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3章 死神が誘う遊園地
夏と夢と信仰と補習 2
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「フランスには行かないわ」
期待をしても瑠璃の意思は変わらなかった。
「移住の話は幾度かしたとエルザさんから聞きました。その度に断られることも。なぜこの場所に拘るんです?」
その問いかけは、ここに瑠璃の居場所はないのだと遠回しに言っていた。疎外されて孤独でいるよりは受け入れてくれる場所に行くべきだと伝えたかった。
「今の、生活が気に入っててるからよ」
素っ気なく返答する。
これはカンダタの直感になるが、この返答は瑠璃のものではないと感じた。瑠璃も迷いながらの返答だった。
フランス滞在が瑠璃にとっても安全であり、さえりも安心するだろう。しかし、それだけでは瑠璃の強情が変わるはずもない。
「わかりました。エルザさんにはそう伝えておきます。紅茶ありがとうございました」
さえりは諦めて立ち上がると瑠璃に一礼する。
瑠璃は一言も返さなかった。さえりの帰り際にカンダタと目を合わせる。カンダタは「頼んだ」と無言の伝言を受け取った。
さえりからは十分な情報を貰ったが、まだ足りない。あちら側とどう関わっているのか調べる必要がある。
カンダタはさえりの後を尾けた。
女性を尾けるのは後ろめたさがある。しかし、必要なのだ。父親の居場所を知るにはさえりを尾ける他ない。
さえりもその人の事は話さなかった。瑠璃も父親について聞くべきだったのにそれを避けていたようにも思える。
今回も父親について調べてほしいとカンダタに頼んだのは逃避の表れなのだろう。
さえりがマンションを出て、タクシーに乗り込むとカンダタも慌てて乗車する。
見知らぬ男がでも彼女は声を上げない。情のない声色で行き先を告げる。これが透明人間の利点と言うべきなのか、盗人として喜ぶべきなのか、良心の黙らせるべきか、複雑な心境だ。
カンダタがさえりを尾けなければならないのは、瑠璃が父親の自宅を知らないからだ。勤め先はネットで調べればすぐ出るが、プライベートまで載っているわけではない。
さえりを乗せたタクシーは雑多するオフィス街連れて行く。カンダタが地獄にいた頃、オフィス街を歩行していたが、あれは死んだビル街だったのだと実感する。
人々は忙しなく歩き、窓に反射する太陽の光が眩しい。
タクシーはやけに背の高いビルの前で停まる。
圧迫されそうなビルたちに怯えながら、さえりについていく。
広すぎるロビーを抜け、外景が丸見えのエレベーターに身を竦ませながらも最高階まで登る。
「ただいま戻りました」
最後にたどり着いたのは独りの男が黙々とPCと向き合っている部屋だった。男は広いデスクの前で操作しながら小さく頷く。
その人物こそが瑠璃の父親、笹塚 昌次郎。
カンダタの率直な感想は「似ていない」だ。細身で口数は少なく、死んだ目をしている。これらは瑠璃と共通している部分ではあるが、瑠璃とは違う。彼女には人らしさがある。この男にはその印象がない。人として歪んでいるように見える。
「あの、社長。瑠璃の成績表です」
さえりは成績表を差し出す。昌次郎の前に立ち、デスクの上に置く。彼女は緊張していた。
「これはなんだ?」
PCから目を離し、さえりを見上げる。昌次郎は誰のものか分かっていないようだ。
「期末テストがあったんです。見ていただけませんか。特に理系は」
「さっきから何を言っている?」
困惑している。まるで、他人の成績表を見せられて迷惑だと言いだけだ。
「いらない情報を持ってくるな」
邪魔な物だと言い張る。カンダタにはそれが酷く悲しく残酷な言葉に聞こえた。
期待をしても瑠璃の意思は変わらなかった。
「移住の話は幾度かしたとエルザさんから聞きました。その度に断られることも。なぜこの場所に拘るんです?」
その問いかけは、ここに瑠璃の居場所はないのだと遠回しに言っていた。疎外されて孤独でいるよりは受け入れてくれる場所に行くべきだと伝えたかった。
「今の、生活が気に入っててるからよ」
素っ気なく返答する。
これはカンダタの直感になるが、この返答は瑠璃のものではないと感じた。瑠璃も迷いながらの返答だった。
フランス滞在が瑠璃にとっても安全であり、さえりも安心するだろう。しかし、それだけでは瑠璃の強情が変わるはずもない。
「わかりました。エルザさんにはそう伝えておきます。紅茶ありがとうございました」
さえりは諦めて立ち上がると瑠璃に一礼する。
瑠璃は一言も返さなかった。さえりの帰り際にカンダタと目を合わせる。カンダタは「頼んだ」と無言の伝言を受け取った。
さえりからは十分な情報を貰ったが、まだ足りない。あちら側とどう関わっているのか調べる必要がある。
カンダタはさえりの後を尾けた。
女性を尾けるのは後ろめたさがある。しかし、必要なのだ。父親の居場所を知るにはさえりを尾ける他ない。
さえりもその人の事は話さなかった。瑠璃も父親について聞くべきだったのにそれを避けていたようにも思える。
今回も父親について調べてほしいとカンダタに頼んだのは逃避の表れなのだろう。
さえりがマンションを出て、タクシーに乗り込むとカンダタも慌てて乗車する。
見知らぬ男がでも彼女は声を上げない。情のない声色で行き先を告げる。これが透明人間の利点と言うべきなのか、盗人として喜ぶべきなのか、良心の黙らせるべきか、複雑な心境だ。
カンダタがさえりを尾けなければならないのは、瑠璃が父親の自宅を知らないからだ。勤め先はネットで調べればすぐ出るが、プライベートまで載っているわけではない。
さえりを乗せたタクシーは雑多するオフィス街連れて行く。カンダタが地獄にいた頃、オフィス街を歩行していたが、あれは死んだビル街だったのだと実感する。
人々は忙しなく歩き、窓に反射する太陽の光が眩しい。
タクシーはやけに背の高いビルの前で停まる。
圧迫されそうなビルたちに怯えながら、さえりについていく。
広すぎるロビーを抜け、外景が丸見えのエレベーターに身を竦ませながらも最高階まで登る。
「ただいま戻りました」
最後にたどり着いたのは独りの男が黙々とPCと向き合っている部屋だった。男は広いデスクの前で操作しながら小さく頷く。
その人物こそが瑠璃の父親、笹塚 昌次郎。
カンダタの率直な感想は「似ていない」だ。細身で口数は少なく、死んだ目をしている。これらは瑠璃と共通している部分ではあるが、瑠璃とは違う。彼女には人らしさがある。この男にはその印象がない。人として歪んでいるように見える。
「あの、社長。瑠璃の成績表です」
さえりは成績表を差し出す。昌次郎の前に立ち、デスクの上に置く。彼女は緊張していた。
「これはなんだ?」
PCから目を離し、さえりを見上げる。昌次郎は誰のものか分かっていないようだ。
「期末テストがあったんです。見ていただけませんか。特に理系は」
「さっきから何を言っている?」
困惑している。まるで、他人の成績表を見せられて迷惑だと言いだけだ。
「いらない情報を持ってくるな」
邪魔な物だと言い張る。カンダタにはそれが酷く悲しく残酷な言葉に聞こえた。
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