糸と蜘蛛

犬若丸

文字の大きさ
275 / 644
3章 死神が誘う遊園地

遊園地 3

しおりを挟む
   「それを食えばいいのか?」
   焦りを隠せないケイがサプリを要求する。
   「なら俺も行く」
   カンダタも意を決する。
   「あら、飲んでくれるの?丁度、無謀な馬鹿はいないか探していたのよ」
   カンダタも行きたいと言い出すのは意外だった。
   カンダタの目線は棚上の写真立てに向けられていた。写っていたのは3人家族の入学式風景。
   なるほどね、カンダタが手を挙げたのは便乗ではなく、目覚めなくなった娘とその家族を思ってこその言動。偽善ね。
   心中で毒ついた。
   「清音、そろそろ起きなさい」
   下の階から清音の母親らしき呼び声。そして、階段を上る足音。
   「一旦、戻ったほうがよさそうだ」
   光弥の意見に一同は賛成する。
   あたしは手早く空間を割いて、物音をたてないように清音の部屋を後にした。
   母親がドアを開ければ一行は退散していた。



  「危なかったな!」
   あたしのマンションに戻った光弥は興奮気味に声を上げる。対して周りは冷静だった。
   「瑠璃、あの薬は?」 
   決意が固まればあとは行動するだけだ。ケイはあたしを急かす。
   「言われなくても出すわよ」
   リビングのテーブルに置いたままにしていたサプリを手に取る。
   「俺も行くよ」
   そう言ったのは光弥だった。さっきは飲みたくないと言い張っていたのにどういった心の変化かしら。
   「不自然な切り替わりね」
   「俺が熟知している分類なら話は別さ。これを飲んだ先で解決できるならハザマの土産もできる。桐  首に会ってみたいしね」
   「会える確信があるの?」
   「だって、瑠璃にそう言ったんだろ?」
   光弥はサプリを指す。
   「あの教祖が言っていた切符はそのサプリのことだ。そこで待つって本人が言ったんだ。いるに決まってる」
   そういえば、そんなこと言っていたわね。あたしに話すことがあると。それはハクの秘密に関わっている。
   あたしはハクの様子を伺う。
   ハクは背を丸めて上目遣いでこちらを見つめる。不安げな瞳の奥には自身に対する未知の疑惑がある。
   今までハクは妄想の産物だと思い込んでいた。他人に認識されない存在だとハクも自覚していた。そんな想像物が、存在していると言い当てたのが桐  首だ。ハクは自分が何者なのか、その疑惑と向き合っている。
   それを知りたい。でも、危険なものには巻き込ませたくない。葛藤する瞳の色をしていた。
   「そんな目で見ないでよ」
   あたしは呟いてピルケースの薬を見つめる。
   夢の世界がどんなものであれ危険は必ずある。桐  首がハクを知り、ハクがあたしに関わっているのならその秘密をあたしも知っておかないといけない。
   「あたしも行く」
   それは唐突に言い出した決意表明であり、カンダタと光弥は目を見開く。
   「ただの気まぐれでもなさそうだな」
   「あの教祖はあたしの、ハクの秘密を知っているかもしれない」
   ハクはあたしの創造物。それすらも怪しく思えてくる。
   「罠でもか?」
   「罠でも行かないと」
   カンダタは確認の質問をしても無理に止めようとはしなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...