280 / 644
3章 死神が誘う遊園地
遊園地 8
しおりを挟む
隣にいたカンダタがいないことに気付いて、辺りを見渡す。カンダタは専門店のショーウィンドウ前にいた。何かを見つめ思考に耽る。
「あれ、なんだと思う?」
カンダタ示したのは、熊耳カチューシャを恋人につけるカップルだった。
いや、違う。カチューシャを付けているのは幸せ溢れた青年。その相手であるはずの恋人はマネキンだった。鼻も目もないのっぺらぼうの顔、喋る言葉も持っていない。
なのに、青年は「可愛いね」「俺はどっちしようかな」と一方通行の会話をしている。
「人形嗜好に目覚めた変態」
「それかそうなるように仕組まれたか」
光弥がつけ加える。
魂のプログラムってことかしら?
それを聞こうとするもポケットに仕舞った端末から明るいラッパが鳴って、あたしを逆撫でさせるパク君の台詞が時刻を知らせる。
「正午を回ったよ☆腹が減っては戦はできぬ☆ご飯を食べて楽園を楽しもう☆」
「お昼かぁ。早いなぁ」
光弥が呑気に呟いて、あたしとカンダタは凝視する。
光弥は無反応であれをただの通知音としか捉えていない。
正午の知らせはこれで2度目になる。それが30分前だった。
あれ? 20分前だったかしら?
体内時計はあてにならない。あたしは時間を確認しようと端末を操作する。
どこを探しても時間の表記がない。AI機能があるくせに時計の機能がないの?
ショーウィンドウ越しのマネキンカップルが店を出る。青年はマネキンの手を取り、マネキンはそれに合わせて無感情に歩く。
まるでパク君の知らせが合図のように商店街通りにいる全ての人が店から出て、同じ方向に歩いていく。
通りには人の多勢は急流となって、光弥は徐に人の流れに乗ろうとしていた。
カンダタが光弥の手首を掴み、歩みを止める。
「どこに行くつもりだ?」
「え?昼飯だけど?」
さも当然のように答えるからあたしたちの疑惑は強まった。
「行かないほうがいい」
その疑惑を言葉に変換して伝えるのは難しい。カンダタは疑惑から生じた直感だけで光弥を引き止めた。
その疑惑は光弥が持つポップコーンにもあった。
「手に持っているものも捨てろ」
「でも」
「いいから捨てろ」
命令にも近いカンダタの警告。光弥は渋々、ポップコーンをゴミ箱に捨てる。
「なんだよ、急に」
不服そうな光弥。あたしからしてみればそう思えてしまうのが信じられない。
「本当に思わないの?あのアラーム2度目の正午を示していたのよ?」
「しかも、5分前だ」
「30分前でしょ」
カンダタとあたしの時間感覚がずれている。そこには驚いたけれど、すぐに理解した。
地獄に落ちた時、あれは1日だけの出来事だったのに実際は3日間も過ぎていた。
あの後に光弥が説明してくれた。魂が生体から離れると感覚が鈍る。
時計がないから時間経過は体感でしか測れない。その感覚すらも狂っているのだからあたしとカンダタにずれができるのも当然ね。
「時計がないから時間わからない。唯一、時間を知らせてくれるのはパク君のお知らせだけ」
まるで、時間感覚を他者に操られているみたい。
時間感覚だけじゃないわね。パク君は昼食を促していた。それって生活リズムそのものを支配されるってことじゃない?
カンダタが抱いていた疑惑について考えを巡らせながら言語化する。
「魂のプログラムというより、洗脳に近いわね」
「感覚を他者に握られるのなら同じようなもんだろ」
「あぁ、なるほど」
やっと光弥が納得して手を叩く。
「大移動の大半はプログラムされてるね。洗脳されている奴らはその流れに乗ってる感じかな。どちらちもなっていない奴らはまだ残っているわけだ」
光弥が指差した方向には店の外に立つ2人の学生が談笑している。
随分と冷静に分析するのね。さっきはその大半の流れについて行こうとしたくせに。
「このプログラムはどこでされているんだ?」
「俺に聞かれてもねぇ。創立者に聞けば?」
あたしは端末のマップを開いて歩き出す。
「どこに行くつもりだ?」
「プログラムされた奴らは昼食をしに行ったのよ。なら、飲食店に決まってる」
「それで?」
「本人に聞くのよ。どこで脳みそを掻き回されましたかって」
こめかみをトントンと叩いてほくそ笑むあたしに対して、カンダタは不安な顔をしていた。
「あれ、なんだと思う?」
カンダタ示したのは、熊耳カチューシャを恋人につけるカップルだった。
いや、違う。カチューシャを付けているのは幸せ溢れた青年。その相手であるはずの恋人はマネキンだった。鼻も目もないのっぺらぼうの顔、喋る言葉も持っていない。
なのに、青年は「可愛いね」「俺はどっちしようかな」と一方通行の会話をしている。
「人形嗜好に目覚めた変態」
「それかそうなるように仕組まれたか」
光弥がつけ加える。
魂のプログラムってことかしら?
それを聞こうとするもポケットに仕舞った端末から明るいラッパが鳴って、あたしを逆撫でさせるパク君の台詞が時刻を知らせる。
「正午を回ったよ☆腹が減っては戦はできぬ☆ご飯を食べて楽園を楽しもう☆」
「お昼かぁ。早いなぁ」
光弥が呑気に呟いて、あたしとカンダタは凝視する。
光弥は無反応であれをただの通知音としか捉えていない。
正午の知らせはこれで2度目になる。それが30分前だった。
あれ? 20分前だったかしら?
体内時計はあてにならない。あたしは時間を確認しようと端末を操作する。
どこを探しても時間の表記がない。AI機能があるくせに時計の機能がないの?
ショーウィンドウ越しのマネキンカップルが店を出る。青年はマネキンの手を取り、マネキンはそれに合わせて無感情に歩く。
まるでパク君の知らせが合図のように商店街通りにいる全ての人が店から出て、同じ方向に歩いていく。
通りには人の多勢は急流となって、光弥は徐に人の流れに乗ろうとしていた。
カンダタが光弥の手首を掴み、歩みを止める。
「どこに行くつもりだ?」
「え?昼飯だけど?」
さも当然のように答えるからあたしたちの疑惑は強まった。
「行かないほうがいい」
その疑惑を言葉に変換して伝えるのは難しい。カンダタは疑惑から生じた直感だけで光弥を引き止めた。
その疑惑は光弥が持つポップコーンにもあった。
「手に持っているものも捨てろ」
「でも」
「いいから捨てろ」
命令にも近いカンダタの警告。光弥は渋々、ポップコーンをゴミ箱に捨てる。
「なんだよ、急に」
不服そうな光弥。あたしからしてみればそう思えてしまうのが信じられない。
「本当に思わないの?あのアラーム2度目の正午を示していたのよ?」
「しかも、5分前だ」
「30分前でしょ」
カンダタとあたしの時間感覚がずれている。そこには驚いたけれど、すぐに理解した。
地獄に落ちた時、あれは1日だけの出来事だったのに実際は3日間も過ぎていた。
あの後に光弥が説明してくれた。魂が生体から離れると感覚が鈍る。
時計がないから時間経過は体感でしか測れない。その感覚すらも狂っているのだからあたしとカンダタにずれができるのも当然ね。
「時計がないから時間わからない。唯一、時間を知らせてくれるのはパク君のお知らせだけ」
まるで、時間感覚を他者に操られているみたい。
時間感覚だけじゃないわね。パク君は昼食を促していた。それって生活リズムそのものを支配されるってことじゃない?
カンダタが抱いていた疑惑について考えを巡らせながら言語化する。
「魂のプログラムというより、洗脳に近いわね」
「感覚を他者に握られるのなら同じようなもんだろ」
「あぁ、なるほど」
やっと光弥が納得して手を叩く。
「大移動の大半はプログラムされてるね。洗脳されている奴らはその流れに乗ってる感じかな。どちらちもなっていない奴らはまだ残っているわけだ」
光弥が指差した方向には店の外に立つ2人の学生が談笑している。
随分と冷静に分析するのね。さっきはその大半の流れについて行こうとしたくせに。
「このプログラムはどこでされているんだ?」
「俺に聞かれてもねぇ。創立者に聞けば?」
あたしは端末のマップを開いて歩き出す。
「どこに行くつもりだ?」
「プログラムされた奴らは昼食をしに行ったのよ。なら、飲食店に決まってる」
「それで?」
「本人に聞くのよ。どこで脳みそを掻き回されましたかって」
こめかみをトントンと叩いてほくそ笑むあたしに対して、カンダタは不安な顔をしていた。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる