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3章 死神が誘う遊園地
遊園地 15
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後ろ髪を引かれる思いでカンダタは踵を返す。
「お帰りなさいませ!放浪者様!」
同じ顔と同じ表情を持った複数のキャストが同じ台詞を繰り出しては同じように声を重ねる。
檻からホテルのエントランスにまでキャストたちは僅かな隙間も許さずにみっちりと寄り、2列になってあたしたちはその間を通る。
キャストたちがホテルと銘打つそれはゴシック様式とロココ様式を掛け合わせたような建築物だった。
中央の建築物には楕円形のドームがあり、柱と彫像が左右対称となって控えめに飾る。
両サイドにはゴシック様式が末広がりとなって建つ。屋根にはいくつもの尖塔アーチが並ぶ。
エントランスは中央のドームになっていた。玄関を潜ればドーム型の天井にヴェルサイユ宮殿の庭園が豪華絢爛に描かれて金細工がふんだんに使われている。
正面にはチェックインカウンター、ラウンジがあり、左右に一本ずつ通路が伸びている。
「こちらでございます!」
エントランスの中央まで来るとキャストは右の通路にあたしたちを案内する。
通路の突き当たりにはエレベーターがあり、反対の通路にも同じようなものがある。
反対の通路には人がいない。
「逃げるならあそこね」
「行き当たりばったりだな」
カンダタがぼやく。
ホテルの地図も目的の人物がここにいるかさえ不確定なんだから行き当たりばったりにもなる。
それでもネジの外れたキャストに囲まれて地獄に落とされるよりも着けるかは分からずとも自分の意思で選んだ道の先で落ちたほうが気持ちの持ちようがある。
あたしは周囲を確認する。あたしの隣にはカンダタ、反対にはハク。背後には光弥がついている。
あたしたちを囲んで連行するキャストは5人。先行して案内するキャストが1人。キャストは1人も逃げださないよう笑顔であたしたちを見張り、一瞬たりとも目線を逸らさない。
白鋏で逃避するのは一瞬。現在地から反対の通路に空間を繋げたら走る。単純で明確ね。
エレベーターの目前まで来る。
あたしはポケットの白鋏を握り、静かにエレベーターのドアが開くのを待つ。ハク、カンダタ、光弥があたしに近寄って逃避を待つ。
キャストが三角マークのボタンを押す。その瞬間を合図にあたしは動く。
握った白鋏の刃で空間を裂こうとした。
けれど、あたしの腕を1人のキャストが掴む。あたしたちを囲んでいた5人のうちの1人だった。
そいつは笑顔なのに握力は骨が軋むほど強く、振り解けない。
「案内致しますのでご協力をお願いします!」
僅かな動きも許さないとキャストはあたしの右腕を自分のほうへと引き寄せようとした。
それを阻止したのがカンダタで、彼はキャストの手首を掴み、脚を引っかける。
あたしだけ抑えればいいと単純明確なキャストのプログラムはそこだけしか意識していなかった。
そのお陰か、カンダタの脚は綺麗に絡まり、キャストの体勢は崩れ、膝が床につく前に手首を捻る。
そうしてあたしの右腕は解放された。軋んだ痛みを無視して白鋏を握る。
「エレベーターが到着しました!」
先行していたキャストが声を上げる。笑顔の裏にはあたしたちを抑えろと荒れた怒声が隠されていた。そんなキャストの背後でエレベーターが開かれた。
ドアの向こうにあるのは人を運んで上下する箱があるはずだった。
キャストたちはそこにエレベーターがあると言い張る。
そこには何もなかった。黒い空洞がじっとあたしたちを見つめている。
「お帰りなさいませ!放浪者様!」
同じ顔と同じ表情を持った複数のキャストが同じ台詞を繰り出しては同じように声を重ねる。
檻からホテルのエントランスにまでキャストたちは僅かな隙間も許さずにみっちりと寄り、2列になってあたしたちはその間を通る。
キャストたちがホテルと銘打つそれはゴシック様式とロココ様式を掛け合わせたような建築物だった。
中央の建築物には楕円形のドームがあり、柱と彫像が左右対称となって控えめに飾る。
両サイドにはゴシック様式が末広がりとなって建つ。屋根にはいくつもの尖塔アーチが並ぶ。
エントランスは中央のドームになっていた。玄関を潜ればドーム型の天井にヴェルサイユ宮殿の庭園が豪華絢爛に描かれて金細工がふんだんに使われている。
正面にはチェックインカウンター、ラウンジがあり、左右に一本ずつ通路が伸びている。
「こちらでございます!」
エントランスの中央まで来るとキャストは右の通路にあたしたちを案内する。
通路の突き当たりにはエレベーターがあり、反対の通路にも同じようなものがある。
反対の通路には人がいない。
「逃げるならあそこね」
「行き当たりばったりだな」
カンダタがぼやく。
ホテルの地図も目的の人物がここにいるかさえ不確定なんだから行き当たりばったりにもなる。
それでもネジの外れたキャストに囲まれて地獄に落とされるよりも着けるかは分からずとも自分の意思で選んだ道の先で落ちたほうが気持ちの持ちようがある。
あたしは周囲を確認する。あたしの隣にはカンダタ、反対にはハク。背後には光弥がついている。
あたしたちを囲んで連行するキャストは5人。先行して案内するキャストが1人。キャストは1人も逃げださないよう笑顔であたしたちを見張り、一瞬たりとも目線を逸らさない。
白鋏で逃避するのは一瞬。現在地から反対の通路に空間を繋げたら走る。単純で明確ね。
エレベーターの目前まで来る。
あたしはポケットの白鋏を握り、静かにエレベーターのドアが開くのを待つ。ハク、カンダタ、光弥があたしに近寄って逃避を待つ。
キャストが三角マークのボタンを押す。その瞬間を合図にあたしは動く。
握った白鋏の刃で空間を裂こうとした。
けれど、あたしの腕を1人のキャストが掴む。あたしたちを囲んでいた5人のうちの1人だった。
そいつは笑顔なのに握力は骨が軋むほど強く、振り解けない。
「案内致しますのでご協力をお願いします!」
僅かな動きも許さないとキャストはあたしの右腕を自分のほうへと引き寄せようとした。
それを阻止したのがカンダタで、彼はキャストの手首を掴み、脚を引っかける。
あたしだけ抑えればいいと単純明確なキャストのプログラムはそこだけしか意識していなかった。
そのお陰か、カンダタの脚は綺麗に絡まり、キャストの体勢は崩れ、膝が床につく前に手首を捻る。
そうしてあたしの右腕は解放された。軋んだ痛みを無視して白鋏を握る。
「エレベーターが到着しました!」
先行していたキャストが声を上げる。笑顔の裏にはあたしたちを抑えろと荒れた怒声が隠されていた。そんなキャストの背後でエレベーターが開かれた。
ドアの向こうにあるのは人を運んで上下する箱があるはずだった。
キャストたちはそこにエレベーターがあると言い張る。
そこには何もなかった。黒い空洞がじっとあたしたちを見つめている。
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