こえていなかった。
「何も知らない。話すことはない」
荒らげた情緒を鎮めて声を発する。
「またまた。何か聞いてない?さりげない会話でもいいからさ」
しつこい。あたしは何も知らない。父とは6年も会っていない。声すら忘れているのに。
真夏の日差しがあたしの脳を焼いている。クーラーのある場所に行きたい。不快な汗も流したい。なんでどいてくれないのよ。どいてくれないのなら。
白鋏を握る手が無意識に動く。
邪心を察知したカンダタが咄嗟に手首を掴んで阻止する。いよいよあたしの殺意は行き場をなくして叫びそうになる。
「何か用ですか?」
凍てついた口調は背後から聞こえた。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる