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3章 死神が誘う遊園地
遊園地 1
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大の字で自殺した青年の私生活と周囲からの評価が朝から報道されていた。死人に口はないとよく言うけれど、私生活までも暴かれたら死人の魂が報道局にクレームを出してしまいそう。
その青年の魂は現世にもハザマにも流れていないらしい。
「線路での人間解体ショーはどうでもいいのよ」
あたしがテレビの電源を切ると穏やかな朝の風景に戻る。
「知りたいのはあの店員がどこに行ったかよ」
「そう言われてもな」
光弥は困り果てて頭を掻く。
昨日の夕方、杉本と言うコンビニ店員が自殺し、彼の魂が黒い沼に沈んで消えていった。光弥はこれを連れ去られたと判断している。カンダタの見解では、店員が浮かべたあの笑顔は自ら望んでいたようだった。
どっちにしても店員が消えたのは夢楽土会の先生と名乗る桐 首の仕業でしょうね。
それはそれでいいとして、問題などはどこに連れ去られたかだ。
「なんで光弥が困るのよ。死ぬだけじゃない」
身勝手なあたしの言い分にカンダタは大きく息を吐いた。道理に反したあたしの強要にカンダタが反論しないのは彼もそれ以外の方法が思いつかないから。
あたしが光弥に強要しているのは夢園の服用だった。
「塊人に生死の概念がないって言うんならいくらだって死んでもいいじゃない」
生体を持たない魂は死にようがない。そういう意味では、光弥は失うはものはない。
けれど、あの店員の末路を目の当たりにすれば躊躇う無理はない。
死ぬだけならまだ良い。意思を失って、望みもしない奇行をくりだされたら堪らない。命がないからこそ意思だけは手放したくない。
光弥が躊躇っているのはそういった理由からだった。
「瑠璃が飲めばいいじゃないか。首って奴も瑠璃の魂抽出が目的だろ。だったら殺すはずがない」
「リスクが少ないのは光弥じゃない」
「えぇ」
あたしからしてみれば光弥は何もないと道楽者としか見えない。
「なぁ、瑠璃」
あたしたちのやりとりを見かねてカンダタが仲介に入る。
「何よ、カンダタが代わりに飲むの?楽園に迎え入れられたいのなら止めないわよ」
青と紫のカプセル剤をカンダタに差し出す。挑発的で逆撫でさせる言い方にカンダタも苛立った感情が湧いた。
「あのな」
カンダタが戒めようと口を開くその前に項の鈍痛が彼を襲った。前振りもなかったその痛みにカンダタは顔を歪めて項を擦る。
日増しに痛みが強くなっているようで、前までは顔にも出さないで我慢してきたのに、それを堪えられなくなっている。
「カンダタのそれって」
あたしはずっと抱いていた違和感を言葉にしようとした。
声を出そうとして途端、バルコニーの窓を叩く者がいた。ケイがあたしの部屋に訪れた。
その青年の魂は現世にもハザマにも流れていないらしい。
「線路での人間解体ショーはどうでもいいのよ」
あたしがテレビの電源を切ると穏やかな朝の風景に戻る。
「知りたいのはあの店員がどこに行ったかよ」
「そう言われてもな」
光弥は困り果てて頭を掻く。
昨日の夕方、杉本と言うコンビニ店員が自殺し、彼の魂が黒い沼に沈んで消えていった。光弥はこれを連れ去られたと判断している。カンダタの見解では、店員が浮かべたあの笑顔は自ら望んでいたようだった。
どっちにしても店員が消えたのは夢楽土会の先生と名乗る桐 首の仕業でしょうね。
それはそれでいいとして、問題などはどこに連れ去られたかだ。
「なんで光弥が困るのよ。死ぬだけじゃない」
身勝手なあたしの言い分にカンダタは大きく息を吐いた。道理に反したあたしの強要にカンダタが反論しないのは彼もそれ以外の方法が思いつかないから。
あたしが光弥に強要しているのは夢園の服用だった。
「塊人に生死の概念がないって言うんならいくらだって死んでもいいじゃない」
生体を持たない魂は死にようがない。そういう意味では、光弥は失うはものはない。
けれど、あの店員の末路を目の当たりにすれば躊躇う無理はない。
死ぬだけならまだ良い。意思を失って、望みもしない奇行をくりだされたら堪らない。命がないからこそ意思だけは手放したくない。
光弥が躊躇っているのはそういった理由からだった。
「瑠璃が飲めばいいじゃないか。首って奴も瑠璃の魂抽出が目的だろ。だったら殺すはずがない」
「リスクが少ないのは光弥じゃない」
「えぇ」
あたしからしてみれば光弥は何もないと道楽者としか見えない。
「なぁ、瑠璃」
あたしたちのやりとりを見かねてカンダタが仲介に入る。
「何よ、カンダタが代わりに飲むの?楽園に迎え入れられたいのなら止めないわよ」
青と紫のカプセル剤をカンダタに差し出す。挑発的で逆撫でさせる言い方にカンダタも苛立った感情が湧いた。
「あのな」
カンダタが戒めようと口を開くその前に項の鈍痛が彼を襲った。前振りもなかったその痛みにカンダタは顔を歪めて項を擦る。
日増しに痛みが強くなっているようで、前までは顔にも出さないで我慢してきたのに、それを堪えられなくなっている。
「カンダタのそれって」
あたしはずっと抱いていた違和感を言葉にしようとした。
声を出そうとして途端、バルコニーの窓を叩く者がいた。ケイがあたしの部屋に訪れた。
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